ファン・ボワの気候・風土
ファン・ボワはフランス西部、シャラント県コニャックのクリュ(生産地)だ。AOCに指定されたのは1938年のことで、その際にAOCの対象地域について細かく定められた。
ファン・ボワは、グランド・シャンパーニュやプティット・シャンパーニュ、ボルドリーといったコニャックにおける高級クリュを囲むように指定されている。北西はサン・ジャン・ダンジェリ、北東はエグル、南東についてはブランザックやアングレームまでの地域を含む。
土壌は粘土石灰質の赤土となっている(グルワ土壌)。地層はジュラ紀のもので、他の地域と比べ硬くきめが粗い。
ボワとはフランス語で「森林」のことで、クリュにも多くの森林が含まれる。石灰含有量については平野部より森林部のほうが少ない。コニャック市の北側には、粘土含有率が60%にも及ぶ平原地帯が広がる。
栽培されているぶどうはユニ・ブランがほとんどで、そのほかにはフォル・ブランシュやコロンバールなどがある。
ファン・ボワのワインの特徴
ファン・ボワにおいて主な原料となるユニ・ブランは、ここコニャックではサンテミリオンと呼ばれる。皮と実が厚く成長が遅い分、長い期間をかけて熟成されるため強い酸味を持つのが特徴だ。
こうした特徴は、そのままブランデーにも現れている。ブランデーはワインを蒸留してつくられるが、強い酸味はそのままブランデーの芳香を豊かにする役割を持つ。
ファン・ボワではグランド・シャンパーニュやプティット・シャンパーニュに次いで高級なコニャックがつくられる。他の地域と比べ比較的熟成が早く、ややまろやかでソフトな味わいのブランデーがつくられるのが特徴だ。
エピソード
フランスでは、ブランデーのような蒸留酒をオー・ド・ヴィと称する。これはフランス語で「命の水」という意味だ。フランス以外でも、北欧におけるアクアヴィットやロシアのウォッカのように、蒸留酒にはその語源として「水」という意味を持つものが多いとされる。