ツェルの気候・風土
ドイツを流れる河川の中でも、たくさんのワイン生産地が存在することで有名なのがモーゼル川だ。ツェルは、そうしたモーゼル川の生産地の中でも下流に位置する。ツェルの村から、ライン川との合流点近くのコブレンツの村までを含む地域が該当する。
土壌は硬砂岩質や粘土層で、石英と石灰を含む。土中に石英を含むのは、かつてこの地が海の底だったことの名残だ。
気候は緯度の高いドイツの中では比較的温暖な気候で、年平均気温は10度前後となっている。年間平均降雨量は800mm程度で、ぶどうの栽培に充分な降雨が得られる。
栽培されるぶどうは白ぶどうがほとんどで、うちリースリングが半分以上を占める。そのほかにはミュラー・トゥルガウなどもつくられている。
ツェルのワインの特徴
ツェルを含むモーゼルでつくられるワインは、全体の9割近くが白ワインとなっている。「黒猫のワイン」として有名なツェラー・シュヴァルツ・カッツも、このツェルでつくられている。甘口タイプのワインで、フルーティな酸味があり飲みやすいと評判のワインだ。
また、醸造所では、ヘイマン・レーヴェンシュタインが有名だ。
エピソード
ツェラー・シュヴァルツ・カッツのマスコットとなっている黒猫。一般的にキリスト教などでは黒猫は不幸をもたらす象徴のように扱われているが、ツェル村では黒猫はワインに味わいをもたらし、幸運を運ぶ動物として重宝されている。
これは、この村のワインと黒猫にまつわる故事にちなむ。
ある時、この村にワインの買い付けにやってきた商人が試飲を行った。3つの樽を並べて試飲していたのだが、うち1つの樽を飲もうとした時だけ、樽の上に黒猫が乗り、執拗に邪魔をしてくる。こうして黒猫が邪魔をしてきた樽のワインが特に味がよかったというエピソードから、シュヴァルツ・カッツ(黒猫)の名がワインにも付けられるようになった。
ラベルには、白ワインのグラスを覗き込むかわいい猫の姿がプリントされている。また、猫の形を模したボトルのワインもある。
ツェルの代表的なワイン
ツェラー・シュヴァルツェ=カッツ・リースリング・アウスレーゼ / ロマヌスケレレイ
ツェラー・シュヴァルツェ=カッツ・アウスレーゼ / ペーター・メルテス