ルーマニアワインはフランスやイタリアに匹敵する歴史・伝統を持つ。第二次大戦後に西欧諸国との交流が途絶えたが、1989年に社会主義体制が崩壊し、ルーマニアワインは再び市場に登場した。
古代ローマ時代にダチアとして知られていたルーマニアは、紀元前より確立したワイン文化を持っていた。中世ではヨーロッパの権力者にコトナリの白ワインが好まれた。自国での消費が多く、フェテアスカ・アルバなどの在来種から造られる白ワインがその大部分を占める。
1889年にパリ博覧会で最高賞を獲得、パリでルーマニアワインブームが起きた。しかし第2次世界大戦後に社会主義国となり西欧諸国との交流が閉ざされ、ワイン市場から姿を消した。1989年の社会主義体制の崩壊後、経済自由化によってワイン醸造業は大きく変化した。2007年にEUに加入し、EU基準に則ることでルーマニアワインは大きな変革と進化を始めている。
カルパチア山脈を代表する山地が国の半分を占める。山脈の周辺は石が多く水はけの良い土壌、黒海沿岸地域はドナウデルタと呼ばれる多くの沖積層と砂地がある。気候は大陸気候で、冬も夏も乾燥して厳しい気候だが、黒海やカルパチア山脈がその影響を和らげる。山脈の東方は最大のワイン産地モルダヴィア地方、山脈に囲まれた西側の地域にトランシルバニア地方、トランシルバニア地方の南にワラキア地方がある。ワラキア地方とブルガリアとの国境付近を流れるドナウ川は黒海に向かってドナウデルタに到り、この一帯がドブロジャ地方である。
主に北部では白、南部では赤ワインが造られる。栽培品種は、カベルネ・ソーヴィニョン、メルロー、ソーヴィニョン・ブラン、シャルドネなどといった国際品種もあるが、ルーマニア独自のフェテアスカ・アルバなど100種類以上の在来品種が古代から栽培され続けている。
原産地呼称制度は、DOCCが最上級で、その下のDOC(原産地統制名称ワイン)より高い品質を要求される。DOC以下は、VDOC(原産地統制名称上質指定ワイン)、VS(上質指定ワイン)、VM(テーブルワイン)と、細かく分類され、DOC以上は熟成期間の指定もある。さらに、ブドウの収穫状況による規定もある。CMD(完熟期に収穫)、CT(遅摘み)、CS(選別後収穫)、CIB(貴腐ブドウとして収穫)、CB(干しブドウになった後に収穫)、CMI(貴腐ブドウが完熟した後に収穫)。なお、使われたブドウ品種をワイン名として使用する場合 (コトナリ社の「グラサ・デ・コトナリ」等)、 その品種を85%以上使うことが義務付けられる。 これらの規定は、農業省・国立ワイン協会・国立調査委員会によって調査・評価される。