イギリス

イギリスワインの特徴とは ~おすすめワイン、ぶどう品種、産地や歴史など、基本の基礎知識~

イギリスワインの特徴

日本でイギリスワインと言えば聞き馴染みがないが、実はイギリスでもワインづくりは行われている。

確かに、イギリスはかつてぶどうが育ちにくい寒冷な気候だったため、ワインづくりが低迷していた時代もあった。1970年代には、ドイツがワイン用ブドウ栽培の北限の地といわれ、イギリスはワインづくりには適さないと思われていた。

ところが近年、地球温暖化の影響によって気候が変動した。そのため、1990年代に入ってからは、特にイギリス南部でぶどう畑が増えている。

そんなイギリスで生産されるワインの中で、世界から注目されているのがスパークリングワインだ。

イギリスで生産されるワインのうち、66%をスパークリングワインが占めている。その品質は申し分なく、1997年に開催されたワインの国際コンクールでは、イギリスのスパークリングワインが金賞に輝いている。

イギリスのスパークリングワインが高品質な理由は、イギリスにおけるワイン生産の中心地である南部のテロワールにある。

イギリス南部は、白亜質石灰岩の土壌を有し、気候は冷涼だ。そのため、高級スパークリングワインであるシャンパンの産地であるシャンパーニュ地方と似ており、スパークリングワイン用ぶどうの栽培地としてはうってつけなのだ。

また、気候が似ているだけでなく、シャンパンの製法であるシャンパーニュ方式を取り入れ、長期熟成させている点もイギリスワインが高品質な理由の一つだ。

シャンパーニュ方式では、ワインを瓶に詰めて二次発酵させた後、しばらく熟成させる。フランスの場合は9カ月ほど熟成させるのが一般的だが、イギリスの場合は5年間熟成させる銘柄も少なくない。

イギリスのおすすめワイン/ワイナリー

ナイティンバー
英国女王即位60周年の祝典で供されたイギリス最高峰のワイン。ワイナリーは1988年にウエスト・サセックス州に創設された。160haの自社畑を所有。ぶどうは全て手摘みで収穫している。

• ハンブルトン
1952年創立のイギリス最古のワイナリー。イギリス南部のハンプシャー州に位置しており、20ヘクタールほどの自社畑を所有。1999年に新オーナーが誕生して以来、高品質なスパークリングワインの生産を開始している。

• キャメルバレー
イギリス産ワインとして初めて英国王室御用達となったイギリスきってのワイナリー。創業は1989年。イギリス南西部のコーンウェルに所有する自社畑が初めて、イギリスの単一畑としてEUからPDOに認められている。

• ディグビー・ファイン・イングリッシュ
イギリス屈指のネゴシアン。「イングランドから世界最高峰のスパークリングワインをうみ出す」という高い目標を掲げている。ファーストヴィンテージは2009年。2013年にリリースされたレゼルヴ ブリュットが、世界的なコンクールで3冠に輝いている。

•ガズボーン・エステート
ウエスト・サセックス州にも32.1haの畑、合わせて93.4haの畑を所有するイギリスでも巨大なワイナリー。2004年創業で、ファーストヴィンテージは2006年と若い。だが、2013年と2015年にはIWSCで受賞するなど、国際的に高く評価されている。

イギリスの主なぶどう品種

80年代はドイツ系の交配品種が主流だったが、90年代からはスパークリング用のシャルドネピノ・ノワールが中心になっている。最近では、ピノ・ブランピノ・グリなどの栽培も増え始めている。

イギリスのスパークリングワインはシャンパンと同様、シャルドネにピノ・ノワールとピノ・ムニエをブレンドしてつくられるものが大多数だ。

イギリスの主なワイン産地

• ケント州
ロンドンの南東に位置しているケント州。ロンドンの台所と呼ばれるほど農作地が豊かに広がっている土地で、ワイン用のぶどうも盛んにつくられている。土壌が石灰質であるなど、テロワールはシャンパーニュに近い。

さまざまなワイナリーが存在するが、中でもチャペルダウン・ワイナリーが有名。イングランドとウェールズで行われるワインコンクールで、高い評価を得おり、観光客が見学に訪れるほど知名度が高い。

•ウエスト・サセックス州
イギリスきっての銘醸地がウエスト・サセックス州だ。ピノ・ノワールやシャルドネ、ムニエなど、高品質なスパークリングワインづくりに欠かせないぶどう品種が栽培されている。

その最大の特徴は何と言っても土壌。ウエスト・サセックス州の土壌は、シャルドネの一大産地であるブルゴーニュ北部のシャブリと同じで、微小なカキ殻の化石を含む石灰質と泥灰質からなるキンメルジャンだ。そのため、ここで育まれたシャルドネはミネラル感の溢れた素晴らしい品質に仕上がる。

• サリー州
ロンドから1時間南下したところにあるサリー州。こちらもシャンパーニュ地方に近い土壌を有し、スパークリングワインの産地として知られている。

ここでつくられるスパークリングワインは、シャンパーニュ地方と同じ瓶内二次発酵でつくられていて、繊細な泡とフレッシュな香りに溢れている。

• ドーセット州
世界自然遺産に登録されているジュラシック・コーストのあるエリア。この地にはキンメリッジという村があるのだが、それがキンメルジャンという土壌の名の由来だとされている。

他にも、イースト・サセックス州やハンプシャー州などにワイナリーが集まっている。

イギリスワインの歴史

イギリスでは、古代ローマ時代からワインがつくられていたとされている。しかし、資料に残っている限りでいえば、イギリスでワインづくりが始まったのは11世紀のことだ。

ノルマンディー公ウィリアムが1066年にイングランドを征服した際、ヨーロッパ大陸からワインづくりに長けた聖職者を随行させたことが、イギリスでのワインづくりの本格化につながった。

その後、イギリスのワイン産業はしばらくの間、隆盛する。12世紀半ばになると、後のイングランド王ヘンリー2世が、ボルドーを統治するアキテーヌ公国のエレオノール女公と結婚。これを機にボルドーはイギリス領となり、ボルドーからイギリスへのワインの輸出が大いに進んだ。

14世紀に入ると、イギリスとフランスの間で百年戦争が勃発。それ以降、ボルドーのワインは輸入できなくなり、スペインポルトガルなどからワインを調達することになる。

ポルトガルからイギリスにワインを送る際、風味の劣化を防ぐためにブランデーが加えられていたのだが、これがポルトガル北部特産のポートワインの発祥とされている。

ノルマンディー公のイングランド制服の際に移住した聖職者によって、イギリスでは長い間、修道院でワインづくりが行われていた。

しかし、16世紀にナルト宗教革命が始まる。これによって、カトリックの修道院や教会は解体されることとなり、ワインづくりもまた衰退していった。これがイギリスでワイン産業が低迷する始まりとなった。

イギリスでワインづくりが再び本格化するのは、最近のことだ。イギリスでのワインづくりの復興は、イギリス南部で第二次世界大戦後の20世紀後半から始まった。

イギリス南部はもともと比較的温暖な気候だったが、地球温暖化の影響によって、さらにぶどうの栽培に適した気候になった。今やイギリスは、フランスに引けを取らないワイン生産国に成長している。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitter で