アイスワインは、樹上で自然に氷結した完熟ブドウから絞った果汁を発酵させて造る甘口のデザートワインである。非常に甘口ながらも酸味とのバランスがよく、希少な高級ワインとして知られている。
原料となるブドウ品種は、氷点下の環境でも結実した房が落ちない物理的に頑健な品種が向いており、その最たるものとしてリースリングが挙げられる。その他の品種としては白ワインではシャルドネ、ゲヴュルツトラミネール、赤ワインでは主にカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、シラー、メルローなどで造られているものもある。
アイスワインは、気温や果汁の糖度など生産地域ごとに厳しい生産基準が定められていて、特殊な製造技術、乾燥や真冬の寒さなどのきわめて特殊な気候条件、地質条件が揃わないと造り出すことはできない。アイスワインが他のワインと最も異なるのは、ブドウの収穫時期である。通常のワインでは秋に収穫されるのに対して、アイスワイン用のブドウはあえて実を樹につけたまま厳冬期まで待って収穫される。自然な凍結と解凍を繰り返しながら厳冬期を迎え、マイナス7度あるいは8度を下回る気温の早朝にひと房ずつ手摘みされる。この温度ではブドウ果実に含まれる水分は凍結するが、糖やその他の旨み成分が未凍結の部分に追い込まれ、成分が濃縮される。こうして凍結したブドウを凍ったまま搾汁すると甘みと香りの凝縮された果汁がわずかに得られる。その量は通常のワインと比べると8分の1程度と言われている。こうして得られた果汁は高糖度の環境に適応した特殊な酵母によって、通常のワインの8倍近くの6か月以上の長期間の発酵を経てアイスワインができる。特殊な栽培条件や収穫方法、製造方法まで一貫して非常に手をかけられている希少なワインである。
世界初のアイスワインは1794年の冬にドイツの農場で生まれた。その年は熟したブドウが霜に覆われて凍結してしまったが、捨てるはずのブドウで試しにわずかなワインを造ってみたところ、とても甘みの強い芳醇な香りのワインが出来上がった。その後オーストリアでも生産が始まったが、温暖化にしたがって厳冬期の気温が不安定になったため、より安定してアイスワインを製造できる土地を求めてドイツのワイナリーがカナダに移住し、カナダでも高品質のアイスワインが造られるようになった。他にも気候条件の適合する各国で少量ながら生産されている。