カリフォルニアはアメリカ国内のワイン生産地の中で、最も広大で最も重要な場所だ。海、山、谷、河川、平原、高原などの地形が気候を複雑にし、それぞれの生産地で特徴的なワインを醸造している。

主に栽培されるのはカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネだが、沿岸の冷涼な地帯ではピノ・ノワールも多く栽培され、ブルゴーニュに匹敵する高品質なワインが作られる。また、この地のジンファンデルも非常に有名だ。

セントラル・バレーはカリフォルニア州内の農業の中心地であり、トマトやアスパラガスをはじめ、さまざまな農作物が作られる。ぶどうも例外ではないが基本的にテーブルワイン用のぶどう栽培が以前は多かった。

エリアはサクラメント・バレーとサンホアキン・バレーの2つに大きく分けられ、サクラメント川を中心にデルタ地帯を形成する。この河川は農作物への灌漑として重要な役割を果たしている。この地区には、ダニガン・ヒルズ、サスーン・バレー、リヴァー・ジャンクションなどといった生産地がある。

このセントラル・バレーではカリフォルニア全体の半分以上のぶどうを生産している。さまざまなぶどうが栽培されているが、中でも質が良いのはシュナンブラン、コロンバール、バルベーラ、シャルドネなどだ。乾燥して日当たりの良い気候はぶどうの大量生産を可能にするが、近年では高品質なワインの生産が増えてきており、今後が楽しみなエリアだ。

【セントラルバレーの主な生産地】

<ダニガン・ヒルズ>
ダニガン・ヒルズはカリフォルニア州ヨーロー郡北西部の産地。昼夜の寒暖差があり、夜は冷え込む。
畑はサクラメント川沿いに広がり、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ソーヴィニヨン・ブランなどさまざまなぶどうが栽培されているが、特に質が高いのはシャルドネの白とシラーやテンプラニーリョの赤だ。

<メリット・アイランド>
メリット・アイランドはヨーロー郡クラークスバーグ内に位置する。サクラメント川などの河川に囲まれ、気温はそれほど上がらない。
平野を利用し、シャルドネやシュナンブラン、プティ・シラーなどを栽培している。この地には「ボーグル」という有名なワイナリーがあるが、こちらはクラークスバーグAVAを冠している。

<カペイ・バレー>
カペイ・バレーはナパ郡と隣接し、西のブルーリッジ山脈、東のカペイ・ヒルに囲まれたエリア。AVAとしては広いが、そのうちぶどうが栽培されているのはたったの25エーカーほどだ。
この地区ではシラーを使用したコクのある赤ワインがつくられている。白はヴィオニエなどが使用され、スパークリングワインも醸造されている。

<クラークスバーグ>
クラークスバーグはヨーロー郡、サクラメント郡、ソラノ郡にまたがる広大なAVA。デルタ地域の中にある肥沃な平野に畑が広がる。以前より大量生産ワイン用のぶどうが栽培されてきた土地だ。
その中で、高い品質で有名なのがシュナンブランを使用して作られる甘口ワインだ。その他、シャルドネを使った白ワインも広く売られる。

<ローダイ>
ローダイはセントラル・バレーの中心的なぶどう栽培地で、サンフランシスコ湾の東に位置する。日照量が多く、夜になると冷え込み霧の発生もある。他の地域に比べ、質の良いぶどうが育つ。
ジンファンデルを使ったフルボディのワインが最も多く、他にはカベルネ・ソーヴィニヨン、シラー、メルロー、シャルドネ、ヴィオニエなどが栽培される。

<トレイシー・ヒルズ>
トレイシー・ヒルズはリバモア・バレー沿いのトレイシーという町を中心に広がるAVA。降水量は少なく乾燥しており、ぶどうが病気になりにくい。
ジンファンデルを使用した力強くコクのある赤ワインができる。その他、ネロ・ダヴォラやモンテプルチアーノといったイタリア品種も栽培される。

<マデーラ>
マデーラはセントラル・バレーのほぼ中心に位置し、モントレー湾から東に160kmほどの場所。平坦な土地にぶどう畑が延々と続く。
マデーラで有名なのは、マスカットを使った甘口の酒精強化ワインだ。その他、シュナン・ブラン、フレンチ・コロンバール、シャルドネ、グルナッシュ、シラー、ジンファンデルなどが栽培されている。

<ディアブロ・グランデ>
カリフォルニア州の中で最も小さいAVA。しかも区域内はほとんど住宅地とゴルフ場に占められ、畑は猫の額ほどの大きさだ。その小さな畑にシャルドネ、ピノ・ノワール、ソーヴィニヨン・ブラン、サンジョヴェーゼ、シラー、バルベーラなどが植わっている。
冷涼な風が吹き付けるため、気候は涼しく、凝縮感のあるぶどうが育つ。地域内のワイナリーは1つのみ。

<サラド・クリーク>
サラド・クリークはディアブロ・グランデの近く。西にディアブロ山を望み、東のサンホアキン川から流れる支流をサラド・クリークと言う。
こちらも畑の面積は小さく、冷涼な気候だ。カベルネ・ソーヴィニヨンやシラー、ソーヴィニヨン・ブラン、ヴィオニエといったぶどうが栽培され、ワイナリーは1つのみだ。

<リヴァー・ジャンクション>
リヴァー・ジャンクションはその名の通り、スタニスラウス川とサンホアキン川が合流する地点のこと。カリフォルニアの農業を支える、大切な河川だ。この川のほとりに畑があり、収穫量の9割がシャルドネだ。
ワイナリーは「マクマニス・ファミリー・ヴィンヤーズ」1つのみしかないが、コンクールでの入賞歴が多く、日本でも購入することができる。