モーゼルは、ドイツに13ある生産地域のうち、モーゼル川沿いの南北に展開する地域だ。モーゼル川沿いは、白ワインの産地としてよく知られている。

モーゼルに限らず、ドイツのぶどう畑はその多くが急斜面につくられており、機械による作業が困難。そのため作業は全て人の手で行われる。

ベライヒ(小区域)は大きく6つに分けられる。上流のモーゼルトーア、オーバーモーゼル、支流沿いのザールやルーヴェルタール、下流域のベルンカステルやツェルだ。
ザールとルーヴェルタールをひと括りに同一地域とみなし、ザール=ルーヴァーとして呼称されることもある。

つくられるワインは、リースリング種によるトロッケン(辛口の白ワイン)が多い。エルブリング種を原料としたトロッケンも生産されている。

エゴン・ミュラー醸造所のシュペートレーゼ(遅摘ぶどうによるワイン)など、国際的に高い評価を受けている白ワインもある。

【モーゼル地区の生産地区分】

<モーゼルトーア>
モーゼルの生産地では最も上流に位置する。リースリングの栽培が多い。かつては発泡ワインやアイスヴァインの産地だったが、現在は110haほどの畑しかなく、生産量はあまり多くない。

<オーバーモーゼル>
ライン川上流、パルツェル村を含む地域。気候は下流地域よりも冷涼。
固有品種エルブリングによる辛口の白がメイン。リースリング種のワインよりもすっきりとした酸味とコクを備えている。優良畑にシュロス・トーンがある。

<ザール>
ライン川の支流ザール川付近、ヴィルティンゲンや、アイル、ザールブルクを含むベライヒ。リースリングによる白ワインがメイン。
特別畑シャルツホフベルクは、オルツタイルラーゲ(単一畑名でのブランド)として認可されている。エゴン・ミュラー醸造所は「白ワインの女王」とも呼ばれ、特にシュペートレーゼの評価が高い。

<ルーヴェルタール>
ルーヴァー川とその合流地点付近にある。アイテルスバッハやその上流にあるカーゼル、マクシミン・グリュンハウスを含む。
ザールと比べ、酸味が強く、しっかりした味のワインが多い。優良畑カルトホイザーホフベルクを有するカルトホイザーホフ醸造所や、フォン・シューベルト醸造所が有名。

<ベルンカステル>
ツェルから少し上流に入った、ヴェーレンやブラウネベルクを含む中流地域。
有力な醸造所に、ベルンカステルのドクター・ターニッシュ、シュロス・リーザー、そして高級畑ゾンネンウーア、ユッファー・ゾンネンウーアを有するフリッツ・ハークがある。

<ツェル>
ツェルからコブレンツまでの下流域。土壌は石英を含む硬砂岩質や粘土層。
「黒猫のワイン」ツェラー・シュヴァルツ・カッツで有名。有力な醸造所に、ヘイマン・レーヴェンシュタインがある。