イタリア北部のトレンティーノ・アルト・アディジェ州は、オーストリアやスイスとの国境に面する。州の大半が山岳地域で、ぶどう畑は渓谷や急斜面に位置する。
北部のアルト・アディジェはドイツ語で南チロル(sudtirol、スッドティロル)と呼ばれ、かつてはオーストリア領だった。イタリアの領土となった今なお、文化面などでドイツの影響を色濃く受ける。

ドイツの影響は、栽培されるぶどう品種にも現れている。特に州北部では、シルヴァーナーやリースリングなどのドイツ品種の栽培が多い。これらは白ワインの原料として用いられる。
また、スキアーヴァやラグライン、テロルデゴなど個性的な固有品種も栽培されている。

ヴァッレ・イサルコ種やサンタ・マッダレーナ種などを用いた白ワインは、酸味の強い熟成された味わいとなる。またラグラインなど、固有品種による個性的な赤ワインをつくる地域もある。
トレントD.O.C.のように、スプマンテ(発泡ワイン)のみが指定されたD.O.C.もある。

【トレンティーノ・アルト・アディジェ地区の生産地区分】

<アルト・アディジェ>
オーストリアとの国境部分。ヴェルナッシュ種、スキアーヴァ種、ラグライン種の3品種がメイン。フレッシュなタイプのワインが多い。

<コッリ・ディ・ボルザーノ>
ボルザーノ(ボルツァーノ)村の西。赤、白、ロゼワインが生産される。スキアーヴァ種をメインとし、ラグレイン種とピノ・ノワール種も用いられる。

<メラネーゼ(アルト・アディジェ・メラネーゼ・ディ・コッリーナ)>
メラーノ周辺を指すD.O.C.。スキアーヴァ種による赤がメイン。良質なワインを生み出す特定の畑には、ラベルにその畑名を表記することが認められる。

<サンタ・マッダレーナ>
急峻(きゅうしゅん)なガイスラー山群で有名な町。ボルツァーノの北東に位置する。
固有品種ラグレインによる赤が多く、白はシャルドネ種やソーヴィニヨン・ブラン種など単一品種によるもの。若飲みタイプのワインが多い。

<テルラーノ>
ボルツァーノの西、アディジェ川周辺のD.O.C.。ソーヴィニヨン・ブラン種、シャルドネ種、ピノ・ブラン種による白がメイン。固有品種ラグレインによる赤もある。

<ヴァッレ・イサルコ>
ボルツァーノ北東、イサルコ川流域の渓谷。ケルナーやシルヴァネールなどドイツ品種による白がメイン。

<ヴァッレ・ヴェノスタ>
ボルツァーノ県西部、オーストリアとスイスの国境付近。リースリング種やシャルドネ種、ピノ・ブラン種などによる辛口の白がメイン。

<トレンティーノ>
アディジェ川流域の広域。パドヴァ原産のマルツェミーノ種による赤がメイン。固有品種ノジオーラによる白もある。

<トレント>
トレンティーノD.O.C.と同一地区だが、こちらは白とロゼの発泡ワインのD.O.C.となる。原料はシャルドネ、ピノ・グリージョ、カベルネ・ソーヴィニヨンなど。シャンパーニュと同様の瓶内2次発酵方式により生産される。

<テロルデゴ・ロタリアーノ>
山間部に位置する。固有品種テロルデゴによる赤ワインのためのD.O.C。テロルデゴはこの地域でしか栽培されない希少なぶどう。ワインは濃い色合いと重厚な味わいを持つ。

<ヴァルダディジエ>
州南部の広域が該当。固有品種エナンチオやスキアーヴァによる赤、ピノ・グリージョ種による白がメイン。スキアーヴァによる赤は、ロゼを思わせる薄い色合いとなる。