ボルドー地方のワイン産地で、ジロンド川の河口右岸のブールジェ・ブライ地域に広がる地区。AOCコート・ド・ブライとしては白ワインが1936年にAOCに指定されている。
ブライ地区には辛口白ワインに認められたAOCコート・ド・ブライの他に、赤ワインのAOCブライがあり、いずれも地理的には同じ地域を指定している。これらはボルドー地方にあるものの格付けはなく、世界的な銘酒というよりは地酒的な色彩が強く、価格も広域AOCボルドーと同等である。
かつては同じ地区で赤のAOCプルミエール・コート・ド・ブライが存在したが、これは2007年の改定によってAOCコート・ド・ボルドーに吸収された。AOCコート・ド・ボルドーは赤白いずれにも使用が許可されており、時としてAOC名にブライの名が追加されることもある。わずかながらロゼワインも造られているが、これは広域AOCボルドーとして販売される。
ブライ地区はジロンド川に面するブライ市を中心として河口右岸に広がり、広さはおよそ7,000ヘクタール程。川を見下ろす海抜70メートル程の台地にブドウ畑があり、メドック地区よりも高地に位置する。大西洋の影響を大きく受ける海洋性気候で、日照に恵まれた土地である。ブドウ畑が延々と広がるメドック地区と比べ、この地区は歴史的遺産と変化に富んだ地形の風景が展開する。このAOCはブライ市の他40ヶ村が指定地域にあたり、土壌は主に石灰岩の上に粘土質が重なっている。北部のサン・シエ村周辺は、赤味のある二酸化ケイ素と白砂が砂利に混ざった下層土壌で、この地域の他の土壌と異なる。
この地にブドウの木が持ち込まれたのはローマ時代で、15世紀にはメドックよりもこの地区の方が有名であった。ジロンド川が大西洋に注ぎこむ河口にあるブールジェ・ブライ地域は、地理的に船が寄港しやすく、また聖地サンティアゴ・コンポステラへの巡礼路の重要な経由地であったことも中世後期にワイン生産と交易が盛んになった要因である。
ブライの赤ワインは優美で、やや軽めで繊細な味わいがあり、色調は鮮やかでフルーティな香りがある。この地区の南部で造られる赤は比較的長期熟成に向き、北部のものは若飲みが適している。白ワインは軽めで柔らかくフルーティな味わいで、シダや柑橘系の香りがある。
AOCブライの赤ワイン用ブドウ品種は主にメルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フランで、補足的にコット(マルベック)、プチ・ヴェルド、カルメネールが使われる。AOCコート・ド・ブライのラベルが貼られる白ワインは、主にソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ミュスカデルから造られている。