ボルドー地方のグラーヴ地域にあるワイン生産地で、甘口白ワインのAOC。1936年にAOC指定を受けた。
このAOCでは、同じくグラーヴ地域にあり世界的に有名なAOCソーテルヌと同様の製法で甘口白ワインが造られるが、ソーテルヌの格付けにおいて選出されたシャトーを有さないため、日本ではまだ多くは知られておらず、また値段も低い。
しかしその品質はとても高いものが多く、ソーテルヌの格付けで特別級のシャトー・ディケムに劣らないとも評される。ソーテルヌ・バルザックと同様に、完熟したブドウを枝につけたまま干しブドウの状態にしてから収穫したり、貴腐菌によって貴腐ブドウとなった状態のものを収穫したりするなどして、凝縮した高い糖度のブドウから甘口の白ワインが造られている。
セロンのワインは繊細でエレガントなのが特徴で、5年から15年の熟成が飲み頃とされる。AOCを名乗る際に指定された糖度は、セロンが1リットル当たり212グラムであるのに対してソーテルヌは221リットルと高く、濃度についてはソーテルヌの方が秀でている。
栽培品種はソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ミュスカデルである。ガロンヌ川と支流のシロン川が合流する地域で、シロン川の左岸のバルザックAOCの北に隣接する。石灰質土壌の表面にはガロンヌ川から運ばれた小石が現れている。木々の茂みに被われて蛇行するシロン川は太陽の光を受けることが少ないため水温が低い。そのシロン川が、緩やかで水温が高めの暖かいジロンド川に出合うとき、朝霧が発生する。この霧の影響を受けてセミヨン種に貴腐菌が付着し、貴腐ブドウを育てる条件となる。貴腐ワインと一口にいっても、畑の日当たりや風によって味わいは異なるが、この地区の貴腐ワインは概してフレッシュでミネラル感のある味わいが特徴である。
このAOCに指定されているのは、AOC名ともなっているセロン村の他、イラ村、ポダンサック村で栽培されたブドウから造られたワインである。また、この地区ではACOCセロンで産出される甘口白ワインの他に、AOCグラーヴとしてラベル表記される辛口白ワインも造られている。