ソーテルヌ・バルザック

ソーテルヌ・バルザックワインの特徴とは

   

ソーテルヌ・バルザックは、甘口白ワインの銘醸地として知られている。セミヨンカベルネ・フランミュスカデルなどを使ってつくられる白ワインは、フランスでも随一と称される。シャトー・ディケムをはじめ有名なシャトーも多い。

気候・風土

ボルドー地方のグラーヴ地域にあるワイン生産地で、それぞれがAOCに指定されている。いずれもフランスを代表する甘口・白の貴腐ワインの銘醸地である。1936年にAOC指定を受けた。

これらのAOCはシロン川を挟んで位置する。ガロンヌ川の支流シロン川がガロンヌ川に合流する地域に黄土色の小石で覆われた土壌が広がる。シロン川の左岸にあたる北側の地区がバルザックAOC、右岸にあたる南側の地区がソーテルヌAOCだ。

木々の茂みに被われて蛇行するシロン川は太陽の光を受けることが少ないため水温が低い。そのシロン川が、緩やかで水温が高めの暖かいジロンド川に合流する付近では、朝霧が発生しやすい。この霧の影響を受けてセミヨン種に貴腐菌が付着し、貴腐ぶどううを育てる条件となる。

地理的背景に恵まれたこれらの地区で造られる甘口白ワインは、20~30年と長期熟成をさせることで独特の甘さと風味を持つ絶妙のワインに育つ。フランス随一の甘口白ワインともされる。

ぶどう耕作面積は、ソーテルヌが1,735ヘクタール、バルザックが465ヘクタール。AOCソーテルヌは、ソーテルヌ村、ボンム村、フォルグ村、ブレイニャック村、バルザック村で生産される。AOCバルザックはこのバルザック村が持つ独自のAOCで、AOCソーテルヌとバルザックのいずれを名乗ることも許可されている。
ソーテルヌ・バルザック地域には独自の格付けがあり、1855年のメドック赤ワインの格付け選出時に、フランスの最高級白ワインとしてソーテルヌおよびバルザックから選出されて格付けされた。

AOCソーテルヌからはシャトー・ディケムをシュペリエール(特別級)とし、11シャトーを1級(プルミエ・クリュ)、10シャトーを2級に選出。AOCバルザックからは1級はシャトー・クリマンとシャトー・クーテ、2級に8シャトーが選出されている。

現在に至るまでシャトーの有為転変もあり、畑の分割や合併、変名もある。メドック同様、格付けと実力が比例しない場合もあるが、高品質な甘口白ワインが生まれる土地であることは間違いない。

Sauternes

ワインの特徴

AOCソーテルヌは長期熟成型で、豪華絢爛、深淵な味わいと豊かな芳香があるずっしりとしたワイン。ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、並びにハンガリーのトカイワインと共に世界三大甘口ワインの一つとされている。

AOCバルザックは単独のAOCを取得しているが、先述のようにこの地区で醸造されたワインはAOCソーテルヌ、AOCバルザックのどちらも名乗ることができる。AOC名から持たれるワインの印象に沿ってAOCバルザックを名乗ることが一般的であるようだ。ソーテルヌと比較すると色はやや薄く、甘味も薄くやや軽めのさっぱりとしたワインとなる。

いずれとも使用品種はセミヨン、カベルネ・フラン、ミュスカデルだ。完腐し、果皮がしわしわになったぶどうの状態を「ロースト」と呼ぶ。当然のように通常のぶどうよりも水分が少ないため、収穫しても醸造に回される果汁の量は少なく、結果的に生産量も限られる。

外観はゴールドから、経年熟成によって独特の琥珀色となる。艶のある液体からはトロピカル系のドライフルーツやナッツ、またはちみつなどの香りが立ち、その馨しさは独特のエロティックさを感じさせる。味わいはインパクトがある口当たりの反面、後味は比較的さわやかさを残すものも多い。カナダなどでつくられるアイスワインと近い印象だ。

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一押しのワイナリー/当たり年

ソーテルヌ・バルザックの中で、各方面で高評価を得ている生産者として、シャトー・ディケム、シャトー・ギロー、シャトー・クーテ、シャトー・クリマン、シャトー・クロ・オー・ペイラゲイ、シャトー・シガラ・ラボー、シャトー・スデュイロー、シャトー・ド・レイヌ・ヴィニョーなどがある。

また長年の熟成が可能なワインだが、その中でも2005年、2001年、1998年、1990年、1988年などが当たり年とされ、価格が高騰する傾向がある。

1949 Chateau Coutet a Bar

エピソード

ソーテルヌ地区の最高峰として押しも押されぬ高級ワインとなったシャトー・ディケムであるが、その誕生には以下のような伝説がある。

オーナーの伯爵がロシアへ戦争に赴いた際に、自分が戻るまでぶどうの収穫をするなと指示をした。伯爵が帰還したのは予定よりはるかに遅い時期であったが、領民は言いつけを守ってぶどうを収穫せず、大切なぶどうはカビだらけの皺だらけになっていた。

伯爵は落胆しながらも、そのカビのついたぶどうを収穫し、醸造し、樽詰めしたところ、この奇跡の甘美な液体が出来上がっていたというのだ。

同様に、使用人がストライキを起こし、すべてのぶどうを収穫できなかったとする説もあり、真偽のほどは確かではない。しかし、凡庸な白ワインを醸造していたシャトーが何らかの偶然により、この奇跡の液体を生み出すに至ったのは、大変興味深いことだ。

Ch?teau Doisy-V?drines, Barsac, Sauternes

代表的なワイン

・シャトー・ディケム
・シャトー・ギロー
・シャトー・クーテ

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