ボルドー地方にあるワイン生産地域。地域を指す名称としても使われる他、グラーヴ(Grave)は地区AOCとしても指定されており、赤白両方のワインに指定されている。1937年にAOC認定された。
ボルドー市の南東、ガロンヌ川左岸に全長約50kmの地帯に広がる地域で、AOCグラーヴにあたるブドウ耕作面積は3,100ヘクタールである。
1855年のメドックの格付け1級の5大シャトーのうちシャトー・オーブリオンはこのグラーヴ地域に属する地区AOCペサック・レオニャンが有する。他にこの地域に属するAOCは、ソーテルヌ、バルザック、セロンである。
ガロンヌ川の水源はスペイン国境のピレネー山脈にあり、ボルドー市のやや北部、メドック地区にあたるところでトルトーニュ川と合流してジロンド川となり大西洋に注いでいる。グラーヴは砂利を意味するフランス語で、グラーヴの畑はこのガロンヌ川が運んだ砂利と玉石に覆われている。
メドック地区が有名になる18世紀以前はグラーヴのワインが圧倒的に人気を博していた。
ボルドーで産出される赤ワインは英国でクラレットと呼ばれていたが、ボルドー市に近くガロンヌ川沿いという地の利もあり、当時は英国に輸出されるクラレットの一大産地であった。18世紀以降はメドックの存在の陰となることが多く甘口白が主流ともなったが、1970年代に入ってからは赤が増えて品質の向上も目覚ましく、白ワインは軽めの辛口が多くなった。
第二次大戦後は1953年に赤ワインのみを、1959年には白ワインも対象としたグラーヴ独自の格付けがなされた。最新の改定は2003年に行われたが、等級を定めていないものであるためその品質には大きなひらきがあり、価格の差も大きい。
このAOCの指定地域内には43ヶ村が含まれる。
ボルドーワインのAOCとしては珍しく、赤のみでなく辛口白や甘口白も生産しており、一つのシャトーが赤白ともに生産しているケースが多い。
赤はカベルネ・ソーヴィニヨンを主体とし、カベルネ・フラン、メルロー、コット(マルベック)、プチ・ヴェルドなどで造られているが、メドックのものと比べるとやや軽く、優しい味わいのものが多い。スミレやいぶされたような香りが特徴で、どちらかというと若飲みタイプが多い。
白ワインはスッキリした新鮮さにあふれた辛口が多く、セミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルから造られる。AOCグラーヴに指定された地域は、AOCグラーヴ・スーペリウールという甘口白のAOCの指定も受けている。これは甘口でありながら爽やかな味わいを持つ良質ワインで、AOCグラーヴの辛口白と同様にセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルから造られる。
一押しのワイナリー/当たり年
グラーヴ(Grave)の生産者のうち、格付けを得ている作り手として、シャトー・オー・ブリオン(Chateau Haut Brion)、シャトー・ド・フューザル(Chateau de Fieuzal)、シャトー・オー・バイイ(Chateau Haut-Bailly)、シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン(Chateau La Mission Haut Brion)、シャトー・ラ・トゥール・オー・ブリオン(Chateau La Tour Haut Brion)、シャトー・パプ・クレマン(Chateau Pape Clement)、シャトー・スミス・オー・ラフィット(Chateau Smith Haut Lafitte)、シャトー・ブスコー(Chateau Bouscaut)、シャトー・カルボニュー(Chateau Carbonnieux)、シャトー・ド・シュヴァリエ、シャトー・ラトゥール・マルティヤック(Chateau Latour Martillac)、シャトー・マラルティック・ラグラヴィエール(Chateau Malartic Lagraviere)、シャトー・オリヴィエ(Chateau Olivier)、シャトー・クーアン(Chateau Couhins)、シャトー・クーアン・リュルトン(Chateau Couhins-Lurton)、シャトー・ラヴィユ・オー・ブリオン(Chateau Larrivet Haut Brion)が挙げられる。
ボルドー左岸のワインは、2010年、2009年、2006年、2005年、2003年、2000年、1998年、1996年、1995年、1990年、1989年、1988年、1986年の出来が良いと評価されている。2000円台から数万円までの幅広い価格で販売され、格付けシャトーのものは資産的価値が高い。
グラーヴの代表的なワイン
・シャントグリーヴ・ブラン・カロリーヌ
・シャントグリーヴ