ボルドー地方のAOCオー・メドックの中にある独立した赤ワインのAOC。メドック地区に6つある村名AOCのひとつである。1936年にAOCの認定を受け、有名シャトーを数多く擁する重要産地で、力強い赤ワインを産する。
サン・ジュリアンの気候・風土
サン・ジュリアン(Saint Julien)はボルドーのぶどう栽培地で最も美しい展望を持つとされる村で、AOCポイヤックの南に隣接する広さは920ha程度で、ガロンヌ川から運ばれた沖積土の砂利でできたぶどう畑は、西から東に流れる穏やかな傾斜地にある。水はけのよい砂利の下層土壌は石灰質の石の堆積物があり、ぶどうの古木は水を求めて地下水の表層レベルまでさらに深く延びている。こうした土壌はカベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に最適だ。
サン・ジュリアンの特徴
このAOCは高名なシャトー・マルゴーのあるマルゴー村と、1級格付けのシャトーが3つもあるポイヤックの間に位置する。ワインは両者の特質を程よく兼ね備えたバランスのよいものである。
マルゴーの華やかさやポイヤックの堂々とした性質はないものの、慎ましやかで気品のあるスタイルがこの地のワインの魅力である。
比較的若いうちから楽しむことができ、また同時に長寿でもある。1855年のメドックの格付けにおいて、第2級シャトーが5つ、第3級が2つ、第4級が4 つの合計11シャトーが選出された。第1級のプルミエ・クリュに格付けされたものはないものの、非常に優れたワインが多く産出されるAOCである。
サン・ジュリアンのワインはカシスやカカオの香りが特徴だ。それに加え、豊かなフローラルの香りに彩られた、バランスのよいスマートな印象と言える。
村名AOCは必ずしもその由来となる村のぶどうのみを使ったワインのみを指すものではなく、複数の村のぶどうから造られることがあるが、このAOCもそのひとつである。
ワインは主にサン・ジュリアン村のぶどうを使ってサン・ジュリアン村でつくられているが、他にも少量ながらキュサック村とサン・ローラン村で栽培されたぶどうも使ってワインがつくられている。使用品種は、主にカベルネ・ソーヴィニヨンで、他にはカベルネ・フラン、メルロー、コット(マルベック)、プチ・ヴェルドや、少量のカルメネールなどである。
エピソード
サン・ジュリアンのワインは、同生産地を含むアキテーヌ地方の料理との相性が抜群だ。具体的には、お隣のポイヤックと同様に羊肉を使った料理や、ジビエの野性的なテイストにも合わせられる。
また、ハムなどのシャルキュトリー類や、マスタードを使用したウサギ肉料理とも相性が良い。
一押しのワイナリー/当たり年
サン・ジュリアン(Saint Julien)の生産者のうち、各方面にて高い評価を得ている作り手として、シャトー・デュクリュ・ボーカイユ(Chateau Ducru Beaucaillou)、シャトー・サン・ピエール(Chateau Saint Pierre )、シャトー・タルボ(Chateau Talbot)、シャトー・レオヴィル・ポワフェレ(Chateau Leoville Poyferre)、シャトー・グリュオ・ラローズ(Chateau Gruaud Larose)、シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ(Chateau Leoville Las Cases )、シャトー・ラグランジュ(Chateau Lagrange)、シャトー・ランゴア・バルトン(Chateau Langoa Barton)などが挙げられる。
ボルドー左岸のワインは、2010年、2009年、2006年、2005年、2003年、2000年、1998年、1996年、1995年、1990年、1989年、1988年、1986年の出来が良いと評価されている。シャトーの格付けやヴィンテージにもよるが、3000円台から数万円まで幅広い価格・値段にて販売されている。