紀元前から自生の品種によるぶどう栽培が行われ、東欧の中でも長い歴史をもつワイン名産国である。 最も有名なのは北東にあるトカイで、トカイワインは世界3大貴腐ワインのひとつに数えられる。
ハンガリーワインは酸味が多く、爽やかなものが多いのが特徴。日常消費用のものから、高価なデザートワインなど、種類が豊富である。赤ワインであれば、フレッシュな味を楽しめるライトボディのものの人気が高く、白は甘酸っぱいものが多く飲まれている。中でも最も有名なものはトカイワインで、ルイ14世がワインの王様と称して賛美したとされる。
ハンガリーは大陸性気候に準じており、夏は乾燥期を迎えて暑く、冬は寒さが厳しい。土壌は多岐にわたるが、バラトン湖北岸のバダチョニの丘やトカイ地方は火山岩系土壌からなり、ドナウ川東岸の平原地帯は砂礫土壌となっている。
1994年に施行されたワイン法によって22地域がワイン産地に指定され、地域によって様々な特徴のあるワインが産出されている。主な産地としては、白ワインの名産地でもあるバラトン湖の一帯や、トカイ盆地、エゲル地方が挙げられる。
多くの固有品種によってワインが造られているが、トカイワインの原料となるフルミント種や、“雄牛の血”と呼ばれハンガリーの赤ワインの中で中心的なエグリ・ビカヴェール種などが有名である。その昔、戦地で赤ワインを飲み続けていたハンガリー兵の赤く染まったひげを見て、トルコ兵が牛の血を飲む民だと思い込み恐怖を感じて逃げ去ったというのがこの名前の由来である。
トカイワインは貴腐を意味するトカイアスーとも呼ばれ、ボトリティス・シネレア菌がついた貴腐ブドウを手摘みで選別し、ペースト状にしたものを高品質の辛口の白ワインに加えて造られる。貴腐ブドウは水分が蒸発し、糖度が通常の倍以上になるため時間をかけて発酵する。高い糖度とともにその独特の香りも特徴で、世界で最も希少価値のあるデザートワインとして珍重されている。フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼと並び世界三大貴腐ワインと称されるが、トカイは他の2つの元祖とされる。
ワイン造りの歴史はローマ時代に遡る。ローマ人によってブドウ栽培と醸造方法が伝えられ、ドナウ川にそってブドウ耕作地が拡大した。15世紀にトカイワインが、16世紀にエグリ・ビカヴェールが、17世紀にトカイアスーが出現した。
第二次大戦中はソヴィエトの占領下でワイン事業は国有化されたが、1989年に民主化された後は外国からの資本や技術の導入が進み、設備の近代化とともにワインの品質向上が図られている。現在多くのワイナリーは私有化されており、生産されるワインの60%は白である。