ニュージーランド

ニュージーランドワインの特徴とは

   

ニュージーランドは世界でも新しい産地のひとつ。そのワイン生産量は全世界の1%程度だが、涼しい気候ゆえにワインづくりに適している。1980年代後半にソーヴィニヨン・ブラン、1990年代末からピノ・ノワールを使ったワインがつくられるようになった。

その後もワイナリー数と生産量は年々増加。ニュージーランドワインの赤白比率は約1:6と白が多いのが特徴の一つでもある。特にソーヴィニヨン・ブランは人気の高い白ワインとして知られている。

生産地域は北南の二島に存在するが、南島のマールボロ地区だけでニュージーランド全生産量のおよそ半分を占めている。そのほかの主要産地は北島にギズボーン、ホークス・ベイ、ワイララパ(マーティンボロー)、南島にセントラル・オタゴがある。

マールボロのソーヴィニヨン・ブラン、ワイララパとセントラル・オタゴのピノ・ノワールの評価が特に高い。

栽培品種として、白ワインではソーヴィニヨン・ブランやシャルドネ赤ワインではピノ・ノワール、メルローカベルネ・ソーヴィニヨンといった品種の人気が高い。特にソーヴィニヨン・ブランは全生産量の66%と最重要のぶどう品種となっている。

また海外への輸出がワイン全販売量の7割を占め、輸出ありきの生産体制となっていることがうかがえる。輸出先はアメリカ、イギリス、オーストラリアが多く、この3国で全輸出量の8割を占めている。

同国は島国であり日本と同様に南北に長く、ぶどう産地のほとんどが東海岸に存在する。北島は亜熱帯のようなトロピカルな雰囲気があり、首都オークランドなどはこの地域に位置する。

ニュージーランドのワイン産地はほぼ全土が西岸海洋性気候だが、世界で最も南に位置するワイン生産地域であるセントラル・オタゴのみ大陸性気候で非常に乾燥している。

ニュージーランドでワインの人気が高くなってきたのはこの10年程で、この30年間で個人のワイン消費量が10倍になった。歴史も浅く流通も多くはないが、恵まれた土壌で作られる高品質なワインや、スクリューキャップを導入し定着する事で親しみやすさも後押しし、今では世界的に認められる生産国となった。今や全ボトルワインの99%以上がスクリューキャップを採用している。

SILENI ESTATES WINERY

ニュージーランドの主なワイン生産地

ニュージーランドワインで押さえておきたいワインの産地は次のとおりだ。

・ノースランド
ニュージーランドで初めてぶどうの樹が植えられた地域。ニュージーランドの最北端、つまり北島の北側にあり、国内では赤道に最も近い位置にある。そのため、気候は国内で最も温暖だ。カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シャルドネなどのぶどうが栽培されている。

・オークランド
ノースランドの真下に位置しており、比較的温暖。ニュージーランド最大の都市があるため、大手のワインメーカーが集まっている。ワイヘケ島などの自然の豊かな場所があり、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを使ったボルドースタイルの赤ワインの産地として有名だ。

・ワイカト&ベイ・オブ・プレンティ
他のエリアよりも比較的湿度が高く、シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブランなどが栽培されている。ニュージーランドの中では最も規模の小さなワイン生産地だが、貴腐ワインなどの高級ワインもつくられている。

・ギズボーン
世界で最初に朝日が昇る場所として、新年には観光客が多く集まるギズボーン。世界で最も日付変更線に近いため、世界で最も東に位置するワイン産地とされている。シャルドネの栽培が盛んで約半数にも及ぶことから、「シャルドネの首都」の異名を持つ。

・ワイララパ
ピノ・ノワールの名産地として有名なマーティンボローを擁する地域。北島の南端に位置する小さな町で、家族経営の小規模ワイナリーが多い。ぶどうの生産量自体はニュージーランドの全生産量の1%に過ぎないが、そこでつくられるピノ・ノワールは、本場フランスに引けを取らないと世界中で高評価を得ている。ソーヴィニヨン・ブランを中心に、リースリングピノ・グリが栽培されている。

・マールボロ
南島のマールボロ地区はニュージーランドのワインを世界レベルに押し上げた立役者とも言える。同国内で最大の栽培面積を誇り、その8割でソーヴィニヨン・ブランが栽培されている。
特徴としては、ソーヴィニヨン・ブラン特有のハーブや青い草のような香りと、パッションフルーツやグアバなどのトロピカルフルーツの風味が上手く調和していることだ。このスタイルのソーヴィニヨン・ブランはセンセーショナルな熱狂を呼び、各国の生産者に追随されることとなった。

・ホークス・ベイ
北島のホークス・ベイはマールボロに続く規模の生産地。ソーヴィニヨン・ブランのほか、メルローやシラーなど黒ぶどうの栽培が行われている。近年は、お隣のオーストラリアとは一味違う、冷涼地帯で栽培されたシラーの味わいが高評価を得ている。シャルドネの主要な生産地の一つでもある。

・ネルソン
南島の北端にあり、「サニーネルソン」と称されるほど日照時間が長い。小規模な家族経営のワイナリーが多いが、栽培されるぶどう品種は多様。ドイツ系やオーストリア系の移民が多く、リースリングなどのドイツ系ぶどう品種も生産されている。希少価値の高いプレミアムワインの産地として知られている。

・カンタベリー
オーガニック農法に取り組む生産者も多いカンタベリー。ワインの生産が始まったのは1978年と比較的最近のことだが、ぶどうの栽培に適した涼しく乾燥した海洋性気候なので、さまざまなぶどう品種が栽培されている。肥沃な土壌と夏と冬の寒暖差が、凝縮感のある複雑な果実味のワインをもたらす。

・セントラル・オタゴ
同国内で最も南端に位置するワイン産地で、昼夜の気温差が大きく、夏場はほとんど雨が降らない。ピノ・ノワールの一大産地として知られる。

夏は短いが、ぶどうの生育期間中、昼は34℃、夜は10℃といった極端な気温差となり、果実の熟成感と繊細な味を両立する稀有なピノ・ノワールの収穫を可能にしている。

・ワイタキ・ヴァレー(ノース・オタゴ)
同じオタゴでも、ノース・オタゴはセントラル・オタゴによりも冷涼。ぶどうの栽培が始まったのは2001年からで、ニュージーランドのワイン産地の中では最も新米だが、近年は、石灰岩質の土壌が世界中から注目を集めつつある。

Mountford Pinot Noir, Waipara

ニュージーランド注目のワイナリー

・クラウディ・ベイ
マールボロのソーヴィニヨン・ブランといえばクラウディ・ベイと言われてきたほど、その緻密なワインづくりを評価されてきたワイナリーだ。

すっきりとした爽快感と、ハーブの香り、フルーツの魅惑的なアロマが調和した同社のソーヴィニヨン・ブランは、ベスト・セラーの1本だ。現在はLVMH(モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン)傘下にあり、世界中で人気のワインとなっている。

・ドッグ・ポイント
クラウディ・ベイの礎を作った醸造家と栽培技術者がタッグを組み、マールボロの真価を引き出したワインをつくっている。ソーヴィニヨン・ブランはもちろんのこと、ピノ・ノワール、シャルドネも手掛け、どの品種も奥行きのある複雑さと豊かな味わいが特徴だ。

・マヒ
先住民マオリの言葉で「作品」「工芸品」といった意味を持つ「マヒ」。

その言葉のとおり、手積み収穫や野生酵母といったこだわりを持って丁寧につくり上げられたワインは、実にピュア&シンプル。

個性を失いつつあるマールボロのソーヴィニヨン・ブラン市場のなかで、マールボロらしさを表現するという原点を見失わずワインづくりを続け、着実に評価を上げている。

・シレーニ・エステイト
北島ホークス・ベイにワイナリーを構え、その質の安定した高さとコストパフォーマンスの良さから国内外の人気を博しているシレーニ。日本でも人気筆頭、一番輸入されているニュージーランドワインだ。

・ボールドヒルズ
ファーストヴィンテージが2002年の新しいワイナリー。しかし、インター・ナショナル・ワイン・チャレンジなどの世界最高峰のコンクールで数多くの受賞を果たしている。ぶどうの栽培においては丁寧さを最も大切にしており、そのワインの質の高さは疑う余地がない。

・ヴィラマリア
世界中のワインコンペでニュージーランド最多の受賞歴を誇るワイナリー。35年以上にわたって、連続して受賞してきた歴史がある。1961年創業の老舗だが、今までに一度も外国の資本が入ったことがない。これはニュージーランドのワイナリーの中では珍しい。

・フォリウム・ヴィンヤード
日本人の岡田岳樹氏がマールボロのブランコット・ヴァレーに設立したのがフォリウム・ヴィンヤードだ。ワイナリーには自身の名前を冠せず、ラテン語でぶどうの葉を意味するフォリウムと名付けた。ソーヴィニヨン・ブランとピノ・ノワールの栽培に心血を注ぎ、最高品質のワインを生み出している。

・ミッション・エステイト
1851年創業の老舗で、ニュージーランド最古のワイナリーとされている。1838年にニュージーランドにわたってきたフランス人宣教師たちによって発足された。フランスの伝統を大事に守りながらワインづくりを続けている。

Autumn Vines & Withers

ニュージーランドの主なぶどう品種

南北に長い国土を持ち、寒暖差が地域で激しいニュージーランドでは、多様なぶどう品種が国内の各地でつくられている。

・ソーヴィニヨン・ブラン
ニュージーランドはソーヴィニヨン・ブランの一大産地だ。ニュージーランドで最もつくられている白ぶどう品種であり、ニュージーランドで栽培されているぶどう全体のうち50%、白ぶどう全体のうち70%がソーヴィニヨン・ブランとなる。

ソーヴィニヨン・ブランが最初にニュージーランドで栽培されたのは南島のマールボロで、1973年のことだ。今やニュージーランドを代表するぶどう品種であり、その総栽培面積は約2万haに及ぶ。ニュージーランド国内のぶどう栽培面積の約60%を占めている。

ニュージーランドのソーヴィニヨン・ブランは、柑橘系のすっきりとした香りを持つ爽やかな白ワインに仕上がる。樽などを使わずにぶどう本来の味を生かす製法でつくられるため、ぶどうそのものの特徴がよく表れている。1980年代には、マールボロでつくられたものが国際的なワイン・コンペティションで最優秀賞を受賞した。

・ピノ・ノワール
ニュージーランドにおいて黒ぶどうの中で最も栽培されているのがピノ・ノワールだ。ニュージーランドで2番目に多くつくられているぶどう品種であり、その生産量はぶどう全体の約15%となる。ニュージーランドで栽培される黒ぶどう全体で言えば、約50%がピノ・ノワール。栽培面積は約0.5万haで、黒ぶどうの栽培面積で1位の広さだ。マーティンボローやセントラル・オタゴなど南部の冷涼な気候で栽培され、そこでつくられたピノ・ノワールの品質は本家本元であるブルゴーニュに引けを取らないほど素晴らしいものだという。

・ピノ・グリ
ピノ・ノワールが突然変異を起こし、灰色がかったピンク色になったものがピノ・グリだ。潜在糖度が高く、温暖な気候で育つと重たく切れ味の悪いワインになるため、ニュージーランドのような冷涼な気候の地域が栽培に適している。ニュージーランドでは南島のマールボロを中心に、リースリングからの植え替えなどによって栽培が増えている。しかし、未だ全ワイン生産量の6%しかつくられておらず、希少価値が高い。ニュージーランドのピノ・グリは、適度な酸味とミネラル感があり、フレッシュ感に満ち溢れている。

他にも、ニュージーランドでは多くのぶどう品種が栽培されている。白ぶどうではシャルドネやリースリング、黒ぶどうではメルローやカベルネ・ソーヴィニヨンなどがつくられている。生産量は白ぶどうではシャルドネが2位で、ピノ・グリが3位、リースリングが4位。黒ぶどうではメルローが2位、カベルネ・ソーヴィニヨンが3位となる。

SILENI ESTATES WINERY

ニュージーランドワインの当たり年/ヴィンテージ

ロバート・パーカーヴィンテージチャート によると、96点以上(まれに見る出来栄え)を獲得した当たり年のヴィンテージはない。

しかし、あまり評価の高くない1980年代後半から2000年前後に比べると、2000年代中盤以降はぶどうの評価が一定して上がっており、2008年と2012年を除いては、概ね80点台後半から90点台という高評価がついている。

Yealands Winery & Vineyard, Marlborough

ニュージーランドワインの格付け

ニュージーランド食品衛生安全局が、ワイン生産の基準とラベル表記などを管理している。関連法令はオーストラリア・ニュージーランド食品基準規約、食品法(1981年制定)、改定ワイン法(2003年)などがある。

単一の品種名、収穫年、産地名の表記には、それぞれ85%以上のぶどうを使用していなければならない。複数の品種等を表示する場合には、使用比率の多い順に表示する。

ニュージーランドでは、2006年11月に地理的表示に関する制定法が成立。地理的表示(GI)が指定されるようになる予定となったが、近年に到るまで同法は施行されてこず、法律的な規制はないままだった。

しかし、2017年7月には地理的表示保護制度を正式に発足。18の具体的な地域がその生産物を名乗ることができる原産地と認定され、地理的表示登録法のもとで法的に保護されることになった。

Te Mata Estate

ニュージーランドワインの歴史

1819年に隣国オーストラリアから北島のケリケリにブドウの木が持ち込まれた。当時持ち込まれた品種は複数に渡り、数は100本程度であったと言われている。原住民であるマオリ族に農業を教える一環であったが、この時点ではまだワインが醸造された記録はない。

北島でのワインづくりは、オーストラリアのぶどう栽培において非常に重要な役割を果たした人物、ジェームズ・バズビー氏により、1836年北島ワイタンギに開かれたぶどう畑から始まった。1852年イギリス自治領となったニュージーランドでは北島でいくつかの生産地が発展したほか、南島でも1875年にはワイン生産が始まり、ヨーロッパ大陸におけるワインの歴史と同様に、キリスト教の布教とぶどう栽培という密接な関係を持ちながら国内に広がっていった。

Components

1900年代初頭、レバノン移民やダルマチア地方からの移民が北島でワイン作りを始め、その頃からのワイナリーが老舗としていくつか現在も残っている。とはいえ、20世紀中盤までは現在のような辛口ワインではなく、酒精強化ワインの醸造がメインであった。

同時に、第二次大戦大戦前後よりワイン価格は急騰し、需要に生産量を追いつかせるため、水を加えたり砂糖を加えたりした粗悪品が販売されていた。

近代的なワイン醸造が始められたのは1973年以降ミュラー・トゥルガウの栽培が奨励されてからで、このころには日本にも国産ワイン用の原料として甘口のワインが大量に輸入されていた。

北島ギズボーン地域でのミュラー・トゥルガウの栽培が成功し、その後1995年にソーヴィニヨン・ブランが栽培量トップになるまで、ミュラー・トゥルガウは広く生産されていた。ちなみに、冷涼な南島で良質なぶどうが育つとは考えられていなかったことが南島のワインづくりの発展を遅らせた。

wine barrels (IMG_3897c)

ワインづくりが急激に広がったことで一時は生産過剰となり品質が下がってしまったが、これを憂慮した政府がぶどう耕作地を減反し、規模を縮小することで品質向上に成功した。

その後、南島マールボロのソーヴィニヨン・ブランがコンテストで頻繁に入賞し、良質なシャルドネが栽培されるようになるなど、徐々にニュージーランドワインの評価が世界的に高まってきた。

1996年には原産地統制呼称法が成立した。白に遅れてピノ・ノワール、メルローやシラーなどの黒ぶどうの導入、高級ワインへの亜硫酸無添加、スクリューキャップの定着など、さまざまな試みに挑戦して変化を遂げている。

ピノ・ノワールについても非常に品質の高いぶどうの栽培がされており、小規模ながら意欲的な作り手が数多くしのぎを削っている。

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