カベルネ・ソーヴィニヨン

カベルネ・ソーヴィニヨンとは――味の特徴、おすすめワイン、主な産地をチェック

   

カベルネ・ソーヴィニヨンの意味/品種

カベルネ・ソーヴィニヨン(Cabernet Sauvignon)とは、フランス南西部のボルドー地方原産の赤ワイン用ぶどう品種。最もよく知られる赤ワイン用ぶどう品種の1つで、栽培面積世界第1位の生産量を誇る。

DNA研究によって、カベルネ・フランとソーヴィニヨン・ブランの自然交配から生まれたことが1997年に明らかにされた。

温暖な気候と水はけのよい砂利質の土壌を好むことから、ボルドーではメドック地区やグラーヴ地区で多く栽培されている。晩熟型で気候によって品質が左右されるため、栽培リスクの軽減と品質維持、味の調整を目的としてボルドーでは伝統的にアッサンブラージュ(ブレンド)することで上質なワインを生み出している。

土壌への適応力が高く、病気や腐敗や害虫にも耐性が強いといった栽培のしやすさに加え、長い熟成を経なくても渋みが強く深い味わいのあるワインとなるため、新世界と呼ばれる地域でも多くつくられている。

ボルドーではブレンドが一般的だが、新世界のワインではカベルネ・ソーヴィニヨン100%の単一品種ワインも生産されている。カリフォルニアのナパ・バレーでは、ワイン評論家が高評価をつけたことで人気が高まったカルトワインと呼ばれる希少性の高い最高額のワインも産出されている。

1982 Chateau Mouton-Rothschild at Troquet

カベルネ・ソーヴィニヨンの特徴

果皮が厚いこの品種からつくられるワインは一般的に濃い色調でタンニンを多く含み、苦味や渋味を伴った味わいが濃く深く芳香が豊かである。長期熟成に耐え、若いうちは荒削りな印象であっても成熟してまろやかな味わいとなる。

ボルドー産などの最高級のカベルネ・ソーヴィニヨンは良年のヴィンテージ(収穫年)であれば10年から数十年の熟成によって重厚に成熟する。

フルボディのカベルネ・ソーヴィニヨンは、牛肉や豚肉、ラム肉、鹿肉など肉料理全般と相性が良く、渋みが口中の油分を洗い流してくれる。鶏のから揚げや煮込みハンバーグなどの家庭料理には、カジュアルなデイリーワインが合う。ローストビーフやビーフシチューなどには高めのワインが良く合っている。

Santiago Chile Reserves Santa Rita Winery

カベルネ・ソーヴィニヨンの味わい/香り

色調が濃く、タンニンからくる渋みや酸の量が多く、樽熟成が行われることが多い品種のため、樽由来の香りと味わいを多く感じられる。ボルドーではパワフルで力強い個性のカベルネ・ソーヴィニヨンに軽やかさを出すためにカベルネ・フランや柔らかい味わいのメルローとブレンドすることが多い。若いときは渋みが強すぎ、味わいも硬い印象があるが、熟成が進むとエレガントで複雑な風味のワインとなる。

香りはカシスやブルーベリー、ブラックベリーなどの濃い果実香で、冷涼な地域や早熟なものはピーマンや杉といった清涼感のあるフレーバーがある。アメリカ、オーストラリア、チリなどのワインではカベルネ・ソーヴィニヨン単一で醸造されることが多く、黒みを帯びた濃い色調で凝縮感があり、香りや味わいに樽由来のビターチョコレートやヴァニア香などの甘苦味を感じられる。

1991 Shafer Hillside Select

カベルネ・ソーヴィニヨンの主な産地

原産地であるボルドーからフランス全土、ヨーロッパ各国から新世界の国々へと瞬く間に広まり、国際品種として世界各地で栽培されることになったカベルネ・ソーヴィニヨンだが、各地でワインのつくり方や味わいに違いがある。

フランスではボルドー地方以外にも、ラングドック・ルーション地方や南西地方でも栽培されている。単一品種のものも複数品種のブレンドも両方つくられており、凝縮した果実味の高品質でリーズナブルな価格帯のものが多い。

イタリアでは、1970年代頃、世界に通用する高品質なワインをつくろうとする生産者が現れ始め、イタリアワイン・ルネッサンスと呼ばれる動きが起こり、近代的醸造技術の導入やカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどのボルドー品種が植えられるようになった。トスカーナ地方のボルゲリで誕生した、カベルネ・ソーヴィニヨンからつくられるワインは「スーパータスカン(スーパートスカーナ)」と呼ばれるほど有名だ。イタリアのカベルネ・ソーヴィニヨンは豊富な日照量の影響で、重厚で親しみやすい味わいとなっている。

アメリカではほとんどの州でワインがつくられているが、総生産量の80~90%がカリフォルニア州で生産されている。1976年にパリで開催された、フランスとカリフォルニアのワインをブラインドテイスティングする試飲会で、カリフォルニアのナパ・バレーでつくられたカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネを使ったワインが、ブルゴーニュのグランクリュやボルドー1級ワインを抑えて赤ワインと白ワインそれぞれの部で1位を獲得したことで、カリフォルニアワインの品質の高さが一躍有名となった。

ナパ・バレーのカベルネ・ソーヴィニヨンは単一品種で醸造されることが多く、カシスやブラックベリーなど凝縮度の高い果実の香りやスパイシーな香り、アメリカンオークからくる甘みを感じるものが多い。長期熟成に向くプレミアムワインもつくられている。

チリでは、日中の豊富な日照量と、フンボルト海流(ペルー海流)で冷やされた海風が吹き込み夜は冷涼な気候、かつ、雨が少なく乾燥しているという恵まれた環境で、良質なカベルネ・ソーヴィニヨンが栽培されている。日本では「チリカベ」という愛称で人気を博した。チリのカベルネ・ソーヴィニヨンはアルコールのボリューム感があり、ミントやハーブなどの清涼感を感じられる。リーズナブルな価格帯のものが多いが、プレミアムワインもつくられている。

オーストラリアでは、南オーストラリア州のクナワラや西オーストラリア州のマーガレット・リバーがカベルネ・ソーヴィニヨンの銘醸地となっている。オーストラリアのカベルネ・ソーヴィニヨンはユーカリやメントールなどの清涼感があるのが特徴だ。オーストラリアで最も多く栽培されているシラーズとブレンドされることもある。

その他に、スペインではテンプラリーニョ、アルゼンチンではマルベックとブレンドされていることがある。南アフリカでは、単一品種の他に、メルローやカベルネ・フランとブレンドしたボルドーブレンドのワインもつくられている。

カベルネ・ソーヴィニヨンを使ったおすすめワイン

・レ・フィエフ・ド・ラグランジュ
ボルドー地方サン・ジュリアン村に位置する格付け3級のシャトー・ラグランジュによるセカンドワイン。セカンドとはいえ、酒質は充分に他の格付けシャトーに匹敵する。深みのある赤色の外観で、ブラックカラント、スパイス、タバコ、チョコレートの香りを感じ、肉厚で長い余韻を楽しめる。

・サッシカイア テヌータ・サン・グイド
元祖スーパータスカンとして30年以上にもわたり圧倒的な存在感を放ち続けるイタリアワインの偉大なつくり手、サッシカイア。エネルギッシュながらも全体のバランスに優れたエレガントなスタイルで、ミネラルとほのかな苦味を帯びた美しい余韻を感じられる。

・オーパス・ワン
五大シャトーの1つであるシャトー・ムートン・ロートシルトを所有するロートシルト家のフィリップ・ド・ロートシルト男爵と「カリフォルニアワインの父」と呼ばれるロバート・モンダヴィ氏のコラボレーションから生まれたカリフォルニアワイン。ボルドーのエレガンスとカリフォルニアの豊潤な果実味を感じられる柔らかい口当たりで、ヴィンテージによっては今後30年以上にわたっても美しく熟成していくことが期待できる。

・ロス・ヴァスコス カベルネ・ソーヴィニヨン
ボルドー1級シャトーであるシャトー・ラフィット・ロートシルトを所有するドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト・ラフィットが手がけるチリワイン。赤い果実の香りに、ドライフルーツのニュアンス。黒こしょうやナツメグのスパイスが効いた味わいで、ラフィットのエレガンスとコルチャグア・バレーの特徴を楽しむことができる。

・ジェイコブス・クリーク ダブル・バレル カベルネ・ソーヴィニヨン
オーストラリアで最も有名なカベルネ・ソーヴィニヨンの産地クナワラの厳選したぶどう畑から、パワフルに完熟したぶどうのみを使用してつくられたワイン。繊細で洗練されたタンニンがトーストのような複雑な味わいをもたらし、素晴らしい後味を感じられる。

・KWV クラシック・コレクション カベルネ・ソーヴィニヨン
南アフリカ最大の輸出業者であるKWV。ぶどう品種の個性をよく表したワインが多く、近年ではぶどう栽培やぶどう醸造に関する最新技術が導入され、品質が向上している。クラシック・コレクション カベルネ・ソーヴィニヨンは豊かな果実味が凝縮し、12カ月に及ぶ樽熟成に由来する複雑な風味と調和したワインに仕上がっている。

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