ピノ・グリ(Pinot Gris)とは、フランス東部のブルゴーニュ地方原産の白ワイン用ブドウ品種。果皮の色はピンクや灰色を帯びた紫など、通常の白ワイン用ぶどうと比べて濃いめの色合い。従ってピノ・グリを使ってつくられる白ワインも、濃いめの色合いに仕上がることになる。
特徴
歴史は中世のブルゴーニュ地方に遡ると言われる。18世紀から19世紀頃にブルゴーニュ地方やシャンパーニュ地方で人気の品種となったが、収穫量が少なく不安定であったために、栽培量は減っていった。ドイツでも同じ傾向があったが、20世紀に入ると栽培技術が向上し安定的に収穫できるように改良され、以降はイタリアや、ニューワールドの国々でも積極的に栽培されるようになった。一方、原産地とされるブルゴーニュ地方では、現在はほとんど作られていない。
近年カリフォルニア大学のDNA調査で、その類似性から黒ブドウのピノ・ノワール種からの突然変異種であることが分かったが、両者の特徴は非常に類似しており、果皮の色の違い以外には区別できないほどである。
味わい/香り
オーストラリアやニュージーランド、アメリカなどのニューワールドと呼ばれる国々では、酸味が柔らかく、よりアルコール度が高く、オイリーとも表現される風味を持つフルボディのワインが造られている。香りは、熟したトロピカルフルーツの香りやメロン、マンゴーの香りから、貴腐ワインのような香りがある。イタリアでは、熟した果実の香りを抑えてフレッシュな酸味を残すために早摘みされることもある。こうした手法はドイツでもしばしば取り入れられている。
白ワインではあるが味わいの特性上、魚介よりも豚肉や鶏肉、さっぱりした味わいよりはしっかりした味わいの料理によく合う。味の濃いものは、パンチのある中華料理にも合わせることができる。
ピノ・グリを使用したおすすめワイン
・アルザス・ピノ・グリ キュヴェ・デ・プレラ/ポール・ジャングランジェ(フランス・アルザス)
・ピノ・グリ/レオン・ベイエ(フランス・アルザス)
・ピノ・グリ/ジョス・メイヤー(フランス・アルザス)
・ピノ・グリ/アルベール・マン(フランス・アルザス)
・ピノ・グリ ロゼ/クリスチャン・ビネー(フランス・アルザス)
・ピノ・グリ/ウォルフベルジェ(フランス・アルザス)
・ブラッケンブルック・ネルソン・ピノ・グリ/ブラッケンブルック(ニュージーランド・ネルソン)
・マールボロ・ピノ・グリ/クリフォード・ベイ(ニュージーランド・マールボロ)
・ホーム・クリーク マールボロ・ピノ・グリ/サザン・バンダリー・ワインズ(ニュージーランド・マールボロ)
・ピノ・グリージョ/イエルマン(イタリア・ゴリツィア)
・ピノ・グリージョ・ヴァルダーディジェ/サンタ・マルゲリータ(イタリア・トレンティーノ・アルト・アディジェ)
意味/品種
ピノ・グリは灰色を帯びた紫色の果皮を持つ。ピノ・グリという名前は「グレイのピノ種」を意味するが、イタリアに渡ったものは「ピノ・グリージョ」と呼ばれ、ドイツでは「グラウ・ブングルダー」もしくは「ルーレンダー」、ハンガリーでは「スルケバラート」と呼ばれる。
フランス国内でもブルゴーニュでは「ピノ・ブーロ」、シャンパーニュでは「フロマントー」と呼び方が変わり、また「マルヴォワジー」もピノ・グリのことだ。
この品種から造られるワインの色調は、黄金色のものから銅色まで幅広く、ピンク色がかったものもあり、白ワインとしては比較的濃い色味となる。
アルザススタイルのスパイシーなフルボディのワインや、より一般的に知られている酸味が強くライトボディのイタリアスタイルのものまで、世界中で様々なワインが造られている。
“Rosemount Pinot Grigio” by brett jordan – Flickr: Rosemount Pinot Grigio. Licensed under CC BY 2.0 via Wikimedia Commons.
主な産地
現在フランスでは特にアルザス地方でこの品種が多く栽培される。高貴なブドウと呼ばれ、最上級のブドウ畑であるグラン・クリュでも栽培されている。中世にハンガリー商人によってブルゴーニュからアルザスにもたらされたため、当時有名だったハンガリーワインのトカイの名をとって、アルザス・トカイと呼ばれていた歴史もあるが、本場のトカイワインと区別するために現在はその表記は禁じられている。
19世紀以降オーストラリアやニュージーランド、ウクライナなどで栽培されるようになり、1970年代にはアメリカで流行し、シャルドネに次ぐ人気品種になった。