シャンパーニュワインの概要
シャンパーニュはフランス北東部のワイン生産地で、フランスの主要ワイン産地としては最北の土地だ。「シャンパン」の産地として知られ、「シャンペン」や「シャンパーニュ」とも表記される。
シャンパンは国際的にブランドが保護されており、シャンパーニュ産の指定のブドウ品種を使用し、指定の製法で造られたものに限り、「シャンパン」という名称の使用が許可される。
パリの北東150キロに位置するこの地方では、他にコトー・シャンプノワやロゼ・ドゥ・リセといったスティルワインも、少量ながら生産されているが、AOCとしては認められていない。
シャンパーニュはかつてフランスの州のひとつであったが、現在はシャンパーニュ・アルデンヌ地域圏の一部である。シャンパーニュという呼称や地名は他にも存在し、スイスのシャンパーニュやブランデーのシャンパーニュなどがある。
おすすめのシャンパーニュワイン
シャンパーニュワインで押さえておきたいおすすめワイン/ワインジャンルは次のとおりだ。
・ブラン・ド・ブラン
シャルドネ種のみでつくられる単一品種のシャンパン。
・ブラン・ド・ノワール
黒ブドウのピノ・ノワールとピノ・ムニエの単一品種でつくられるシャンパンで、果皮は使用しないため色はつかない。
・ロゼ・シャンパン
「ピンク・シャンパン」とも呼ばれ、黒ブドウの果皮から汁を出さないように搾汁した後、果汁に果皮を一定期間付け込むセニエ方式で色を付ける、ブレンド時に赤ワインを混ぜるなどする。
セニエ方式はマセラシオン方式とも呼ばれる。高い技術が必要な上にリリースまでの期間が長期間必要なため、採用している作り手は少ない。ただし、セニエ方式で作られたロゼ・シャンパンは香りが豊かで、味わいもコクが深い。
・ネゴシアン・マニピュラン(N.M.)
外部から購入したぶどうを使用してシャンパンを製造するつくり手。つくり手のほとんどがネゴシアン・マニピュランだ。
・レコルタン・マニピュラン(R.M.)
自家栽培のぶどうを使用してシャンパーニュを製造するつくり手のこと。小さな会社が多い。
注目のワイナリー
・ルイ・ロデレール
18世紀後半に創業の老舗メゾンで、世界で最も優れたシャンパン・メーカーとして表彰されるなど、名高い生産者だ。
・ローラン・ペリエ
長年、英国王室に愛されてきたシャンパン。ロゼは高度な技術を必要とするセニエ法でつくられる。
・モエ・エ・シャンドン
世界で一番愛されているシャンパンとも言われる「ブリュット・アンペリアル」を筆頭に、ロゼやミレジメ、ネクター・アンペリアルなど、いくつかの種類・銘柄がある。
・ランソン
各国王室御用達シャンパンとして名高い18世紀創業の老舗。マロラクティック発酵を行わず、ぶどうのフレッシュさを残す伝統製法が特徴だ。
・テタンジェ
一流レストランのワインリストに多く採用されている高級シャンパン。ネゴシアン・マニピュランでありながら使用するぶどうの半分は自社で栽培している。
・ヴーヴ・クリコ
クリアなシャンパンを初めて生み出したマダム・クリコの経営手腕により、19世紀に一躍有名になった。看板商品のイエロー・ラベルの他、ロゼも人気がある。
・ドン・ペリニヨン
ドン・ペリニヨン修道士により17世紀末に醸造が開始された最も有名な最高級シャンパンの1つ。ぶどうの出来の良いミレジメしか醸造しない。
・サロン
幻のシャンパンとも言われる最高級シャンパンの1つ。良質のぶどうが収穫できた年のみ醸造され、しかもシャルドネから作られる1種類のみのリリース。100年のうち37ヴィンテージしか作られていない。
・ボランジェ
有名シャンパンの仲間入りをしてもなお、家族経営を貫き続けるつくり手。スペシャル・キュヴェは黒ぶどうの配合比率が高く、コクのある味わいが人気。
気候・土壌
シャンパーニュの気候は、アメリン&ウィンクラーのワイン産地分類でも最も冷涼なリージョン1に指定されている。
産地はヴァレ・ド・ラ・マルヌ、モンターニュ・ド・ランス、コート・デ・ブランの3つを主とし、その他コート・デ・セザンヌ、コード・デ・バールなどの産地もある。
いずれの地域も大陸性気候と大西洋の両方の影響を受け、冷涼ではあるが穏やかな気候と言える。適度な降雨量と十分な日照があり、石灰質メインの土壌は水はけがよい。
主なぶどう品種とそれぞれの特徴
・シャルドネ
コート・デ・ブランとコート・ド・セザンヌを中心に栽培されている。適度な酸を携えた、凛としたエレガントさを持つ。
・ピノ・ノワール
モンターニュ・ド・ランスとコート・デ・バールの生産量が多い。ワインに奥行きとコクなど、厚みを与える。
・ピノ・ムニエ
ヴァレ・ド・ラ・マルヌで多く作られ、ワインに果実味や優しさを加える。
当たり年/ヴィンテージ
ロバート・パーカーのヴィンテージチャート によると、96点以上(まれに見る出来栄え)を獲得した当たり年のヴィンテージは次のとおり。
シャンパーニュ(全域) 1996年
(総評)
シャンパーニュの多くはヴィンテージを表示しないノン・ミレジメであること、またぶどうの収穫からリリースまでに時間がかかるため、2012年以降に関しては評価がされていないことに留意が必要だ。
一方、97点と高評価のつく1996年以外に、1985年、1988年、1989年、1995年、2002年は95点と評価されている。近年では2008年が92点と比較的評価が高い。
シャンパーニュの製造方法
2010年に改定されたAOCの定義によって、シャンパンに使用が認められている品種は、シャンパーニュ地方で栽培されたピノ・ノワール、ピノ・ムニエ、ピノ・グリ、アンフュメ、アルバンヌ、プティ・メリエ、ピノ・ブランと、シャルドネ種に限られる。
製造方法も定められており、瓶内二次発酵を行った上、15カ月以上の熟成を経たシャンパン製法と呼ばれる製法でつくられる。
元となるワインはさまざまなレシピでブレンド(アッサンブラージュ)され、二次発酵のために発泡のもととなるシロップを添加し、仕上げにリキュールとシロップを添加するという点も、シャンパン製法の特筆すべき点だ。
同様の製法の発泡ワインには、スペイン・カタルーニャ地方のカヴァ、イタリアのスプマンテの一部、ドイツのゼクトの一部などがあるが、シャンパンはその厳しい醸造基準と、長期にわたる熟成期間が違いとして挙げられる。
またシャンパンは、生産者ごとに番号が振られており、ラベルに記載されている。
格付け
ノン・ミレジメは、収穫年の記載がなく複数年のワインをブレンドして造られ、ノンヴィンテージとも呼ばれる。瓶内熟成は15カ月以上。ミレジメは、収穫年が記載されており、その収穫年のぶどうを100%使用し、良年にのみつくられ3年以上の瓶内熟成が必要だ。
グラン・クリュは、格付けされた畑のブドウだけで造られ、プルミエ・クリュは、格付けされた畑のブドウを90%から99%使用して造られたシャンパンである。
ワインの歴史
シャンパーニュは産地が冷涼なため、発酵段階で気温が下がり、液体に微発泡が残ることがあった。これがシャンパーニュの泡の正体だ。
発泡ワインとしてのシャンパーニュが確立されたのは17世紀末だが、シャンパーニュはそれ以前からも良質なワインの産地として認められていた。ランスの大聖堂で王の戴冠式などが行われる際に、祝宴にサーブされていたほどだ。
17世紀末に、樽の中で発泡したワインをガラス瓶に詰めることが可能となり、18世紀初頭、このワインを輸出するため、それまでは禁止されていたガラス瓶でのワイン輸送を国が許可した。これにより、シャンパンの存在が各地に知れ渡る。
この発泡ワインは大きな話題を呼ぶこととなり、18世紀、多くのつくり手が安定した発泡状態を実現するため試行錯誤を繰り返した。
その後、澱を瓶の口に集め一度に除去するルミアージュ、デゴルジュマンという方法が開発され、クリアなシャンパンを楽しめるようになると、その名声は国境を越え、各国の王室や貴族を夢中にさせた。
参考までに、発泡しているワインを見つけ、その製法を確立したのがドン・ペリニヨン修道士であるという説があるが、これについては諸説あり真偽のほどは確かではない。ただし、ドン・ペリニヨン修道士は冷涼な気候のためぶどうの質や量が安定しないシャンパーニュ地方において、異なる畑のぶどうをブレンドするアッサンブラージュの方法を発展させた1人として、ワイン史に偉大な功績を残している。