ナーエタールの気候・風土
ナーエタールはドイツの西南部、ラインヘッセンとモーゼル地域に挟まれたワイン産地だ。
ナーエ川とその支流の両岸に畑が広がっている。ぶどう栽培は緩やかな丘陵地帯や急斜面で行われるなど、同じ地域内でも違いがある。栽培面積は4000haほどと小規模だ。
雨が少なく温暖な気候。ただし、同じナーエ地域の中でも前述のように地理条件に大きな違いがあるため、場所によって気候に変化がみられる。
ナーエ川の下流の地域は赤ワイン用のぶどう栽培に適し、糖度が高くバランスの良い酸味を持った果実が収穫できる。一方、ナーエ川上流と支流の谷の地域では、ゾーンヴァルト・フンスリュック・北プファルツといった山地からの冷たい空気の影響を受けるため、白ぶどう(リースリング種)を育てるのに最適だ。
土壌も気候と同じく多種多様。火成岩・堆積岩・変成岩・砂岩など、粘土岩質の土壌が入り混ざり、場所によって地質が異なる。そのため「土壌のパッチワーク」と呼ばれることもある。
ナーエタールのワインの特徴
ナーエタールではバリエーション豊かな気候と土壌の影響で、つくられるワインの味や風味もバラエティに富んでいる。
ぶどうの品種は白がリースリングで約30%、ミュラー・トゥルガウとシルヴァーナーを合わせて45%。残りは、ドイツ全土で栽培されている品種のほぼ全てを網羅するほど、多種多様な品種の栽培が行われている。中でもヴァイスブルグンダー、グラウブルグンダーといった品種の栽培量は近年増加傾向にある。
赤ワイン用のものとしてはドルンフェルダー、ポルトギーザー、シュペートブルグンダー、リージェントなど、合計31種類もの品種がつくられている。
北部のワインは繊細な香りを持ち味わいがマイルド、まろやかなコクを持っている。南部のワインは芳しい香りが特徴的。ハチミツのような甘さのある上品なワインも多い。
ナーエタールのワインに共通しているのは酸味がやや少なく、果実の味が豊かであること。とはいえ、土壌、気候、そしてさまざまな品種のぶどうからつくり出されるワインは、それぞれ特徴も大きく違う。同じ地域ながら多彩な味わいのワインを楽しめる。
エピソード
ナーエタールのぶどう栽培は歴史が古く、中世期前期にまでさかのぼる。しかし名が知れ渡るようになったのは20世紀から。ナーエの多種多様な品種からつくり出されるワインはドイツワインの縮図ともいえて、ドイツワインを語る上でなくてはならない存在である。そのため「ドイツワインの試飲小屋」とも呼ばれている。
ナーエタールの代表的なワイン
ローラー・ベルク リースリング トロッケン QbA/テッシュ
ラインヘッセン ピノ・ノワール ロゼ アイスヴァイン/オット・ベッカー
ナーエ ブルクライヤー シュロスカペレ ファーバーレーベ カビネット QbA./アーデルスエック
ブルー アウスレーゼ/ピーロート
ブルー QbA/ピーロート
モンツィンガー リースリング カビネット/エムリッヒ・シェーンレーバー