酒精強化ワインとは、ワインの発酵の途中で主にブランデーなどのブドウを原料とした強度のアルコール(酒精)を添加して造る甘口のワインである。別称アルコール強化ワイン、フォーティファイドワイン。赤ワイン、白ワインともに造られており、食前酒や食後酒として利用される。
スペインのシェリー、ポルトガルのポートワイン(ポルト酒)やマデイラワインが有名で、これらを総称して三大酒精強化ワインと呼ぶ。イタリアのマルサラワインを加えて四大酒精強化ワインと呼ぶこともある。
スペインでは南部アンダルシア地方のシェリーの他に同地方のマラガワインも有名である。フランスでは、未発酵の果汁にアルコールを添加し数年の熟成を経てなじませるヴァン・ド・リクールと呼ばれる酒精強化ワインが有名である。これにはコニャックで有名なシャラント県コニャックで添加アルコールとしてコニャックを用いるピノ・デ・シャラントや、アルマニャックを添加するフロック・ド・ガスコーニュなどがある。対して、発酵中にアルコールを添加するものはヴァン・ドゥー・ナチュレルと呼ばれる。
使用されるブドウ品種はマカベオ、グルナッシュ、マルヴォワジー、マスカットなど。赤ワインではチョコレートと共に食されることで知られたバニュルスやリヴザルト、白ではマスカットを用いたミュスカ・ド・リヴザルトなどがある。赤ワインのバニュルスやリヴザルトにはグルナッシュが用いられる。
強度の酒精添加によって酵母の働きが止まる現象を利用し、アルコール発酵による糖の分解を停止させることで糖分が残り甘味が強くアルコール度が高いワインとなる。通常のワインのアルコール度数が概ね10-14度であるのに対し、酒精強化ワインは18度前後になる。酒精添加をするタイミングによって甘口・辛口の違いが生じる。未発酵もしくは発行途中で酒精添加をすると糖分が多くのこるためにより甘口に、発酵後に加えたものは辛口となる。甘口は食前酒や食後酒として、辛口は食前酒として飲まれることが多い。
イベリア半島など気温が高く温度管理が困難なブドウ栽培地域において、酸化・腐敗防止など保存性を高めるとともに個性を持たせるために工夫されたワインであり、その保存性の高さから長期の輸送に耐えるため、かつては船で遠国に輸出するのに適した。
日本の酒税法では甘味果実酒にあたる。