フランスのACワインの産地においても、特に有名なボルドー。その中でも、ガロンヌ川とドルドーニュ川に挟まれた三角状の地域はアントル・ドゥー・メールと呼ばれている。これはフランス語で「2つの海の間」という意味がある。

主な生産地としては、地区AOCとしてのアントル・ドゥー・メールのほか、村名AOCとしてドルトーニュ川沿いのオー・ブノージュやグラーヴ・ド・ヴェイル、ガロンヌ川沿いのグラーヴ・ド・ヴェイル、プルミエール・コート・ド・ボルドーやカディヤックなどがある。

カディヤックをはじめとする甘口の白ワインが有名だが、赤ワインの産地も多い。ガロンヌ川沿岸の生産地では、モワルーやリコルーといった、通常の甘口白ワインよりもアルコール度数や残糖分の高いワインがつくられている。

原料となるぶどうは、赤ワインがメルローやカベルネ・ソーヴィニヨン、白ワインはセミヨンやソーヴィニヨン・ブランが、それぞれ大半を占める。

【アントル・ドゥー・メール地区の主な生産地】

・地区AOC
<アントル・ドゥー・メール>
この地域全体の辛口白ワインに適用される地区AOC。小高い丘の続く地形が多い。三角状の広大な地域にまたがるため、そのテロワール(生育環境)も様々だ。白ワインは3年以内の若飲みタイプが多い。

・村名AOC(ドルトーニュ川沿い)
<オー・ブノージュ>
東側、ドルトーニュ川の南岸に広がるAOC。土壌に二酸化ケイ素を多く含むため、白ワイン用ぶどうの栽培に適している。辛口の白ワインがメインだが、モワルーと呼ばれる甘口ワインもつくられている。

<グラーヴ・ド・ヴェイル>
アントル・ドゥー・メール地域の北部、ドルドーニュ川の南岸に位置する。グラーヴ(砂利)の名前のとおり、土壌には砂利が多い。赤ワインと辛口白ワインがAOCに指定されているが、つくられるワインの8割以上はメインのメルロー種にカベルネ・ソーヴィニヨン種などをブレンドした赤ワインだ。

・村名AOC(ガロンヌ川沿い)

<プルミエール・コート・ド・ボルドー>
ガロンヌ川東岸に位置する。該当地域が南北に広いため、つくられるワインは様々。主として、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー主体の赤ワイン、セミヨンやソーヴィニヨン・ブランによる甘口の白ワインがつくられている。

<カディヤック>
甘口の白ワインで有名なAOC。1973年にプルミエール・コート・ド・ボルドーから独立した。セミヨン種を主体とし、ソーヴィニヨン・ブラン種とミュスカデル種をブレンドしてつくられる。同じく甘口ワインで有名なソーテルヌと比較すると、甘さはやや控えめ。糖度の高い貴腐ワインもつくられている。

<ルピアック>
共同浴場などの遺跡が残る、ルピアック村を中心としたAOC。川を挟んだ向かいはソーテルヌ地区のバルザック村となっており、この地区と同様にセミヨン種を主体とした甘口の白ワインの生産が盛んだ。天候によっては貴腐ワインもつくられる。

<サント・クロワ・デュ・モント>
山の聖なる十字架という意味のAOC。セミヨン種を主体とした甘口と半甘口の白ワインがメインでつくられている。セミヨン種は貴腐ワインの原料としても適している。その糖度の高さから、セミヨン種でつくられるワインはクリーミーで、ハチミツの香りのするフルーティな味わいをもつ。

<コート・ド・ボルドー・サン・マケール>
白ワインのAOCだが、日本ではあまり知られていない。甘口白ワインやモワルーに加え、アルコール度数が16%、残糖分が45g/l以上の「リコルー」と呼ばれるワインがつくられている。

・村名AOC(内陸部)
<サント・フォア・ボルドー>
サント・フォワ・ラ・グランド村を中心とするAOC。三角地域の中心部に位置し、川には面していない。メルロー種が主体のしっかりした骨格の赤ワインが8割を占めるが、少数ながらモワルーやリコルーもつくられている。地元生産者はグループを組み、品質のよいワインをつくるべく、意欲的に研鑽が行われている。