フランス東部、スイス国境付近にあるのがジュラ・サヴォワの両地区だ。

ジュラはレマン湖の北西、ジュラ山脈の山麓に位置する。山麓のため気候は冷涼。栽培される固有品種のサヴァニャンは、もともとトカイ種だったものが修道僧によってハンガリーからシャトー・シャロンに持ち込まれ、改良されたものだ。

もう一方のサヴォワは、レマン湖の南、ローヌ川沿いに展開する。ミネラルウォーター・エビアンの取水地があることでも有名で、良質の水が栽培されるぶどうに豊富なミネラルを与える。

有名な生産地に、ジュラではヴァン・ジョーヌ(黄色のワイン)がつくられるアルボワやシャトー・シャロン、ヴァン・パイユ(藁ワイン)のつくられるレトワールがある。

サヴォワでは、ローヌ川沿いのヴァン・ド・サヴォワやセイセル、レマン湖の南岸にあるクレピーなどが挙げられる。生産されるワインの7割が白ワインだ。

ヴァン・ジョーヌは樽の中にわざと空気の隙間を残し、そこにできる白色の産膜酵母(フロール)を活かした製法によってつくられる。また、レトワールでつくられるヴァン・デュ・パイユは陰干しによりぶどうの糖度を高めたもので、藁を敷いた蚕棚の上で陰干しが行われることから名付けられた。

【ジュラ・サヴォワ地区の主な生産地】

・ジュラ地区
<コート・デュ・ジュラ>
105の村にまたがるジュラ最大の生産地。プルサール種、トゥルソー種、ピノ・ノワール種による赤、シャルドネ種や地域固有のサヴァニャン・ブラン種による白。加えて、黄色のワインと呼ばれるヴァン・ジョーヌもつくられる。

<アルボワ>
ジュラワイン発祥の地。プルサール種を主原料とした赤やロゼ、サヴァニャン種やシャルドネ種による白に加えヴァン・ジョーヌもつくられる。ピュピラン村が有力生産地。細菌学者・パストゥールがアルコールの発酵原理を発見した土地としても知られる。

<シャトー・シャロン>
アルボワから南に25~30km、アルプス山脈のふもとに位置する。AOC名はかつてこの地にあった修道院の名に由来する。サヴァニャン種によるヴァン・ジョーヌのみがAOCの対象で、世界5大白ワインにも数えられる。

<レトワール>
アルボワやシャトー・シャロンの南西、ロン=ル=ソニエのすぐ北にある4つの村が該当する。サヴァニャン種によるヴァン・ジョーヌに加え、サヴァニャン種やシャルドネ種による白ワイン、甘口白のヴァン・デュ・パイユもつくられる。

・サヴォワ地区
<ヴァン・ド・サヴォワ>
レマン湖からサント・マリダロ周辺まで南北に伸びる生産地。辛口の白がメインで混醸は行われない。また、発泡ワインにはヴァン・ド・サヴォワ・ムスーのAOC表記が用いられる。

<クレピー(ヴァン・ド・サヴォワ・クレピー)>
レマン湖の南、ドゥベーヌ、バレゾン、ロワザンの3つの村を含む。固有品種のシャスラ100%による辛口の白は軽やかで繊細、酸味の効いたものだ。近郊のエヴィアン・レ・バン村はミネラルウォーター「エビアン」の産地として有名。

<ルーセット・ド・サヴォワ>
ヴァン・ド・サヴォワのワインのうち、アルテス(ルーセット)種100%の辛口白のみに用いられるAOC。濃厚で豊かな味わいを持つ。

<セイセル>
ジュネーブから南に40km、ローヌ川右岸に広がる。アルテスにシャスラが混醸される白ワインがメイン。発泡ワイン専用のAOCセイセル・ムスーもあり、シャンパーニュと同じ瓶内二次発酵でつくられる。