カリフォルニア

カリフォルニアワインの基礎知識/おすすめワイン5選

INDEX

アメリカの中でも存在感を放つワイン産地、カリフォルニア。世界第4位のワイン生産量を誇るアメリカの中で、8割の生産量を占めている。

カリフォルニアワイン協会によると、2019年にアメリカ国内で販売されたワインは、5本のうち3本がカリフォルニアワインだという。諸外国での人気も高く、アメリカが輸出したワインの95%がカリフォルニアワインだ。

2018年時点で約5200軒のワイナリーがあり、何世代にもわたって引き継がれた家族経営ワイナリーも多い。ワイナリーだけではなく、ワイン用ぶどうを栽培する農家も多い。

日本でも人気の高いカリフォルニアワイン。選ぶ時や味わう時に知っておきたい基礎知識をまとめる。

カリフォルニアワインの特徴/飲むべき3つの理由

しっかりとした果実味と甘やかさ

カリフォルニアで栽培されているぶどう品種のほとんどが、伝統国でも栽培されている国際品種だが、同じ品種でもカリフォルニアワインではパワフルな果実味が引き出される。特にピノ・ノワールは、品種が持つ特徴に加えて濃厚な果実味があり、カリフォルニアらしさが感じられる品種だ。

カリフォルニアは日照時間が長く、ぶどうの生育期には日中は暑く、夜には海からの風や霧で気温がぐっと下がるため、1日の中で気温差が大きい。そのため、良いぶどうを栽培する上で重要な“ゆっくりと成熟させる”が実現する。また、収穫時期の秋には雨が少ないため、しっかりと果実が成熟してから収穫することができる。パワフルな果実本来の味わいと、果実の持つ甘やかさを楽しめるのがカリフォルニアワインの特徴だ。

カジュアルから高級まで、幅広いバリエーション

しっかりと成熟するということは、長期熟成可能なワインをつくるのにも適しているということ。開けてすぐにおいしく飲めるフレッシュなワインから、熟成を楽しむワインまで、バリエーションの幅広さもカリフォルニアワインの魅力の1つだ。

カリフォルニアワインというと高級ワインというイメージを持っている人も多いが、3000円以下のカジュアルなワインも多く、コンビニなどでは1000円以下のものも並んでいる。カジュアルなワインは、いつもの食卓やホームパーティ、BBQなどで、高級ワインは特別な日やプレゼントに最適だ。

フランスイタリアなどの伝統国と比べると、ワインづくりの歴史が浅いカリフォルニア。だからこそ、最先端技術を用いた新しい醸造方法と伝統国のワインづくりを融合させた自由なワインづくりができる。無灌漑(かんがい)、全房発酵(葉や茎と一緒に房ごと発酵させること)、使用している樽など、つくり手のこだわりを知った上で、ワインを味わうのもおすすめだ。

サステナブルなワインづくり

注目が高まりつつあるエシカル消費は、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動。エシカル消費に関心がある人にも、カリフォルニアワインはおすすめだ。

カリフォルニアでも、さまざまな産業でサステナビリティ(持続可能性)が重視されている。ワイン産業も例外ではなく、限られた資源を使って健全で持続可能な事業形態(=サステナブルなワインづくり)を目指している。

「サステナブルなワインづくり」とは、数世代先まで持続可能なワインづくりのことで、次の3つのポイントを備えている。

・環境への優しさ
・経済的に実現可能であること
・社会的に公正であること

サステナブルなワインづくりを実践しているワイナリーには、「Certified California Sustainable Winegrowing(CCSW)」などの認定マークが付与されている。カリフォルニア州では、1000を超えるワイナリーがサステナブル認証を受けている。

ワインボトルの数で考えると、全体の約4分の3に当たるワインがサステナブル認証を受けたワイナリーでつくられたものだ。サステナブル認証を受けていないそれ以外のワイナリーでも、サステナブルなワインづくりに向けて、何らかの取り組みを始めているところが多い。

エシカル消費に興味がある方は、サステナブルなワインづくりをしているカリフォルニアワインを手に取ってみてはいかがだろうか。

カリフォルニアワインを知るために、問答無用で飲むべきおすすめ5本

カリフォルニアワインに興味を持った方に、試してもらいたいワインを紹介する。

オーパス・ワン

高級カリフォルニアワインの代名詞ともいえるのがオーパス・ワンだ。一時期はワインバザールの運営会社でも輸入販売をしていたことがあり、当サイトにとっても思い入れが深い。

オーパス・ワンは、ボルドーメドック格付け第一級シャトーである「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」の当主だったバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド男爵とカリフォルニアワインの父と呼ばれるロバート・モンダヴィ氏が手掛けた夢のワインだ。

さんさんと輝くカリフォルニアの太陽が感じられる、フルボディナパ・バレー産ワインを味わいたい方におすすめ。

販売元:エノテカ 
参考小売価格:6万6000円(税込)

ウェンテ リヴァ・ランチ・リザーヴ シャルドネ

カリフォルニアワインを代表するぶどう品種の1つであるシャルドネ。ウェンテ・ワイナリーは、5世代にわたって途切れることなく続いているカリフォルニア最古の家族経営ワイナリーだ。シャルドネの栽培に力を注ぎ、カルフォルニアの気候に合うシャルドネを生み出したことでも知られる。現在、カリフォルニア州で栽培されているシャルドネの8割が、このワイナリーから派生した「ウェンテ・クローン」だと言われている。

発酵後にの上で熟成させるシュール・リーをしており、焼いたパイナップルや白桃っぽさ、甘く香ばしいスパイスの風味から、温暖なカリフォルニアの気候を感じられる。フィニッシュにはまろやかさと鮮やかな味があり、リッチでボディがよりしっかりとしたスタイル。現在のウェンテ・ワイナリーを感じられる1本だ。

販売先:明治屋
参考小売価格:3960円(税込)

ガーギッチ・ヒルズ ジンファンデル エステート・グロウン ナパ・ヴァレー

カリフォルニアの主要品種であるジンファンデルは、クロアチアを起源とする品種だ。そのことが明らかになる前から、ガーギッチ・ヒルズ・エステートの設立者でクロアチア移民のマイク・ガーギッチ氏は「祖父がつくっていたぶどうだ」と、確信していたという。

豊かでしっかりしたボディを、エレガンスさや繊細さと同時に楽しめる1本だ。高級感のあるジンファンデルを味わいたい人に特におすすめ。ソーセージのピザやグリルしたシシケバブなどとの相性が良い。

販売元:ワインインスタイル

参考小売価格:6930円(税込)

ブエナ・ヴィスタ ソノマ ピノ・ノワール

ブエナ・ヴィスタは、カリフォルニア州で最も古い商業ワイナリー。このワインはピノ・ノワールらしい旨味が出ており、高めの酸味が余韻を引っ張る。タンニンは柔らかくシルキーで重さはない。熟成時には、新樽の使用はごく少量にとどめており、果実味や柔らかさを堪能できる。

販売元:アサヒビール

参考小売価格:3300円(税込)

セブンプレミアム ベリンジャー コメモラティブ・コレクション ピノ・グリージョ

リーズナブルでおいしいワインを求めている方におすすめしたいのが、セブンプレミアムシリーズだ。品質の高さに定評のあるベリンジャーのワインを、税込み1000円以下で味わえる。ほんのりとした甘やかさや酸味があり、後味には若干の苦味。セブンプレミアムのおつまみと一緒に楽しみたくなる、食事に合う1本だ。

参考小売価格:968円(税込)

カリフォルニアワインの基礎知識

カリフォルニアの気候

カリフォルニア沖には北から南に寒流が流れており、海に近いほど冷涼で、内陸に向かうほど温暖で乾燥した気候となる。冷たい海から生まれた冷たい風や霧が、午後になると陸地に流れこみ、日中に上がった気温を一気に引き下げる。こうしてワイン用ぶどうの栽培に理想的な気温差が生まれている。

カリフォルニア州には、太平洋と平行に走る海岸山脈があり、この冷たい風や霧の影響を緩和している。また、起伏に富んだ地形により、風や霧が向きを変えたりするので、同じ地域でも条件が異なる微気候(マイクロ・クライメット)が生まれる。

この冷気の濃淡や日照が、ボルドー品種やブルゴーニュ品種、北のドイツ品種、南のイタリア品種といった、さまざまな品種の栽培を可能にし、多種多様なワインを生み出している。

雨は冬にまとめて降り、ぶどうの生育期間中はほとんど降らない。灌漑については、近年ではドライファーミング(無灌漑)や点滴灌漑に取り組むワイナリーも多い。少ない水でぶどうを育てると、濃縮した果実が実る。また、水分を取りこもうと地中深くまで根を張り、病気に強いぶどうになる。

カリフォルニアの品種

カリフォルニアでは、次のような国際品種でワインが造られている。

【2020年のカリフォルニア州主要ぶどう品種栽培面積】
1位:カベルネ・ソーヴィニヨン(9万4670エーカー/3万8312ha)
2位:シャルドネ(9万684エーカー/3万6698ha)
3位:ピノ・ノワール(4万7885エーカー/1万9378ha)
4位:ジンファンデル(3万9578エーカー/1万6017ha)
5位:メルロー(3万5962エーカー/1万4553ha)
※出典:USDA’s National Agricultural Statistics Service「California Grape Acreage Reports 2020 Crop」

2位のシャルドネ以外は全て黒ぶどう品種となっている。

4位のジンファンデルは、カリフォルニア州の特徴的な品種だ。カリフォルニア州内で昔から広く栽培され、カリフォルニア原産と考えられていたが、1990年代に行われたDNA解析の結果、クロアチアにルーツを持つ、イタリアのプリミティーヴォと同一品種であることが判明した。

カリフォルニアのワイン法

アメリカでは、「アメリカ政府承認ブドウ栽培地域(AVA)」として、良質なワインの産地を保護、保証している。AVAでは、品種や醸造法ではなく産地のみが規定されている。産地の規定や表示、品種やヴィンテージラベル記載については、アルコール・タバコ課税および商業取引管理局(TTB)が管理している。これはカリフォルニアに限らず、オレゴン、ワシントン、ニューヨークなどの各州も同様だ。

州名の記載については、アメリカのワイン法では表示された産地で収穫したぶどうを75%以上使用していれば表示できるが、カリフォルニアでは、独自の厳しい基準を設けており、100%州内のぶどうを使用しなければ表示できない。

以下については、全米と同じ基準を用いている。規定以上のぶどうを使用していれば、ラベルに表示可能だ。

AVA:AVA 内で収穫したぶどうを85%以上使用
畑名:同一畑で収穫したぶどうを95%以上使用
ぶどう品種:表示されたぶどう品種を75%以上使用
ヴィンテージ(AVA内):その年に収穫したぶどうを95%以上使用
ヴィンテージ(AVA以外):その年に収穫したぶどうを85%以上使用

カリフォルニアワインの歴史

18世紀後半~禁酒法まで

ぶどうがもたらされてから、カリフォルニアのワイン産業は2つの危機を乗り越えている。

18世紀後半、カリフォルニアにミッション種と呼ばれるワイン用ぶどうをもたらしたのは、キリスト教を布教するためにメキシコから北上してきたスペインの修道士たちだ。19世紀半ばに起こったゴールドラッシュでは、カリフォルニアに向かう人が急増しワイン需要が拡大。また、ヨーロッパの移民がぶどうの苗を持ち込み栽培を始めたことで、カリフォルニアのワイン産業は発展していった。

最初にカリフォルニアワイン産業を襲った危機は、フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)だ。ヴィティス・ヴィニフェラ(中近東原産のヨーロッパ系ぶどう種)は、フィロキセラに次々と襲われてしまう。しかし、フィロキセラに強いヴィティス・リパリアやヴィティス・ベルランディエリなどアメリカ原産のぶどう種を台木にすることで、この危機を乗り越えた。

続いて訪れた危機が、アメリカで1920年から1933年まで施行された禁酒法だ。ミサ用のワインやジュースのためのぶどう栽培は認められていたものの、ミサ用のワイン以外は製造・販売が禁止され、カリフォルニアワインの生産量は94%も減少した。

禁酒法以降

禁酒法の撤廃後、カリフォルニアのワイン産業は再び活気を取り戻す。生き残ったワイナリーが再び高品質なワインづくりに力を入れ始めたのに加えて、現在では世界最大規模の販売数を誇る家族経営ワイナリー「E.&J. ガロ」など、多くのワイナリーが立ち上がった。

翌1934年には、ワイン・インスティテュート(カリフォルニアワイン協会)が設立され、ワインをつくる環境が整えられた。1935年には、禁酒法で閉鎖されていたカリフォルニア大学バークレー校の研究機関がデービス校に再建され、ぶどう栽培や醸造に関わる研究と教育を主導するようになった。

また、1938年には、著名な醸造家でワインコンサルタントのアンドレ・チェリチェフ氏が、ナパ・バレーの「ボーリュー・ヴィンヤーズ」に加わった。チェリチェフ氏は醸造家として名だたる賞をいくつも受賞しており、“カリフォルニアワインの父”と呼ばれる人物のひとりだ。同様に、ロバート・モンダヴィ氏もカリフォルニアワインの父と呼ばれるが、ロバート・モンダヴィ氏にとって、チェリチェフ氏は師匠のような存在だという。

そのロバート・モンダヴィ氏が、ナパ・バレーにワイナリーを設立したのは1966年のこと。高品質なワインづくりに加えて、ワインのプロモーションや消費者の啓もう活動、ワイナリーの観光地化にも力を入れた。

1960年代から70年代にかけては、「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」をはじめとする多くのワインメーカーが、カリフォルニアにワイナリーを設立していった。

1976年のパリ・ティスティング

カリフォルニアワインの歴史を語る上で外せない出来事が、1976年の「パリ・ティスティング(パリスの審判)」だ。当時はまだ認識されていなかったカリフォルニアワインの質の高さを、世界が知るきっかけとなった。

1976年、アメリカ建国200周年を記念して、フランスの銘醸ワインとカリフォルニアワインのブラインドテイスティングが行われた。審査に加わったのは、フランスの名だたる三ツ星レストランのオーナーやシェフ、フランスを代表するワイナリーのオーナーなどだ。この時にはまだ誰も、カリフォルニアワインが圧勝するとは思っていなかった。

白ワイン部門では、カリフォルニアの「シャトー・モンテレーナ シャルドネ1973」が、1位に選ばれた。

1位:Château Montelena Chardonnay 1973 アメリカ
2位:Meursault Charmes Roulot 1973 フランス
3位:Chalone Vineyards Chardonnay 1974 アメリカ
4位:Spring Mountain Chardonnay 1973 アメリカ
5位:Beaune Clos des Mouche Joseph Drouhin 1973 フランス
6位:Freemark Abbey Winery Chardonnay 1972 アメリカ
7位:Batard-Montrachet Ramonet-Prudhon 1973 フランス
8位:Puligny-Montrachet Les Pucelles Domaine Leflaive 1972 フランス
9位:Veedercrest Vineyards Chardonnay 1972 アメリカ
10位:David Bruce Winery Chardonnay 1973 アメリカ

赤も1位はカリフォルニアのワインだった。アンドレ・チェリチェフ氏がコンサルタントをしていた、スタッグス・リープの「スタッグス・リープ ワインセラーズ カベルネ・ソーヴィニヨン1973」だ。

1位:Stag’s Leap Wine Cellars Cabernet Sauvignon 1973 アメリカ
2位:Château Mouton-Rothschild 1970 フランス
3位:Château Haut-Brion 1970 フランス
4位:Château Montrose 1970 フランス
5位:Ridge Cabernet Sauvignon Monte Bello 1971 アメリカ
6位:Château Leoville Las Cases 1971 フランス
7位:Mayacamas Cabernet Sauvignon 1971 アメリカ
8位:Clos Du Val Cabernet Sauvignon 1972 アメリカ
9位:Heitz Wine Cellars Cabernet Sauvignon Martha’s Vineyard 1970 アメリカ
10位:Freemark Abbey Cabernet Sauvignon 1969 アメリカ

この「パリスの審判」は、アメリカの『TIME』誌に取り上げられ、センセーショナルなニュースとして世界中を駆け巡った。

結果については、カリフォルニアワインの快挙を称える声ばかりではなかった。フランスから不満の声が上がり、上位に入ったワインの得点差が小さかったことや、フランスワインは長期熟成してこそ真価を発揮するといった異議申し立てがあった。

そこで、10年後の1986年に前回と同じワインで赤ワインのリベンジマッチが行われたのだが(アメリカのFreemark Abbeyは不参加)、再びカリフォルニアワインが高い評価を受けた。

1位:Clos Du Val 1972 アメリカ
2位:Ridge Monte Bello 1971 アメリカ
3位:Château Montrose 1970 フランス
4位:Château Leoville Las Cases 1971 フランス
5位:Château Mouton Rothschild 1970 フランス
6位:Stag’s Leap Wine Cellars 1973 アメリカ
7位:Heitz Wine Cellars Martha’s Vineyard 1970 アメリカ
8位:Mayacamas Vineyards 1971 アメリカ
9位:Château Haut-Brion 1970 フランス

さらに、2006年にロンドンとナパで同時開催された再々戦でも、カリフォルニアワインが1位~5位までを占めた。

1位:Ridge Monte Bello 1971 アメリカ
2位:Stag’s Leap Wine Cellars 1973 アメリカ
3位(同点):Heitz Wine Cellars Martha’s Vineyard 1970 アメリカ
3位(同点):Mayacamas 1971 アメリカ
5位:Clos Du Val 1972 アメリカ
6位:Château Mouton-Rothschild 1970 フランス
7位:Château Montrose 1970 フランス
8位:Château Haut-Brion 1970 フランス
9位:Château Leoville Las Cases 1971 フランス
10位:Freemark Abbey 1969 アメリカ

パーカー・ポイントの影響

1990年代から2000年代にかけて、「パーカー・ポイント」の影響で、樽の効いた重厚なスタイルのワインが人気を博すようになる。今でもこの時代の影響で、「カリフォルニアワイン=ビッグなスタイル」というイメージが定着している。

パーカー・ポイントとは、1978年に『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』を創刊した、ワイン評論家のロバート・パーカー氏によるワインの評価方法だ。100点満点で評価されるが、パーカー・ポイントで優秀とされる85点を超えるワインは、全体の1%ほどとされている。

コンクールなどでの採点と大きく異なっているのは、採点基準に「将来性」が入っている点だ。コンクールではその時の味で採点されるので、数年後の可能性については考慮されない。将来性を採点基準に含めると、どうしても風味や香りが強く、凝縮感がある濃いワインに高い点数が付きがちになる。そのため、パーカー・ポイントで高い点数を取ろうと安易に考えると、新樽をより多く使い、より長く樽熟成し、より凝縮感のある果実を使う……というワインのつくり方になる。

「ニュー・カリフォルニア」へ

そんなパーカー・ポイントを意識したワインづくりに異を唱えたのが、『サンフランシスコ・クロニクル(San Francisco Chronicle)』の元ワイン担当編集長であるジョン・ボネ氏だ。

近年では、食文化がより素材を重視した健康志向のものへと変化しつつあり、ワインのつくり手も世代交代が進んでいる。よりエレガントなスタイルのワインを目指すワイナリーが増え始めた中、以下のようなコンセプトを持つ、カリフォルニアワインの原点回帰を目指す取り組みが広まっている。

・低アルコールでエレガントなワイン
・テロワールを重視しながらもカリフォルニアの恵まれた気候を生かしたワイン
・伝統的な技術を尊重しつつ個性的なスタイルを追求したワイン…など

ボネ氏は2013年に『ザ・ニュー・カリフォルニア・ワイン(The New California Wine)』を刊行。よりエレガントなワインやよりナチュラル、ハンズフリーなワインづくりを目指す新しい世代の生産者を紹介している。

“畑からテーブルへ”をスローガンに、良いぶどうをつくり、それが飲む人のテーブルに上がるようなワインづくりを目指すニュー・カリフォルニアワイン。もちろん重厚なスタイルのワインも人気は衰えておらず、ニュー・カリフォルニアワインは新しい選択肢としてカリフォルニアワインの幅を広げている。

選ぶときに知っておきたい!カリフォルニアワインの4つの産地

続いて、カリフォルニアワインを選ぶときに知っておきたい主要産地について紹介する。

ナパ・バレー(ノース・コースト

カリフォルニアを代表する高級ワイン産地というイメージが定着しているナパ・バレーは、カリフォルニア州の北部に位置する。東側、西側、北側を山脈に囲まれ、南側にあるサンパブロ湾からは冷涼な空気や霧が吹きこむ。土壌もさまざまで、多様なテロワールが存在している。栽培面積の約半分をカベルネ・ソーヴィニヨンが占めている。

>>ナパ・バレーワインの特徴とは 

ソノマ・カウンティ(ノース・コースト)

ソノマ・カウンティもカリフォルニアを代表するワイン産地の1つだ。マヤカマス山脈を隔ててナパ・バレーと隣接している。内陸部は温暖だが、南部にあるサンパブロ湾や太平洋岸に近い地域は海の影響を受けるため冷涼だ。温暖な地域のカベルネ・ソーヴィニヨン、冷涼な地域のシャルドネやピノ・ノワールの評価が高い。

サンタ・バーバラ・カウンティ(セントラル・コースト

2004年にサンタ・バーバラを舞台にした映画『サイドウェイ』が公開され、注目が高まった。映画が公開される前はメルローが人気だったが、公開後は映画の主人公の影響で多くの人がピノ・ノワールを飲むようになり、生産者もピノ・ノワールを手掛けるようになった。

ナパ・バレーやソノマより南に位置しているが、気候は冷涼。この地域の山脈は海と平行ではなく垂直に2つ並んでいるため、海からの冷たい空気や霧が、2つの山脈の間を走り抜けていく。海に近づくほど冷涼で、気候は多様。生産されるぶどう品種も、シャルドネやピノ・ノワールといった冷涼な気候に合ったものからボルドー品種まで幅広い。

ローダイ(セントラル・バレー)

サンフランシスコ湾とシェラ・ネバダ山脈の間に位置するAVA。7つのサブAVAが認定されており、7つのテロワールがあると言われるほど、それぞれの土壌や気候が違う。持続可能なワイン生産プログラム「ローダイ・ルール」で知られており、サステナブル農法に関する取り組みを早くから実施しているエリアだ。

生産されるワインの約半数がジンファンデルからつくられる。ローダイのぶどう栽培の歴史は古く、古樹を生かしたワインもつくられている。灌漑ができない地域ということもあり、ドライファーミング(無灌漑農業)が取り入れられており、ぶどうは小さくて凝縮した果実となる。

>>ローダイワインの特徴とは

注目のワイナリー

ロバート・モンダヴィ・ワイナリー(Robert Mondavi Winery)

カリフォルニアワインの父と呼ばれるロバート・モンダヴィが、1966年にナパ・バレーで設立したワイナリー。カベルネ・ソーヴィニヨンを核に、食事に合うワインづくりを目指している。

また、モンダヴィ氏はナパ・バレーのソーヴィニヨン・ブランの可能性にいち早く気づき、「フュメ・ブラン」と名付けた高品質のソーヴィニヨン・ブランを手掛けた。

近年では、セブンプレミアムのカベルネ・ソーヴィニヨンとシャルドネが1000円以下で購入できる。

>>“カリフォルニアワインの父”を知るガイドが語る、「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー」のワインづくり ~カリフォルニアワイン産地 バーチャルツアー

ベリンジャー(Beringer Vineyards)

ベリンジャーは、1876年から140年以上、ワインをつくり続けているナパ・バレー最古のワイナリーだ。

ワインスペクテイター』誌において、世界で唯一、赤と白両方のワインでNo.1を獲得。また『ワイン&スピリッツ』誌のワイナリー・オブ・ザ・イヤーを12回受賞している。このように、数多くの受賞歴を誇るベリンジャーのワインは日本でも人気が高い。近年では、セブンプレミアムのメルローとピノ・グリが1000円以下で購入できる。

ブエナ・ヴィスタ・ワイナリー(Buena Vista Winery)

ハンガリー人のアゴストン・ハラスティ伯爵によって、1857年に設立されたワイナリー。ソノマの地に根を下ろした、カリフォルニアで最も古いプレミアムワイナリーだ。ピノ・ノワールやシャルドネ、ジンファンデルを中心にワインを手掛けている。

2011年からはフランス・ブルゴーニュの大手ネゴシアンであるボワセ家が所有。現在は、ジャン・シャルル・ボワセ氏がオーナーを務めている。

>>“カリフォルニアワイン産業の父”の精神を受け継ぐ「ブエナ・ヴィスタ・ワイナリー」 ~カリフォルニアワイン産地 バーチャルツアー

シルヴァー・オーク(Silver Oak)

ナパ・バレーとソノマのアレキサンダー・バレーで育ったぶどうからワインをつくっているシルヴァー・オーク。1972年にレイ・ダンカン氏が設立して以来、カベルネ・ソーヴィニヨンとアメリカン・オーク樽にこだわったワインづくりを続けている。
同ワイナリーが生み出すカベルネ・ソーヴィニヨンのワインは、アメリカで最も支持を受けていると言われる。初代醸造家のジャスティン・メイヤー氏は、「Life is a Cabernet !(人生はカベルネだ!)」という言葉を残している。

>>進化を続けるカベルネ・ソーヴィニヨンの名手「シルヴァー・オーク/トゥーミー・セラーズ」 ~カリフォルニアワイン産地 バーチャルツアー

オー・ボン・クリマ(Au Bon Climat)

サンタ・バーバラを代表するワイナリーの1つ。ピノ・ノワールやシャルドネを使用した、ブルゴーニュスタイルのエレガントなワインづくりを一貫して続けている。

ワイナリーの創業者で醸造家だった、ジム・クレンデネン氏の娘の名前が付けられた「イザベル」は、複数の畑から最も良いぶどうを選び、使用することでその年のヴィンテージを表現。息子の名前が付いた「ノックス」は、単一畑のぶどうを使用してテロワールを表現している。

フロッグス・リープ(Frog’s Leap)

ナパ・バレーのフロッグス・リープは、ワインメーカーのジョン・ウィリアムス氏が、1981年にラリー・ターリー氏と設立したワイナリーだ。ウィリアムス氏は、ビオディナミやオーガニック、灌漑を使用しないドライファーミングの第一人者として知られている。

ウィリアムス氏は、1994年からナパ・バレーのラザフォードでワインづくりをスタート。しっかりと根を張った樹からできたぶどうを使い、伝統的なワイン・メイキング技術でつくられるワインには、土壌や気候が反映されている。

>>オーガニックとドライファーミングだけじゃない! こだわりだらけの「フロッグス・リープ」 ~カリフォルニアワイン産地 バーチャルツアー

リッジ・ヴィンヤーズ(Ridge Vineyards)

サンタ・クルーズ・マウンテンズAVAのモンテベロやソノマ・カウンティを中心に、カベルネ・ソーヴィニヨンやジンファンデルなどを用いたワインを手掛けている。高品質なワインのつくり手として世界のワイン愛好家から信頼されているワイナリーだ。

ワインは天然酵母で発酵させ、マロラクティック発酵も天然の乳酸菌のみで行う。酸化防止のために使われる亜硫酸を可能な限り減らすなど、人為的介入を最小限に抑え、テロワールを表現することにこだわったワインづくりをしている。

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