ワインとは

ジョージアワインの特徴とは ~おすすめワイナリー、ぶどう品種、主要な産地、歴史など、基本の基礎知識~

ジョージアワインの特徴

ジョージアは世界最古のワインの産地と考えられており、コーカサス山脈から黒海にかけての地域で、太古の昔からワインがつくられていたと考えられている。紀元前6000年頃のワインづくりの痕跡が残っており、ワイン発祥の地ともされている。

その頃から伝わるジョージアの伝統的なワインの製法は脈々と受け継がれてきており、現在でも一部のワインはその製法でつくられている。この製法はクヴェヴリ製法という名で知られ、クヴェヴリという丸い大きな素焼きの壷を使うことからそう呼ばれている。この壷は、200〜3500ℓまでさまざまなサイズのものが存在する。

クヴェヴリ製法では、まず、サツナヘリという木製の桶の中で、収穫したぶどうを踏み潰す。次に、踏み潰したぶどうは、果皮、果肉、果梗、種、果汁を一緒にして、清潔に保つために内側が蜜ろうでコーティングされたクヴェヴリの中に投入する。

その後、クヴェヴリはマラニという石造りのセラーに入れて地中に埋める。土の中に埋めることで、自然に低温に保たれるため、発酵と熟成が5〜6ヵ月ほどかけてゆっくりと進む。最後には、別のクヴェヴリに中身を移し、自然にろ過させる。

クヴェヴリ製法は時間と労力が大いにかかるため、19世紀になると主流の製法ではなくなっていく。今では、ジョージア産のワインの約90%がヨーロピアンスタイルの製法のものだ。その一方で、クヴェヴリ製法という伝統製法を後世に残そうとする動きも活発になされており、2013にはユネスコ無形文化遺産への登録が実現している。

ジョージアの注目ワイン

・アンバーワイン
クヴェヴリ製法でつくられる白ワインのこと。クヴェヴリ製法では果皮や種を果汁と一緒に発酵させるため、その製法でつくられた白ワインは通常の白ワインとは異なり、琥珀色のワインとなる。

いわゆるオレンジワインなのだが、その外観ゆえアンバーワインと呼ばれる。果皮や種とともに発酵されているため、タンニンやポリフェノールが豊富に含まれている。香りとしては、ドライ・アプリコットやクルミ、スイートスパイスなどの独特のアロマを備える。

・ツィナンダリ
ジョージアのワインと言えばツィナンダリと言われるほど有名。旧ソ連の時代からよく飲まれ、その知名度はロシア語の教材に度々登場するほど。国際コンクールでは金賞を10、銀賞を9獲得していて、世界的にも高く評価されている。ルカツィテリ種とムツヴァネ種をブレンドし、トロピカルフルーツのような香りとフレッシュな味わいが特徴。

・キンズマラウリ
サペラヴィのセミスイートワインで有名なアペラシオン。ここのセミスイートワインはクヴェヴリ製法でつくられ、色は明るいルビー色。渋みと味が甘さと調和し、非常に飲みやすい。

・フヴァンチカラ
ジョージア西部のアペラシオン。ここのワインは、リオニという峡谷で取れたぶどうだけを使用しており、アレクサンドリアとムジュレトリを50%ずつブレンドしている。味わいは自然な甘みがあり、真珠にも例えられる。

ジョージアの主なぶどう品種

・ムクザニ
ジョージアで最もメジャーな地区のワイン。サペラヴィ種のぶどうを100%用い、オーク樽で3年間熟成させている。濃厚な果実のフレーバーに、ビロードのような滑らかなタンニンが折り重なる。余韻にはベリーの香りが訪れる。

・ルカツィテリ

ジョージアで最も栽培されているぶどう品種。湿度と温度が高い気候には適さないため、ジョージアでは主にカヘティで育てられている。香りは控えめで、力強いワインが生み出される。香りが華やかなムツヴァネ・カフリとブレンドされることが多い。

・ムツヴァネ・カフリ

ムツヴァネは、白い花や桃などの華やかなアロマが特徴的な品種。果皮が薄くタンニンが控えめで、ミネラル感があり綺麗な酸を備えたワインがつくられる。クヴェヴリ製法により、アプリコットやドライフルーツの風味が付け加えられる。

・サペラヴィ
赤ワイン用品種の中ではジョージアで最も栽培面積が広い品種。普通のぶどうと違って、果肉まで赤い。このぶどうからは、辛口や甘口の赤ワイン、ロゼからセミスイートまで、さまざまな味わいのワインが生み出される。つくられたワインは強いタンニンと酸を備え、熟成能力が高い。

・ツォリコウリ
イメレティで広く栽培されている白ワインの品種。メロンやシトラスのようなフルーティーな果実香がする。

ジョージアワインの主な産地

・カヘティ
ジョージアの南東部に位置し、北には大コーカサス山脈とロシアとの国境がある地域。コーカサス山脈から冷涼な風が吹きおろし、非常に乾燥している。恵まれた気候のため、ジョージアのぶどう栽培面積5万5000haのうちの70%を占める。所在するワイナリーの数は500以上。また、ジョージアには18のアペラシオンが登録されているが、そのうちの14はカヘティにある。カヘティでは、クヴェヴリ製法でもヨーロピアンスタイルでも、ぶどうの抽出は強めに行われるので、ポリフェノールとタンニンが豊かなワインが仕上がる。

・イメレティ
カヘティに比べると、ぶどう畑を目にすることは少ないが、ジョージア第2のぶどう産地。西ジョージアに位置し、多様性に満ちた気候で、黒海から夏は冷たい風が吹き、冬は暖かい風が吹き、寒暖差が生じ、ぶどうの育成に影響する。土壌が炭素を含む粘土石灰であることも影響し、イメレティでつくられるワインは酸とミネラルが優位に立っており、冷涼感と明瞭なアロマが感じられる。

ジョージアワインの歴史

2017年、新石器時代(紀元前6000年頃)のクヴェヴリらしき壷が、ジョージアの首都トビリシの南約50キロにある遺跡発掘現場2か所で発見された。科学分析によって、この壷が世界最古のワインづくりの痕跡であることが考古学的に裏付けられている。

ワイン発祥の地であるジョージアは、紀元前からワインの銘醸地として世界で広く認識されており、シルクロードの要衝としてワインを各国へ輸出していた。

エジプトへもメソポタミアを経由してジョージアからワインが運ばれていたとされており、当時のエジプト女王であったクレオパトラもジョージア産のワインを愛飲していたと伝えられている。

クレオパトラは絶世の美女とされ、カエサルやアントニウスなど、時の権力者を次々と手玉に取り、権勢をほしいままにしていたが、実際には政権を維持するのに強い不安を抱えていたという。涙を流しながらジョージア産のワインを傾けることもあったようだ。そのため、ジョージア産のワインはクレオパトラの涙と呼ばれることがある。

20世紀前半になると、ジョージアはグルジア・ソビエト社会主義共和国として、ソビエト連邦の構成国となったため、ジョージア産のワインは主にロシアで消費されることとなる。

しかし、2008年、ジョージアは南オセアチアを巡ってロシアと対立する。自体は軍事衝突にまで発展し、両国間での国交は断絶。ロシア政府はグルジア産ワインの輸入禁止措置をとるにまで至る。この措置は2013年まで続いた。

ジョージアとしては、この逆境を逆に生かした。ロシアへ輸出できなくなったのを皮切りに、国債市場を視野に置いたワインづくりがなされるようになり、今ではその貿易の範囲は旧共産圏以外の諸外国にも広がっている。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitter で