チリ

チリワインの特徴とは ~おすすめワイン、ぶどう品種、当たり年ヴィンテージなど、基本の基礎知識~

   

日本のワイン輸入量でNo.1のチリワイン。2007年に日本とチリとの間でEPA(経済連携協定)が発効したことでワインにかかる関税も減少。チリワインの輸入量が急増している。

チリワインが最大の輸入量となったのは2015年から。2016年の輸入についても、金額に換算するとまだフランスワインの4分の1程度だが、量(L:リットル)で見ると約6200万Lのフランスワインを上回る約8400万Lと大差を付けている。

チリワインはアメリカワインやオーストラリアワインなどと並び、新世界(ニューワールド)の代表格として知られている。チリワインと言えば、チリで育てたカベルネ・ソーヴィニヨン(通称「チリカベ」)を使った安くておいしい赤ワインを思い浮かべる人が多いだろう。

チリは典型的な地中海性気候で乾燥しているため、菌やカビ対策の防腐剤や、病害駆除のための農薬を使う必要もない。こうしたことからほぼ無農薬のオーガニックワインが多くみられるのも特徴だ。

南北4000kmに及ぶ細長い国土において、ぶどう畑はそのほぼ中央に位置するセントラルバレーに広がる。産地一帯は、害虫フィロキセラのいない世界でも類を見ない健全な土壌に恵まれ、ふんだんな太陽光と激しい昼夜の気温差によって素晴らしいブドウを収穫できる。

Foto para Andeswines y posterior publicaci?n en Revista Mujer de La Tercera.

おすすめのチリワイン

チリワインで押さえておきたいおすすめワイン/ワインジャンルは次のとおりだ。

アルパカ

サンタ・ヘレナが手掛ける気軽に楽しめるチリワイン・アルパカワインシリーズ。日本ではアサヒビールが販売を担当し、2016年は日本への輸入量No.1のワイン銘柄になったという。ラベルにかわいらしいアルパカを描いているのが特徴だ。

[関連記事]サンタ・ヘレナ・アルパカ・カベルネ・メルロー

サンライズ

こちらはコンチャ・イ・トロが生産するチリのデイリーワインシリーズ。アルパカワインシリーズと同様に、安旨なチリワインブランドとして知られている。

[関連記事]コンチャ・イ・トロ サンライズ カベルネ・ソーヴィニヨン 750ml

アルマヴィーヴァ

チリにおける最高級ワイン。価格は2万円近くと高額だが、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドとコンチャ・イ・トロが力を合わせてつくり出す珠玉のプレミアムワイン。パーカーポイントも、当たり前のように例年90点以上を叩き出している。

ヴァラエタルワイン

単一のぶどう品種をメインとしてつくったワイン。チリでは75%以上の単一品種を使用することで「ヴァラエタル」を名乗ることができる。コノスルのヴァラエタルシリーズなどが有名。

[関連記事]ヴァラエタルワイン

オーガニックワイン

チリは気候・土壌に恵まれ、非常にぶどうが生育しやすい土地柄となっている。さらにぶどうの天敵である害虫・フィロキセラがチリにはいないなど、無農薬でのぶどう栽培に適している。従って、チリではオーガニックワインが盛んにつくられ、さまざまなつくり手がオーガニックワインを手掛けている。

レセルバ

チリワインには「レセルバ(RESERVA)」と記載してあるものを見掛けることがある。レセルバとは、英語読みするとリザーブ。チリワインで言うレゼルバには、アルコール度数が規定よりも0.5%以上高く独特の風味を持つワイン、といった意味がある。レセルバ、グラン・レセルバなどの表記があるワインにはチリワインの中でも特に優れたワインが多く、見つけたら優先して買っておきたい。

#foodblog En el d?a del vino, por qu? no disfrutar de una copa de Casillero del diablo? @elproximojuego

チリワイン、注目のワイナリー

サンタ・ヘレナ

チリのセントラルバレーを拠点として、ワインを生産するサンタ・ヘレナ。チリのつくり手の中で、いち早くワインの輸出に着手し、アルパカシリーズや、高品質ワイン「グラン・ヴィーノ」シリーズ、「シグロ・デ・オロ」シリーズなどを展開している。

[関連記事]サンタ・ヘレナ

コンチャ・イ・トロ

チリで最大のワインメーカーとして知られるコンチャ・イ・トロ。9000haを超える広大なぶどう畑を保有する。自社畑の土地柄を分析して最適なぶどう品種を育てるマッピングというシステムにより、優れたぶどうを栽培。「フロンテラ」「カッシェロ・デル・ディアブロ」「ドン・メルチョー」などの魅力的な銘柄を手掛けている。

[関連記事]コンチャ・イ・トロ

コノスル

1993年に設立されたワイナリーだが、すでにチリ国内で有数のワイン輸出量を誇るようになった。スクリューキャップの採用や有機栽培、新たな土地を開拓してのぶどう栽培など、挑戦的な取り組みを続け、「ヴァラエタル」「レセルバ」「シングルヴィンヤード」「20バレル」などのシリーズを生産する。

ミゲル・トーレス

スペインで140年以上にわたってワインづくりを続けるトーレスが1979年、チリに設立したのがミゲル・トーレスだ。ヨーロッパのつくり手としては、真っ先にチリに進出。ミゲル・トーレスによって、新世界ワインであるチリワインの魅力が世界中に伝わり、チリワインの台頭を促すことになった。

モンテス

醸造家のアウレリオ・モンテス氏など、ワインの専門家4人が集まって1988年に誕生したワイナリー。モンテスとして第1弾のワインとなった「モンテス アルファ カベルネ ソーヴィニヨン」がヨーロッパなどで高評価を受けた。エアラインのファーストクラスに採用されるなど、チリにおけるプレミアムワインのつくり手の代表格となっている。

[関連記事]モンテス

サン・ペドロ

1856年に創業した由緒あるワイナリー。生産量でチリ第3位、輸出量でチリ第2位の実績がある。ラベルに描かれた黒猫がトレードマーク。1000haもの自社畑を保有する。

サンタ・リタ

2013年から3年連続でチリ国内販売シェア1位を獲得。2600haの広大な自社畑を持ち、7年育てた樹からしか取らないぶどうは採らないというこだわりがある。レセルバ以上のワインに関しては全て自社のぶどうのみを使用している。

ヴィーニャ・エラスリス

1870年創業。「世界で最も優れたカベルネを生み出す」と言われるアコンカグア・ヴァレーをほぼ独占している。

Vi?edos

チリワインに使われる主なぶどう品種

チリワインで有名なのが、チリでのぶどう収穫量において赤ワイン用品種の45%強を占めるカベルネ・ソーヴィニヨンだ。

他に赤はメルローカルメネールシラーなど、白はソーヴィニヨン・ブランシャルドネ、モスカ・デ・アレハンドリア、セミヨン、ペドロ・ヒメネスなど多くの品種がある。

赤ワインは長期熟成型、白は樽貯蔵による重厚なものが好まれるが、近年は軽いタイプも造られている。

カベルネ・ソーヴィニヨン

チリ国内生産量第1位の品種。価格の割に品質が高く、コスパは抜群。ヨーロッパのものよりも個性が強く、味も香りもしっかりしている。日本では1990年代後半の赤ワインブームの際に大いに飲まれ、それ以来「チリカベ」の通称が定着している。

カルメネール

フランスのボルドー原産だが、今やチリが世界最大の栽培面積を誇るぶどう品種。チリでは長年メルローと間違われ混植されてきたが、1994年にDNA鑑定により識別された。カルミネ(carmine)「真紅色」が語源で、色素が濃いのが特徴。タンニンが少なく、口当たりは滑らかだ。パプリカのようなグリーンなニュアンスがある。

ソーヴィニヨン・ブラン

チリの白ブドウ生産量第1位。チリの温暖な環境で育ったソーヴィニヨン・ブランは、濃い黄金色の外観が特徴的で、南国の果実の香りも感じられる。ニュージーランドさんよりも味が弱く、フランスのスタイルに近い。

パイス

ワイン用黒ブドウの一つ。カナリア諸島が原産で、キリスト教伝道師がミサ用のワインをつくるために大航海時代に世界中に広めた。チリには16世紀のスペイン人の征服者が持ち込んだとされている。

現在ではチリ中央にあるマウレ・ヴァレー以南で栽培されている。栽培面積はかつてチリ最大だったが、今では減少傾向にある。長期熟成に向かないため、ペットボトルや紙パックに入っているような安価なワインに使われることが多い。ただし、パイスの個性を生かした特徴的なワインを生産するワイナリーも一部存在する。

Vinos chilenos (1)

チリワインの主な産地

コキンボ地方

チリでは最北端に位置する産地。標高2000mほどの高地にもぶどう畑があり、気候は非常に冷涼だ。降雨量は少なく、乾燥している。日照量が多いので、ぶどうの栽培には適している。エルキバレーやリマリバレーなどの有名なワイン産地がある。

セントラル・ヴァレー地方

チリの中心部に位置するワイン産地。首都のサンティアゴ周辺に、ワイン畑が散在している。チリの代表的な生産者の多くはこの地に結集している。こちらも日照量は多く、降雨量は少ない。チリワインの約半数が生産されるマウレバレーが存在する。

アコンカグア地方

標高差のある地域で、標高1000mの地にも50mの地にもぶどう畑がある。雨量が非常に少なく、1年のうち最大で300日が晴れになるため、熟したぶどうが育ちやすい。

南部地方

他の地方に比べてぶどうはあまり栽培されていないが、チリに初めて持ち込まれたぶどう品種であるパイスが伝統的に栽培されている。

チリワインの当たり年ヴィンテージ

ロバート・パーカーヴィンテージチャート によると、90点以上(傑出した出来栄え)を獲得した当たり年のヴィンテージは次のとおりだ。

2013年、2011年、2010年、2008年、2005年

Valle Secreto Private Edition 2010

チリワインの格付け

フランスやイタリアのような格付け制度はないが、アメリカやオーストラリアのような原産地呼称制度はあり、チリではD.O.と呼ばれている。

原産地呼称(D.O.)は農業保護庁農牧局(S.A.G)が管轄する。原産地呼称ワイン(D.O)は原産地表示、ブドウ品種、収穫年などを表示しており、現在認定されているのはコキンボ、アコンカグア、セントラルバレー、サウスの4地域である。原産地呼称のないワインは、ブドウ品種の指定がある国内産ワインである。日常消費用のテーブルワインは、品種、品質、収穫年は非表示である。

表示規定も存在する。チリではワインのラベルに、D.O.、ぶどう品種、ヴィンテージを記載する場合、それぞれの条件を75%以上満たしていることが求められる。

D.O.の要件を満たすものは、以下の品質表示を追加することができる。

スペリオール(Superior)

香りや味わいに独自性があることを意味する

レゼルバ(Reserva)

アルコール度数が規定の11.5%よりも0.5%以上高く独特の風味を持つ

レゼルバ・エスペシャル(Reserva Especial)

樽熟成したレゼルバ

レゼルバ・プリバダ(Reserva Privada)

アルコール度数が規定の11.5%よりも1%以上高く独特の風味を持つ

グラン・レゼルバ(Gran Reserva)

樽熟成したレゼルバ・プリバダ

チリワインの歴史

チリでワインづくりが始まったのは16世紀のことだ。ヨーロッパ以外のワイン生産国の中では、中国の次にチリが最も古いワインづくりの歴史を持つ。

チリでは16世紀半ば以降スペインの征服者や宣教師などによってブドウ栽培が始まり、主にミサ用のぶどうであるパイスが持ち込まれた。 

17世紀になると、スペイン王室は新大陸へのぶどうの入植を禁止するようになった。自国のワイン産業を保護するためだ。しかし、この決まりは守られることがなかった。チリでのぶどう栽培は拡大の一途を辿り、チリは新大陸最大のワイン産地となった。

19世紀にヨーロッパのブドウ品種が多く持ち込まれた。また、19世紀後半にヨーロッパ全土を襲った害虫フィロキセラの被害がチリには全く及ばず、自国で職を失った多くのワイン醸造の専門家の多くがチリへと渡ったことにより、ワイン産業は本格的に発展した。

ただし、1938年に新アルコール法が施行されると、事態は一変する。ぶどうの新植が禁止され、チリのワイン産業は一時低迷する。第二次世界大戦の勃発がこれに拍車をかけた。

チリのワイン産業はその後、1974年に入って新アルコール法が撤廃されたことで、ようやく日の目を見る。以降はぶどう栽培が拡大し、ワインの増産が行われた。

チリはかつてフランスから導入された苗木が現在も子孫を残していることから、純粋さという点においてはフランスを凌いでいるとも言える。接ぎ木をせずに自根で育てられた株が多く、チリでは樹齢100年を超す古木も珍しくない。また、ヨーロッパの産地では150年以上前に絶滅したとされるカルメネール種が1994年にチリで再発見され話題を呼んだ。

かつては国内消費中心であったが最近ではスペインやフランス、アメリカなどの資本投入により、ヨーロッパ系品種を用いた近代的な醸造を行い、海外への輸出が大きく伸びている。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

Twitter で