イタリア

イタリアワインの特徴とは ~おすすめワイン、ぶどう品種、当たり年ヴィンテージなど、基本の基礎知識~

   

イタリアは世界最大のワイン生産国。国際ぶどう・ワイン機構(OIV: International Organisation of Vine and Wine)によれば、2014年こそ首位の座をフランスに明け渡したが、2016年のイタリアにおけるワインの生産量は4万8800hL(ヘクトリットル)。2位のフランスは4万1900hLで、3位のスペインは3万7800hLだ。

イタリアワインの魅力の一つは、土着のぶどう品種を生かした多様性にある。一説によると、イタリアにあるぶどう品種は2000種類以上だという。海外のワイン情報サイトには「イタリア人がよくやる誇張ではないだろうか」と指摘するところもあるが、それでも公式に認められたぶどう品種は350種ほどもある。

イタリアは南北約1000kmに及び、地域ごとの変化に富んだ気候や風土が特徴だ。これら全ての地域でワインがつくられている。歴史的に地方ごとに独自の文化が築かれたことや前述のぶどう品種の多彩さなどが要因となり、イタリアワインは非常に多様性に富んでいる。

それでは、イタリアワインの特徴を抑える上で、どんなワインを飲んでおくべきなのだろうか。いくつか特徴が分かりやすいおすすめのイタリアワインを紹介していこう。

Vigneti poliziani

おすすめのイタリアワイン

イタリアワインで押さえておきたいおすすめワインは次のとおりだ。

アマローネ

希少価値がある最高級赤ワイン「アマローネ」。イタリアの北東部に位置するヴェネト州ヴェローナ近郊のヴァルポリチェッラ地区でつくられる伝統的なワインだ。ぶどうを収穫した後、優れたぶどうだけを選り分けて陰干し(アパッシメント)してから醸造する。アマローネには「苦味」という意味があり、口に含むとチョコレートを思わせる苦味を感じさせる。

バローロ

イタリアの北西部に位置するピエモンテ州バローロ村で栽培されるネッビオーロ種からつくられるワイン・バローロ。DOCGに格付されたワインの中でも、バローロは「ワインの王様」と呼ばれている。肉料理に合う重厚な口当たりで「王様」という風格が漂うワインだ。

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バルバレスコ

こちらもピエモンテ州にあるバルバレスコ。バローロが「ワインの王様」なら、バルバレスコは「イタリアンワインの女王」。バルバレスコはバローロと人気を二分する高級イタリアワインだ。

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ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ

バローロ、バルバレスコと並んで、「イタリア3大赤ワイン」と呼ばれるのがブルネッロ・ディ・モンタルチーノ。イタリア中部に位置するトスカーナ州で生産され、ぶどう品種としてはブルネッロが用いられる。

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フランチャコルタ

瓶内2次発酵(メトドクラシコ)方式でつくられる最高級スパークリングワイン。品質に関する基準が厳しく、「フランチャコルタの奇跡」「イタリアのシャンパーニュ」などと称される。

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キャンティ

トスカーナ州にあるキャンティ地方でつくられるワイン。イタリア最大のD.O.C.G.ワインの産地であり、1000円強で購入できるお手頃なものもある。最近は、「キャンティ・クラシコ」「キャンティ・クラシコ グラン・セレツィオーネ」など、より品質にこだわり、さまざまな規定をクリアしたワインも生産されるようになっている。

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Succede alle cantine Caprai...

イタリアワイン、注目のワイナリー

アンティノリ

14世紀からワインづくりを続けるイタリアの超名門ワイナリー。その伝統に甘んじず、スーパータスカン「テイニャネロ」「ソライア」を世に送り出した。トスカーナ州、ウンブリア州、ピエモンテ州、ロンバルディア州など、イタリア各地でワインを生産している。

ガヤ

イタリアのワイン専門誌『ガンベロ・ロッソ』が最高のワインに贈る最高賞トレ・ビッキエリ。その獲得数が最多のワイナリーがガヤだ。1859年、ピエモンテにワイナリーを設立。最高峰のバルバレスコのつくり手だ。

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テヌータ・サン・グイド(サッシカイア)

イタリアワインで初めてパーカーポイント100点を獲得したワイナリー。その顔とも言えるスーパータスカン「サッシカイア」は、『ワインエンスージアスト』誌にて歴代最高評価の99点を記録、2016年には『ガンベロ・ロッソ』誌で最高評価トレ・ビッキエリを獲得した。

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ベラヴィスタ

スカラ座でも公式採用されているフランチャコルタのつくり手。『ガンベロ・ロッソ』誌で2008年、年間最優秀ワイン醸造家に選ばれたマネッティア・ヴェッツォーラ氏が指揮を執る。ぶどうはすべて有機栽培、手摘みで収穫し、4~10年もかけてワインを熟成させる。

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ガンチア

スパークリングワイン「アスティ スプマンテ」を手掛ける。年間約2500万本のスパークリングワインを製造。日本でも数多くのワインが数々の賞を受賞した。

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チンザノ

白ワインをベースとしてスパイスや香草を加えたフレーバードワイン「ベルモット」の製造元として知られている。日本でもその名をよく知られるワイナリーだ。

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カルミニャーノ

あまり有名ではないが、実はDOCGに認定されている本格ワイン。サンジョベーゼを主体とし、それに10~20%カベルネを加えてつくっている。DOCGに認定されている中でカベルネを加えることが義務付けられているのはCarmignanoだけだという。

ヴィーノ・ノービレ・ディ・モンテプルチャーノ

名前にモンテプルチャーノとあるのに、使用しているぶどう品種はサンジョベーゼ。エルトリア時代からトスカーナ州でつくられてきた。無類の美味を誇るため、イタリアの赤ワインの中では他に比肩しようのない高貴な存在感を放つ。アルコール度数は通常のタイプで12.5%以上、リゼルヴァで13%。合わせて飲むと相性の良い食材は牛肉やラム肉だ。

Old white wine

イタリアワインの主な産地

イタリアはその全土が20の州に分かれており、そのどの州でもワインの生産が盛んに行われている。その全20州の中からイタリアワインの主要産地8州をピックアップした。具体的には北部から3州、中部から2州、南部から3州を選んだ。以下、順に紹介する。

●イタリア北部

ピエモンテ州

高級ぶどう品種「ネッビオーロ」の生産地として知られている。「バローロ」や「バルバレスコ」などを筆頭に高級赤ワインの産地として有名だが、これらのワインはネッビオーロからつくられている。気候はイタリアにしては厳しく、冬は寒くて雪が多く、夏は乾燥し、ぶどうの収穫期には霧が発生する。この霧は「ネッビア」と呼ばれており、ネッビアが出るころに収穫期を迎えることから、ネッピオーロはその名がついたという。州都はトリノ。

ヴェネト州

水の都ヴェネツィアを州都とするヴェネト州は、イタリア全20州の中でもトップのワイン生産量を誇っている。その南と西にはパダーナ平原が広がっており、中央には自然豊かな丘陵地帯が連なっている。そのため、そのような地形を生かしたぶどうの栽培が州の各地で盛んに行われている。赤ワインよりも白ワインの方が多くつくられていて、その割合は全体の約67%に及ぶ。「プロセッコ」「ヴァルポリチェッラ(アマローネ)」「ソアーヴェ」がヴェネト産ワインの代表格として知られている。

ロンバルディア州

ピエモンテ州とヴェネト州の中間に位置するロンバルディア州。その代表的なワインとしては、瓶内二次発酵方式でつくるスパークリングワイン「フランチャコルタ」が有名だ。このワインはイタリアのシャンパンと称されることもある。また、ロンバルディア州の州都は大都市ミラノなのだが、そこにはレオナルド・ダ・ヴィンチ作「最後の晩餐」のフレスコ画がある教会があることで有名だ。ダ・ヴィンチ自身もその教会の近くに住み、ぶどうの栽培をしていたという。

●イタリア中部

トスカーナ州

ピエモンテ州やヴェネト州と並んでイタリアで一、二を争う主力産地。イタリア中部で最も有名な生産地であり、ティレニア海側に面している。州都は花の都フィレンツエ。イタリア中部で最も有名な生産地で、5つもDOCGが指定されている。これはイタリア20州の中で最も多い。サンジョベーゼ種でつくる「キャンティ・クラシッコ」や「ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ」などが有名だ。トスカーナ州では全生産量のうち約85%が赤ワインとなる。

ラツィオ州

ティレニア海側に面するイタリア中部の都市。州都はイタリアの首都であるローマだ。トスカーナ州とは違って、白ワインの生産量が全生産量の約80%に達する。ラツィオ州で作られる白ワインは、州北部にある湖の周囲で生産される伝説の白ワイン「エスト!・エスト!・エスト!!ディ・モンテフィアスコーネ」が最も有名。12世紀、とある司祭がローマに南下する際、先に行かせた従者にワインの試飲をさせたところ、その従者は宿屋の門に、日本語で「存在する」を意味する「エスト」を3度も書き記したという言い伝えがある。

●イタリア南部

カンパーニア州

世界3大美港の一つナポリを州都として擁するカンパーニア州。この州のDOCGは1つだが、古代ローマ時代よりワインの生産が盛んで、古代ギリシャから伝来したとされるぶどう品種のアリアニコからつくる赤ワイン「タウラージ」などで有名だ。「キリストの涙がかかったため素晴らしいワインができるようになった」という伝説からワイン名が付けられた「キリストの涙」もこの地でつくられている。

プーリア州

イタリアの中でもワインづくりの盛んな州であり、年間生産量では上位に食い込んでいる。D.O.Pワインは14%と少なめだが、かつてはヨーロッパの酒蔵と呼ばれていたという。栽培されているぶどう品種は、プリミティーヴォやネグロアマーロなど。ちなみにこのプリミティーヴォだが、DNA検査によって、主にアメリカのカリフォルニア州で栽培されているジンファンデルと、同一品種であることが分かっている。

チリア州

イタリアの南端に位置する地中海最大の島がシチリア島(州)だ。その北東部にはエトナ火山が位置しており、その山麓の独特の風土の中でつくられるワインが現在、脚光を浴びている。南部ではシチリア州で唯一のDOCGワイン「チェラスオーロ・ディ・ヴィットリア」がつくられていて、それには「ネロ・ダーヴォラ」(現地名:カラブレーゼ)という地ブドウが使われている。他には、白ぶどうを使った琥珀色で甘口の酒精強化ワインの「マルサラ」も有名だ。このワインはシチリア島の西側で生産されている。

イタリアワインに使われる主なぶどう品種

サンジョベーゼ(赤ワイン用/約7万1000ha)

トスカーナ地方などで生産されるぶどう品種。主に、キャンティなどの原料として利用される。亜種がブルネッロ・ディ・モンタルチーノに利用され、スーパータスカンの製造にも使われるなど、イタリアを代表するぶどう品種だ。
色味は濃いルビー。味と渋味が強く感じられ、香りが弱めなのが特徴だ。

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トレッビアーノ(白ワイン用/約5万5000ha)

世界で2番目に多く栽培されているぶどう品種。イタリアでつくられる白ワインの3分の1にトレッビアーノが使用されている。フランスでは「ユニ・ブラン」と呼ばれている。
トレッビアーノからは、若葉の香りを感じられ、フレッシュでフルーティーさの強い白ワインが仕上がる。

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モンテプルチアーノ(赤ワイン用/約3万5000ha)

アブルッツォ州などを中心に栽培される。モンテプルチアーノ・ダブルッツォなどの原料として利用される。チェリーやアーモンド、シナモンなどの香りが感じられ、深いルビー色の赤ワインを生み出すことができる。

カタラット(白ワイン用/約3万5000ha)

シチリア島の土着ぶどう品種。マルサラ酒にも利用され、花や果実のアロマをしっかりと感じられる白ワインへと変貌する。

バルべーラ(ワイン用/約2万1000ha)

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アリアニコ(赤ワイン用)

ギリシャからイタリアに伝わってきた黒ぶどう。タウラージなどの赤ワインに利用され、長期熟成に耐えられる。タンニンが豊富で、チェリーのような香りが特徴。

ネッビオーロ

前述のバローロやバルバレスコといったイタリアを代表する高級ワインを生み出すぶどう品種。ピエモンテ州やロンバルディア州などで栽培される。強い担任と酸味が特徴で、ワイン全体のバランスを取るために長期熟成が必要になる。

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ドルチェット

ピエモンテ州やリーグリア州などで栽培される黒ぶどう。11世紀にフランスからモンフェッラート周辺に伝わったという説と、リーグリア州からピエモンテ州に伝わったとする説がある。ピエモンテ州、リーグリア州、ヴァレ・ダオスタ州でのみ栽培されている。酸は少ないが、タンニンは多い。

ピノ・ネーロ

フランス語で言えば、ピノ・ノワール。かの有名なロマネコンティがつくられる品種だ。イタリアでは主に北部で栽培されており、ロンバルディア州で生産される瓶内二次発酵方式のスパークリングワイン「フランチャコルタ」に使用されている。

モスカート・ビアンコ

モスカートと名指されるワインはイタリアではちらほら見かけるが、たいていはこのビアンコ種が使われている。中でもよく知られているのは、ピエモンテで生産される「アスティ・スプマンテ」などの甘口スパークリングワインだ。このぶどう品種はフランスではミュスカと呼ばれる。

プリミティーヴォ

主にプーリア州やサルディニア州で栽培されている。アメリカのジンファンデルと同一の品種であることが、1990年代にDNA検査で判明した。甘めの果実味やわずかに強い酸味、まったりとした味わいが特徴だ。

リースリング

シャルドネソーヴィニヨン・ブランと並ぶ白ワイン3大品種の一つ。引き締まった強い酸味を持つため、20〜100年かけて長期熟成するポテンシャルを秘める。ドイツを代表する白ぶどうだが、イタリアの北部でも栽培されている。特に北東部のヴェネト州では、「オルトレポオアヴィーゼ」の主要品種として使用されている。

※ぶどう品種名の右側に記載の数字は2010年の栽培面積
ソース: Istat, 6th General Census of Agriculture (2010)

Podere Erica - Organic Wine

イタリアワインのラベルの読み方

ワインを選ぶときに参考になるラベルの表記。イタリアワインの場合、記載することが義務付けられているものと、書いても書かなくても良いものの2種類がある。

表記の義務があるものは次の通りだ。
(1)DOCG、DOC、IGTVdTといった格付けの分類。(2)瓶詰めする会社の所在地となる街の名称。(3)ぶどうがどの地域でつくられたか。(4)輸出用の場合、イタリア製か否か。(5)アルコール度数と内容量。

慣れるまで見分けるのが大変だが、これらの記載はラベルのどこかに必ずある。

一方、付加的に記載を求められているのは次の通り。
(1)ワインの色合い、つまり色調。(2)製造会社や瓶詰め会社のトレードマーク。(3)辛口か甘口か。(4)DOCGとDOCの場合のみ、当該のワインにまつわる逸話。(5)同様にDOCGとDOCの場合のみ、製造会社の歴史など。

イタリアワインの当たり年ヴィンテージ

ロバート・パーカーヴィンテージチャート によると、96点以上(まれに見る出来栄え)を獲得した当たり年のヴィンテージは次のとおり。

カンパーニャ > タウラージ 2010年
ピエモンテ > バルバレスコ 2001年、1996年、1990年、1989年、1982年、1978年
ピエモンテ > バローロ 2010年、2006年、2001年、1996年、1990年、1989年、1982年、1978年
トスカーナ > ボルゲリ 2009年、2006年
トスカーナ > ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ 2010年、2007年、2006年
トスカーナ > クラシコ 2013年、2010年、2006年
シチリア島 > エトナ 2014年

イタリアワインの当たり年としては、おおむね80点台後半(平均以上~素晴らしい出来栄え)や90点台前半(ずば抜けた出来栄え)のヴィンテージが目立つが、2014年、2002年、1994年、1992年、1991年については、残念ながら評価が低い。当たり年のヴィンテージワインを引き当てたいのなら、注意が必要だろう。

イタリアワインの格付け

フランスではテロワールの概念が定着していて産地からある程度の性質を推測することができるのに対し、イタリアワインは地方の多様性もさることながらつくり手の個性が前面に出る傾向にあり、ワインを選択するときには生産者ごとの評価を考慮する必要がある。

イタリアワインの格付けは2009年に更新され、保護原産地呼称ワイン(DOP)、地域特性表示ワイン(IGP)、地理的表示のないテーブルワイン(VdT)に三分類される。かつてDOCGとDOCという分類があったが、現在はDOPにくくられている。

DOCGは赤ワインには紫色、白ワインには黄緑色のラベルが瓶の口に貼られていた。現在はDOPに統括されているとはいえ、ラベルには旧表示の仕様が認められている。

DOPワインは産地、品種、醸造法、熟成期間などが細かく定められており、IGPワインは使用されている品種と生産地のみが表示される。

従来の格付け基準にとらわれずにつくられる上質なVdTをスーペルVdT、とくにトスカーナ産のものをスーペル・トスカーナと呼ぶ。フランスなど外国品種のブドウを多い割合で使うことが多い。

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イタリアワインの歴史

イタリアワインは、ヨーロッパにおけるワインづくりの歴史を語るのに不可欠な存在だ。その歴史を語るとすれば、古代ローマ以前にまで遡ることになる。

イタリアワインの歴史は、古代ギリシャ人や北アフリカのカルタゴ人がぶどう品種をもたらすことによって始まった。かつて古代ギリシャ人はイタリア半島を「エントリーァ・テルス」(ワインをつくる大地)と呼んだとされ、古代からイタリアがワインづくりに恵まれた風土であったことを物語る。

古代ギリシャ人のワインの飲み方は、現代人の飲み方とは異なっている。当時、ワインをそのまま飲むのは、医療上の効果を目的として医薬品として使用するときだけだった。私たち現代の日本人が焼酎やウイスキーを水や炭酸水で割って飲むように、古代ギリシャ人はワインをお湯や水で割ったり、スパイスや蜂蜜などを加えたりして飲んでいたという。

それでは、イタリアでワインの生産が始まったのはいつくらいからだろうか。紀元前12世紀以前には南イタリアやシチリアでワイン用のブドウ栽培が始まり、紀元前8世紀の古代ローマの時代にはすでに、ぶどうの栽培法とワインの製法は確立していたとされている。

エルトリア人もまた、イタリアにワインが根付くのに貢献している。紀元前10〜8世紀にエルトリア人は小アジアから中部イタリアに移住してきたと伝えられているが、実は、エルトリア人によってイタリアからフランスまでワインが輸出された形跡が残っている。なお、エルトリア人は紀元前4年ごろにローマとの争いに破れ、歴史から姿を消している。

その後、古代ローマの繁栄と共にワイン文化が栄え、現在のフランスやスペインなどのヨーロッパ地域に広がっていったとされる。ただし、古代ローマ人は古代ギリシャ人とは異なり、諸手を挙げてワインを受け入れていたわけではなかった。

古代ローマの建国者であるロムルスが飲酒制限令を発したため、古代ローマ人は男性でも35歳までは飲むことを許されなかったと伝えられている。女性が飲むことを許されるのは宗教行事の祭日だけであり、それ以外の日に飲んで、特に騒ぎを起こすと、極刑に処されることもあったという。

ローマ帝国が崩壊してから中世の前期までの間は、ワインの飲み方やつくり方はほとんど変わらなかった。変化が生じるのは、11世紀に入ってからのことである。

11世紀ごろになると、ワインが食堂や飲み屋などの飲食店でカラフェに入れて提供されるようになった。一方、ワインが現在のように瓶詰めで販売されるようになるには17世紀を待つことになる。このころには、ワインは一般家庭でも嗜まれるようになり、庶民の生活にも普及していった。

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