ドイツ南西部に位置するヴュルテンベルク州は、冷涼な気候が多いドイツ国内にあって、やや温暖な地域となる。ぶどう畑は渓谷沿いの急斜面にあり、人手による作業が行われる。

主なベライヒ(生産地区分)は4つあり、北に向けて流れるネッカー川と、その支流に沿って展開する。

ネッカー川下流域に展開するのがコッハー・ヤークスト・タウバー。そこから上流、ヴュルテムベルギッシュ・ウンターラントは規模が大きく、有力畑や醸造所も多い。
さらに上流には、レムシュタール・シュトゥットガルトがある。南北に流れていたネッカー川は、この上流で向きを一旦北西、その後北東方向に変える。最も南の上流域はオーベラー・ネッカルとなる。

有力な醸造所として、「ゴー・ミヨ」4房を獲得したヴュルテムベルギッシュ・ウンターラントのエルンスト・ダウテル、レムスタール・ケレライ(レムスタール醸造組合)などが挙げられる。

白ワインで有名なドイツでは珍しく、赤ワインの製造量が多いのが最大の特徴だ。原料は固有品種のトロリンガー種、レンベルガー種に加え、ピノ・ノワール種、スキアーヴァ種、ドルンフェルダー種など。トロリンガー種によるワインは酸味が強く、力強い味わいとなる。

白ワインは主にリースリング種による辛口のワインとなる。赤・白のぶどうを混醸したロートリンクがつくられているのも大きな特徴。この地方のロートリンクはシラーヴァインと呼ばれる。

【ヴュルテンベルク地区の生産地区分】

<コッハー・ヤークスト・タウバー>
シュヴァルツヴァルトの北、ネッカー川支流の2河川(コッハー川、ヤークト川)に挟まれた地域。
固有品種トロリンガー種、レンベルガー種などによる赤が8割を占める。早飲みタイプが多い。赤・白のぶどうを混醸したロートリンク(シラーヴァイン)もある。
有力醸造家はフェレンベルクのホーエンローエ・エーリンゲン。

<レムシュタール・シュトゥットガルト>
工業都市シュトゥットガルトを含むネッカー川流域。ヴュルテムベルギッシュ・ウンターラントの南に位置する。
石灰質土壌。トロリンガー種による赤が7割を占める。白はリースリング種などによる辛口。

<オーベラー・ネッカル>
ヴュルテンベルグのベライヒで最南に位置する。耕地面積としてはもっとも小さい(12ha)。トロリンガー種による赤は酸味が強く、力強い味わいのある赤ワインになる。
かつてはワイン作りが途絶えかけた時期もあったが、90年代以降復興しつつある。醸造組合が存在せず、個々の生産者によるワイン作りが行われている。

<ヴュルテムベルギッシュ・ウンターラント>
クラインボットヴァー、シュヴァイゲルン、ヴァインスベルクなどの都市を含むネッカー川流域。ヴュルテンベルクにおけるベライヒの中で最大規模を誇る。
有力畑や醸造所も多く、エルンスト・ダウテル醸造所は「ゴー・ミヨ」4房。トロリンガー種やミュラーレーベ種による赤がメイン。