イタリア北西部に位置し、「山の足」を意味するピエモンテ州では、イタリアを代表するワインがつくられている。「ワインの王様」バローロ、「ワインの女王」バルバレスコだ。

バローロにはセラルンガ・ダルバやラ・モッラなど、「バローロ5大産地」と呼ばれる代表的な産地がある。その土壌の違いによって、バローロの味わいには変化がもたらされる。
一方、バルバレスコは同名のバルバレスコ村の他、ネイヴェ・トレイゾを含む3つの村でつくられる。

これらのワインは、どちらもネッビオーロ種を原料とする。「霧」を意味するネッビオーロはその名の示す通り、霧のたち込める山の裾野などで栽培される。ネッビオーロからは味の濃い重厚なワインがつくられるが、それに加えてピエモンテ特有のテロワール(生育環境)により、さらに芳醇で味わい深いワインとなる。

【ピエモンテ地区の生産地区分】

<ガッティナーラ>
ピエモンテ北部、セージア川の左岸地域。赤ワインがメイン。主原料となるネッビオーロ種はスパンナと呼ばれ、バローロに比べいくぶん穏やかな味わいとなる。かつては「イタリアの醸造技術が産んだ宝石」と称えられた。

<ゲンメ>
アルプス山脈の裾野にあるゲンメ村周辺。セージア川を挟んだ向こう岸はガッティナーラとなる。スパンナ種を主原料とし、ボナルダを混醸する長熟の赤、リゼルヴァがメイン。

<バルベーラ・デル・モンフェッラート・スペリオーレ>
ピエモンテ南部、アックイを含むモンフェラートの丘陵地帯。バルベーラ・モンフェラートD.O.C.から2008年に昇格。固有品種バルベーラを主原料とする赤のほか、フリッツァンテ(微発泡ワイン)もつくられる。

<バルベーラ・ダスティ>
アスティの町周辺にあり、3つのソットゾーナ(ラベルに表示可能な特定地域)を持つ。バルベーラ種にフレイザ種やグリニョリーノ種を混醸した赤がメイン。これらのぶどうはいずれも固有品種となる。
かつては安価なテーブルワインの産地だったが、近年は高級なワインも。

<ロエロ>
ピエモンテ南部、タナロ川の北岸に位置する。川を挟んだ南岸はランゲとなる。
土壌は石灰粘土質、一部砂質。ネッビオーロ種による赤のほか、固有品種アルネイスによる辛口の白(ロエロ・アルネイス)がつくられる。

<バルバレスコ>
ミラノからは南西へ150kmほどの場所にあり、アルプス山麓に位置する。ネッビオーロ種による赤はバローロと並び「イタリアンワインの女王」と称えられる。

<バローロ>
タラノ川周辺、三方をアルプス山脈に囲まれた地域にバローロ村がある。ネッビオーロ種の長期熟成による赤ワイン・バローロは、重厚かつ柔らかな飲み口、高いアルコール度数を持ち「ワインの王様」として誉高い。
近年、バリック(小樽)による早期熟成型のフレッシュなモダンバローロが台頭し、旧来の重厚なクラシックバローロと勢力を二分しつつある。

<ドルチェット・ディ・ドリアーニ・スペリオーレ/ドリアーニ>
バローロの南に位置する。アルプス山脈とリグーリア海に囲まれた地域。土壌は粘着性のある石灰質。
ドルチェット種を原料とするが、他の地域に比べ長期熟成ものが多い。そのため他地域のドルチェットよりやや甘く重厚で、タンニンも豊富なワインとなる。

<アスティ/モスカート・ダスティ>
アスティ県でつくられる発泡ワインが対象のD.O.C.G.。モスカート・ビアンコ種100%の微発泡性白ワインのほか、より発泡の強いスプマンテもある。9月中旬には大規模なワイン祭りが開催される。

<ブラケット・ダックイ/アックイ>
ジェノヴァから北西へ60km、リグーリア州付近にあるアックイの町を中心とした生産地。アルプス山脈とアペニン山脈に囲まれるため、寒暖差が大きい。
ブラケット種を使った赤いスプマンテ、ブラケット・ダックイはアルコール度数を抑えた軽快な飲み口。ジュリアス・シーザーがこのワインをクレオパトラへの献上物とした、との逸話がある。

<オヴァーダ(ドルチェット・ディ・オヴァーダ・スペリオーレ)>
オヴァーダ丘陵沿い。ドルチェット種の生産地としてはもっとも東部に位置する。
100%ドルチェット種の赤のみ。リゼルヴァに加え、近年若飲みタイプもつくられる。

<ガヴィ/コルテーゼ・ディ・ガヴィ>
州南部のリグーリア州との州境近辺に位置する。固有品種コルテーゼ100%の辛口白ワインが生産される。黒ラベルのガヴィ(ラ・スコルカ・ガヴィ)が有名。

<ラ・モッラ>
バローロ村の北、バローロ丘陵の頂上近くにある村。セラルンガ・ダルバやカスティリョーネ・ファッレットなどの地域と並び、「バローロ5大産地」として知られる。土壌の鉱石含有量の差から、他の生産地のバローロよりも熟成が早い。

<カスティリョーネ・ファッレット>
セラルンガ渓谷近辺にある村。バローロ5大産地のひとつ。土壌は鉄分を多く含む砂質土壌。つくられるバローロはその砂質土壌の影響を受け、いくぶんやわらかい味わいとなる。

<セラルンガ・タルバ>
セラルンガ山脈の裾野にある渓谷付近の村。バローロ5大産地のひとつ。土壌に鉄分を多く含むため、バローロは長期熟成タイプのものとなる。

<ネイヴェ>
バルバレスコ村の東に隣接する町。トレイゾとともにバルバレスコワインの産地。ネイヴェのバルバレスコワインは、他の地域に比べタンニンの味わいが上品。
タナロ川を挟んだ南北で土壌の性質が異なる。北のロエロ地区は砂土、南のランゲ地区は硬い粘土質土壌となる。

<トレイゾ>
ピエモンテ州クーオネ県にある。トレイゾのバルバレスコは、しっかりとした味わいを持つ。1970年代に「バローロ・ボーイズ」と呼ばれる生産者により、生産環境についての様々な改革が推し進められた。

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