サンタ・マリア・バレー, サンタ・リタ・ヒルズ

サンタ・バーバラワインの特徴とは

多くのセレブリティが、バケーションで訪れる場所として人気のサンタ・バーバラ。2020年には、英王室を離脱したヘンリー王子とメーガン妃が、新生活をスタートさせたと報じられている。内陸には、マイケル・ジャクソンが過ごしたネバーランドがあるエリアだ。

サンタ・バーバラは、ぶどうの栽培にも魅力的な場所だ。そんなサンタ・バーバラワインの特徴を見ていこう。

サンタ・バーバラの気候・風土

サンタ・バーバラは、ナパ・バレーやソノマより南に位置しているが、カリフォルニア州の中でも、最も冷涼な地域の1つだ。サンタ・バーバラの気候は、「海」と「山脈」の影響が大きい。

サンタ・バーバラは海にせり出したエリアで、マリンスポーツが盛んだが、海流の影響で水温はとても低い。陸地の気温が上がると、海からの冷たい空気や霧が内陸に引き寄せられて、気温をグッと下げる。特にサンタ・バーバラの南部は、北からの寒流と南からの暖流がぶつかり、霧が大量に発生する場所だ。午後になると海から冷たい風が吹き込んで霧が地域を覆い始め、翌朝になると次第に引いていく。

海岸と平行に南北に走る山脈は数多いが、サンタ・バーバラには北米で唯一、海岸から東西に走る珍しい山脈がある。海からの冷たい空気は、2つの山脈の間を内陸に向かって流れ込む際に、ストローに息を吹きかけた時のように勢いがつき、平均風速は毎秒約8.9mにもなるという。

海から1マイル(約1.6km)離れるごとに気温は約0.5℃上昇。内陸に向かうほどに温暖になる。

土壌も同様に海の影響を受けており、海の影響を感じさせるワインができる。また、安定した気候も特徴だ。

ナパ・バレーとの違い

同じカリフォルニア州にあるが、サンフランシスコが近いナパ・バレーと、ロサンゼルスが近いサンタ・バーバラは、車で5時間以上の距離がある。ナパ・バレーに比べて気候は冷涼で、ぶどうの生育スケジュールも異なる。

例えば、サンタ・バーバラの代表的産地のひとつであるサンタ・リタ・ヒルズでは、冬らしい冬がなく、春が早くやってくるため、一般的に11月から3月頃まであるぶどうの休眠期間がとても短い。

2020年を例にすると、11月中旬に収穫を終えたぶどうの樹は、11月下旬になってもまだ青々としていたという。その後、水や栄養を吸収してから休眠に入ったぶどうの樹は、翌年2月の中旬から下旬に目を覚ます。これはオレゴン州やフランスブルゴーニュと比べても1カ月半ほど早い。

短い休眠期間は、ぶどうの樹にとってストレスとなる。その結果、実や房が小さくて、凝縮感のある果実が実るのだという。

サンタ・バーバラの産地

サンタ・バーバラ郡には現在、7つのAVA(アメリカ政府承認ぶどう栽培地域)がある。1981年に最初に認定されたのが、サンタ・マリア・バレーAVAだ。その後、1983年にサンタ・イネズ・バレーAVAが認定された。サンタ・イネズ・バレーAVAは東西に広がっており、気候の差が大きいため、4つのサブAVAが設けられていく。2001年にサンタ・リタ・ヒルズ、2009年にハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ、2013年にバラード・キャニオン、2016年にロス・オリボス・ディストリクトと認定が続いていった。

最近では、2020年にサンタ・マリア・バレーAVAとサンタ・イネズ・バレーAVAの中ほどに位置するアリソス・キャニオンがAVAとして認定されている。

主要なAVAを見ていこう。

サンタ・マリア・バレー

サンタ・マリア・バレーAVAは、サンタ・バーバラ郡の北西部にあり、サン・ルイス・オビスポ郡にもまたがっている。カリフォルニア州ではナパ・バレーに続いて2番目にAVAに認証された場所であり、古くから信頼されている。非常に冷涼で、良いぶどうを栽培する条件である「長い生育期間」が実現する場所だ。

ピノ・ノワールの伝道師と呼ばれるジム・クレンデネンが、オー・ボン・クリマを設立した場所であり、カリフォルニア州の中でも高品質なピノ・ノワールやシャルドネの産地として知られている。

サンタ・イネズ・バレー

東西に広がっているAVAで、海側は冷涼な気候を生かし、ピノ・ノワールやシャルドネが栽培されている。内陸に行くほど海の影響が少なくなり、カベルネ・ソーヴィニヨンカベルネ・フランシラーなどが手掛けられている。

2004年にヒットし、アカデミー賞で脚色賞を、ゴールデングローブ賞で作品賞を受賞した映画『Sideways(邦題:サイドウェイ)』の舞台にもなったエリアだ。映画が公開される前はメルローが人気だったが、公開後は主人公が愛したピノ・ノワールに注目が集まり、生産者もピノ・ノワールをつくるようになった。

サンタ・イネズ・バレーワインの特徴とは 

サンタ・リタ・ヒルズ

サンタ・イネズ・バレーで最も海に近く、サンタ・バーバラ郡でも最も冷涼なAVA。なだらかな丘陵地帯で、北から流れてくる寒流の影響を受け、午後には冷たい風が吹くエリアとなっている。サンタ・リタ・ヒルズの西にはロンポックという町があるが、ここまで海に近づくと、ぶどうを育てるには気温が低くなり過ぎてしまう。ぶどうが育つ最も冷涼な気候が、長い生育期間を可能にし、ピノ・ノワールに鮮やかな味を与える。

サンタ・リタ・ヒルズワインの特徴とは

サンタ・バーバラの代表品種

サンタ・バーバラ郡は海に行くほど冷涼で、海から離れるほど温暖になる多様性のある地域だ。生産されるぶどう品種も、シャルドネやピノ・ノワールといった冷涼な気候に合ったものからボルドー品種まで幅広い。

サンタ・リタ・ヒルズでは、1970年代にはカベルネ・ソーヴィニヨンが育てられていたが、現在ではピノ・ノワールやシャルドネの銘醸地として知られている。土壌がカリフォルニア州には珍しい石灰質土壌であり、これはピノ・ノワールとシャルドネの代表的産地であるブルゴーニュと同じだ。

海から離れたロス・オリボス・ディストリクトでは、ソーヴィニヨン・ブランイタリア品種、ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラでは、ボルドー品種が栽培されている。

サンタ・バーバラのエピソード

サンタ・バーバラ郡は、1780年代にスペインの修道士たちによってワインづくりが始められた地域だ。他のカリフォルニアの地域と同様に、1920年から1933年まで続いた禁酒法の影響を大きく受け、廃止後は1960~1970年代にかけて復興した。

しかし、1990年代まではそれほどぶどうは生産されておらず、評価の高いワインが生産されてはいたが、まだ隠れた産地だった。2004年にサンタ・バーバラを舞台にした映画『サイドウェイ』が公開されて注目を浴びるなど、世界的な産地に押しあがっていった。

サンタ・バーバラの代表的なワイン

オー・ボン・クリマ 椿ラベル ピノ・ノワール
ディアバーグ ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ
ビエン・ナシード ウェル・ボーン キュベ ピノ・ノワール
ザ・ヒルト シャルドネ サンタ・バーバラ・カウンティ
スターレーン・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨン ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ

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