フランス東部ブルゴーニュ地方のワイン産地で、コート・ド・ニュイ地区の中北部に位置する村名AOC。1936年にAOC認定を受けた。
主に赤ワインを産するが、若干の白も造られている。
AOCモーレイ・サン・ドニの指定地区はモーレイ・サン・ドニ村で、5つのグラン・クリュ(特級畑)と20のプルミエ・クリュ(1級畑)のクリマ(区画)がひしめき合い、村名ワイン畑のほぼ半分を占める。世界的に有名なシャンベルタンとミュジニーに挟まれているため、かつてはその陰となっていたが、近年では優れた生産者を輩出し、現在ではブルゴーニュワインの中で重要な位置を占めている。
最も栽培量が多いのはピノ・ノワールだが、いくつかの畑の区画ではシャルドネやピノ・ブランも栽培している。この地区での白ワインの産量は少ないが、一般的に堅固で豊満なワインとなる。
この土地の赤ワインの色調は生き生きとした美しいルビー色が基本で、深紅や濃いガーネットなど、紫色を帯びた色合いである。カシスやブルーベリーといった黒い果実の強いブーケに加え、プラム、野バラ、スミレ、天草、コンフィチュールの香りが広がる。熟成にしたがってなめし革、苔、ジビエ、トリュフといった深みのある香りが広がる。しっかりとしたストラクチャーがあり、口に含むと新鮮な果実味と強いボディのバランスのとれた味わいがある。円熟した落ち着いた味わいの中にまろやかなタンニンがあり、コクのあるワインになっている。余韻が非常に長く、熟成に耐える。
モーレイ・サン・ドニ村の中央には「ルート・ド・グラン・クリュ(特級畑街道)」が走り、その西側がグラン・クリュ(特級畑)で東側がプルミエ・クリュ(1級畑)と、はっきり分かれているのが特徴的である。なお、特級の多くはかつて女子修道院の畑であった。有名グラン・クリュはクロ・ド・タールで、1141年シトー派の修道僧によって開墾された古い畑だが、それ以来現在に至るまで3回しか所有者が変わっていない。
土壌はジュラ紀中期の石灰質と粘土石灰質の上にある。畑は東向で標高は220から270メートル程。標高の低いところでは土壌はより泥灰土が多くなる。ブドウ耕作面積は赤が約90ヘクタールで、うちプルミエ・クリュは約39ヘクタール、白は5ヘクタールで、うちプルミエ・クリュは1.4ヘクタールである。