鹿角市には、十和田ワイン醸造所とワイナリーこのはながある。ワイナリーこのはなは比較的新しいワイナリーであると言える。
1988年、秋田県鹿角郡小坂町では「ブドウ栽培振興事業」を立ち上げ、鴇(ときと)地区の農家が土地利用の一環としてブドウ栽培を始めた。1989年に未利用地活用、特産品開発の重点作物として、小坂の風土に適した山葡萄交配種の栽培が本格的に始まり、2003年には栽培農家でつくる葡萄愛好会と特産品販売協会が事業を統合する形で、農業と観光の連携・地場産業の活性化を目的に「有限会社十和田湖樹海農園」が設立された。2010年に果実酒免許を取得し地元秋田県鹿角市に醸造所ワイナリーこのはなを整備した。
ワイナリーこのはなは2011年1月5日、鹿角市で取り組む「まちなか賑ワイナリー整備事業」の支援を受けることとなった。隣接する旧北日本銀行内の金庫室をワインの貯蔵庫として使うなど、居抜き物件を活用することでコスト削減とシャッター商店街の活性化を図り、鹿角産ワインの特産化の可能性を模索し、地域独自の付加価値の高いワインの開発に取り組んでいる。
鴇(ときと)地区の土壌は、約1000年前の十和田湖の噴火で流れてきた火山灰からできており、害虫フィロキセラが出にくい土壌を作り出している。これにより、世界を見渡しても貴重な自根のブドウを育てることができる。接木をせず、自根のぶどうで造られたワインは、ワインの本場ヨーロッパでも全流通量の2%しかないと言われている程貴重である。
この土壌に山葡萄交配種の「小公子」や「ワイングランド」が根付き、ミネラルの豊富な素晴らしい葡萄が収穫できるようになった。現在ワイナリーこのはなでは、小坂町で採れたブドウなどを使って、「小公子」や鹿角三姫物語シリーズ(「吉祥姫」「芦名姫」「政子姫」)をはじめ、年間1万本のワインを製造する。
同じく鹿角市にある十和田ワイン醸造所の十和田ワインは、十和田・八幡平に自生するニホンヤマブドウを長期熟成させたニホンヤマブドウワインとワインをブレンドした飲みやすいワインで、自家製葡萄酒のような鮮烈な山葡萄の芳香が口中に香り立つ。国内で入手できるワインの多くには様々な添加物が入っていることがあるが、このワインには一切使われていないため、後味がすっきりとしている。この醸造所の小坂ワイン樹海の赤とロゼにも山葡萄がブレンドされている。