メルロー

メルローとは――味の特徴、おすすめワイン、主な産地をチェック

   

意味/品種

フランス南西部ボルドー地方原産の赤ワイン用ぶどう品種。ルーツとしては、カベルネ・フランとマドレーヌ・ノワール・デ・シャラントの系譜にあることがDNA分析によって明らかになっている。ちなみに、カベルネ・ソーヴィニヨンカルメネール、カベルネ・フラン、マルベックはマドレーヌ・ノワール・デ・シャランの系譜にあり、メルローとは両親の系譜に連なる親戚関係にあるというイメージだ。

19世紀までは二流品種と考えられていたが、現在では最高品種の1つとされている。近年ではメルロー単一でつくられたワインの評価が高まり、ボルドーのAOCサン・テミリオンやAOCポムロールといった地区では、カベルネ・ソーヴィニヨンよりも多く配合される。ポムロールの最高級ワイン「シャトー・ペトリュス」はメルローのみを使用することも多い。

味わい/香り

同じボルドーの代表的な品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンに比べると、色はやや朱色を帯びている。カベルネ・ソーヴィニヨンはスミレやカシス、オレンジのようなフローラルな香りがするのに対し、メルローはブラックチェリーやプルーンなどの熟した黒い果実の香りや、コーヒーやチョコレートの香りがすると言われている。

メルローは太めの房から、中くらいの大きさの果実が育つ。熟するのが早いため、糖分たっぷりに仕上がりやすい。メルローでつくられたワインが、芳醇な甘い香りがするのはそのためだ。

カベルネ・ソーヴィニヨンほど味やタンニンが強くなく、優しく朗らか、かつ芳醇で丸みを帯びながらも繊細な味わいだ。力強いカベルネ・ソーヴィニヨンとのブレンドにより、バランスのとれた飲みやすい風味が引き出される。一方、メルロー単体でつくられるワインは、よく「シルキー」「絹のような」「滑らかな」と表現される通り、スムーズでエレガントな舌触りになる。

新世界のメルローは、よりアルコール度数が高く、凝縮感があり果実味のまろやかなワインが多くなっている。オーストラリアニュージーランドのメルローは、ユーカリやミント、メントールを伴った濃縮感のあるベリー系の香りが感じられる。カリフォルニアやチリでは、チョコレートやヴァニラなどの甘みのある香りとなる。

特徴

ボルドーが位置するフランス南西部のヌーヴェル=アキテーヌ地域圏では、ドルドーニュ県やロット・エ・ガロンヌ県において、メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンを使ったボルドーと似たタイプのブレンドワインがつくられている。

一方、地中海に面したフランス南部のラングドック=ルシヨン=ミディ=ピレネー地域圏のAOCマルペールなどでは、1980年前後から地酒にあたるヴァン・ド・ペイクラスのワインにもメルローを使用しており、高品質なワインが多くつくられるようになった。中には、ボルドーのシャトーものに劣らないほど、優れたものもある。

その味わいの特性上、カベルネ・ソーヴィニヨンが得意とするような赤肉のローストやステーキなどよりも、全体がまろやかにまとまった煮込み料理などに合わせることが多い。スパイシーな味付けの料理やインパクトのあるジビエ料理などには、メルローの味わいが負けてしまうため注意が必要だ。

優しい味わいを生かし、肉じゃがやすき焼きなどの日本食にも上品に合わせることができる。和の食卓にも重宝するワインだ。

主な産地

メルローは病気に強く比較的タフな品種のため、産地をあまり選ばず、栽培がしやすい。また、気温があまり高くない地域でも熟するため、他のぶどうの栽培が難しい寒い土地でも栽培される。高台の冷涼なテロワールでつくられる場合もある。

メルローの最大の生産地は、フランス南西部にあるボルドーのAOCポムロールやAOCサン・テミリオンだ。ボルドーから地中海沿岸にかけて、幅広く栽培されている。

イタリアでも、その全域にわたってメルローの畑がある。特に盛んなのはヴェネト州とトスカーナ州だ。ヴェネト州などでは地酒にあたるIGPワインが多くつくられており、その口当たりはシルキーで飲みやすい。

フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州でも19世紀から栽培されているが、生産量が多いのはトスカーナ州で、サンジョヴェーゼ主体のワインにブレンドすることが多い。スヴェレートではカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローのブレンドワインもつくられている。トスカーナ州のワインは力強く高貴な味わいが特徴的だ。同州のボルゲリでは、メルロー単一の世界的に有名なプレミアムワインも生産されている。

日本は高温多湿なため、カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールはつくりにくい。一方、メルローは日本の気候に合っており、長野県や山梨県、北海道などではメルローの優れたワインがつくられている。特に長野県の塩尻周辺では、上質なメルローの栽培に成功し、コンクールなどでも好成績を収めている。

他には、アメリカ各地やチリ、アルゼンチン、オーストラリア、南アフリカなどでも多く栽培されている。

メルローを使ったおすすめワイン

シャトー・ペトリュス

ポムロールの僅か11.4haのごく小さなぶどう畑から採れる最高峰のメルローを使用したグラン・ヴァン(偉大なワイン)。その生産本数は例年非常に少なく、ほぼ市場に出回らない。そのためか、世界的なワイン評論家のロバート・パーカー氏は、ペトリュスのことを「ワインというよりも神話の象徴」と評している。

シャトー・シュヴァル・ブラン


「白馬」という美しい名前を持った、AOCサン・テミリオンの雄。プルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに君臨するシャトーの1つであり、AOCサン・テミリオンのメルローを使った赤ワインと言えば、まず押さえるべきはこのワインだ。1862年と1878年にパリのワインコンクールで金賞を受賞しており、そのことを今でもラベルに示している。

ル・プティ・シュヴァル/シャトー・シュヴァル・ブラン

ル・プティ・シュヴァルは、「シュヴァル・ブラン」のセカンドラベルだ。ファーストはカベルネ・ソーヴィニヨン主体でつくられているが、セカンドはメルロー主体でつくられている。ファーストより少し熟成が早いため、若いうちから楽しめる。シュヴァル・ブランをほうふつとさせるエレガントさと繊細さがあり、黒系果実の濃厚なアロマと天草のニュアンスが特徴的だ。AOCサン・テミリオンの頂点と言われる、シュヴァル・ブランの風格を備えた見事な味わいのワインとなっている。

原産国:フランス
品種:メルロー、カベルネ・フラン
参考小売価格:3万8500円(税込)

マプ・メルロ/バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド・マイポ・チリ

シャトー・ムートンを所有するロスチャイルド家が、チリのセントラルバレーで手掛けるコスト・パフォーマンスに優れたワイン。たっぷりの日差しを浴びて十分に熟したメルローは、優しい個性とジューシーな果実味が同居し、バランスが良好だ。値段的にも味わい的にも、日常の和の食卓にぴったりな1本。

原産国:チリ
品種:メルロー
参考小売価格:1430円(税込)

シャトー・プピーユ

ワイン漫画『神の雫』(講談社)で紹介され、大ヒットした「プピーユ」のセカンドワイン。ボルドーのAOCサン・テミリオンに隣接するAOCコート・ド・カスティヨンから彗星のごとく現れた作り手・カリーユは、メルローの真価を引き出す天才とも評される。その味わいはまさに絹の舌触りだ。日常使いできるレベルの値段でワンランク上の味わいを実現している。

桔梗ヶ原メルロー/シャトー・メルシャン

シャトー・メルシャンの、そして日本ワインの新たな扉を開いたとも言える、エポックメイキングなワイン。程よい酸とタンニンがバランスよく調和し、繊細ながらも厚みと⼒強さを感じさせる味わい。1985年に初ヴィンテージを提供して以来、⽇本最⾼の⾚ワインの1つとして高い評価を得ている。

モンテス・アルファ・メルロ/モンテス S.A.

モンテスはプレミアムチリワインの先駆けで、チリを代表するトップワイナリー だ。設立以来革新的なワインづくりを続けており、世界の名だたるレストランや航空会社の機内ワインにも採用されている。メルロー固有の黒系果実や黒胡椒、チョコレートの香りと、柔らかなタンニンを楽しめるワインだ。

ルチェンテ/テヌータ・ルーチェ

テヌータ・ルーチェは、マルケージ・フレスコバルディとロバート・モンダヴィという2人の天才醸造家がタッグを組み、設立したワイナリーだ。他のスーパータスカン(トスカーナの高級ワイン)と異なる点は、ボルドーブレンドのカベルネ・ソーヴィニヨン主体ではなく、あくまでイタリアの土着品種サンジョヴェーゼを使用し、イタリアらしさを残そうとした点だ。

こちらはルーチェのセカンドラベルで、ルーチェと同じモンタルチーノの畑のサンジョヴェーゼとメルローを使用しており、果実由来のフレッシュさと甘みのあるワインになっている。ルーチェよりも手頃な価格で、早くから楽しめるのも魅力。

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