ボルドーの南に広がるグラーヴ地域にも、個性豊かなワインをつくり出す産地がある。それがグラーヴ・ソーテルヌだ。他の多くのワイン生産地と同様に、著名なワイン村はガロンヌ川やシロン川といった河川沿いに展開している。

主な生産地としては、地区AOCとしてのグラーヴ全域のほか、村名AOCとしてグラーヴ北部のボルドーに近いペサック・レオニャン、グラーヴ南部・ガロンヌ川とシロン川の流域に広がるソーテルヌ&バルザック、セロンがある。

有名なワインとしては、ペサック・レオニャン でつくられるシャトー・オーブリオンや、ソーテルヌAOCの最高品質シャトー・ディケムがある。総じて赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨン種を主な原料としたものが多い。対して白ワインは、早飲みタイプのもののほか、セミヨン種による貴腐ワインも有名だ。

【グラーヴ・ソーテルヌ地区の主な生産地】

<グラーヴ>
ボルドー市の南東、ガロンヌ川左岸に広がる生産地。1937年にAOC認定を受けた。地区AOCとしてだけでなく、地域そのものを指す名称でもある。カベルネ・ソーヴィニヨン種をメインとしてカベルネ・フラン種、メルロー種などでつくられる赤ワインは、メドックのものと比べるとやや軽く、優しい味わいのものが多い。

白ワインは辛口が多く、セミヨン種、ソーヴィニヨン・ブラン種、ミュスカデル種からつくられる。

<ペサック・レオニャン>
グラーヴ地域の北部。ペサック村とレオニャン村を中心とした10の村からなる。1855年のメドックにおける格付けで1級となった5大シャトーのひとつ、シャトー・オーブリオンを有する。
赤ワインは黒い果実や杉のような芳香が華やか。白ワインは同じ辛口でもブルゴーニュほど強い酸味はないが、優れた味わいのものが多い。

<ソーテルヌ・バルザック>
1936年にAOC指定。シロン川を挟んだ北岸がバルザックAOC、南岸がソーテルヌAOCとなっている。甘口白の貴腐ワインの銘醸地として有名。シロン川の朝霧が、セミヨン種に貴腐菌を付着させるため、貴腐ブドウを育てるには絶好の環境だ。

特にソーテルヌAOCは、世界三大甘口ワインの産地の一つとされている。独自の格付けがあり、最高品質のものはシャトー・ディケムと呼ばれる。

<セロン>
ガロンヌ川と支流のシロン川が合流する地域で、シロン川の左岸のバルザックAOCの北に隣接する。糖度の凝縮した甘口白ワインがメイン。ソーテルヌAOCと同様に貴腐ワインもつくられる。

日本ではそれほど知られていないが、シャトー・ディケムに勝るとも劣らない品質のワインもある。