ブルゴーニュきっての名醸地として名を馳せるコート・ドール。フランス語で「黄金の丘陵」を意味するこの地域は南北で2つの地域に分けられ、コート・ド・ニュイはその北部にあたる。南北20kmに細長く伸びた、わずか幅数百mにすぎない生産帯だが、ブルゴーニュでももっとも偉大なワインを生み出す産地だ。

コート・ド・ニュイに所属する生産地を北から順に並べると次のようになる。
マルサネ、フィサン、ジュヴレィ・シャンベルタン、モーレイ・サン・ドニ、シャンボール・ミュニジー、ヴァージョ、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュ、オー・コート・ド・ニュイ、コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ。

優秀なグラン・クリュ(特級畑)とそれに劣らぬプルミエ・クリュ(1級畑)を多く有し、高品質なワインを産出している。中でも、シャンベルタン、クロ・ド・タール、ロマネ・コンティといったグラン・クリュは世界中に知られている。つくられるワインはそのほとんどがピノ・ノワール種からつくられる赤ワインだ。

【コート・ド・ニュイ地区の主な生産地】

<マルサネ>
コート・ド・ニュイ地区の最北部に位置する、赤・白ワインの村名AOC。マルサネ・ラ・コート村を中心とし、この村の名前でもAOCが呼ばれる。
生産される赤ワインは、ブルゴーニュワインの中では軽めの味わい。ブルゴーニュ地方ではロゼワインとして唯一の村名AOCが認められた、マルサネ・ロゼも有名。

<フィサン>
プルミエ・クリュに選出されたクリマ(区画)が12あり、最も有名なのはクロ・ド・ペリエール。マルサネと同じくピノ・ノワール種による赤ワインが多いが、フィサンのものは「冬のワイン」とも呼ばれ、熟成に長い時間を要する。特級街道ともいわれるルート・ドゥ・グラン・クリュはこのフィサンから始まる。

<モーレイ・サン・ドニ>
5つのグラン・クリュと20のプルミエ・クリュを有する。ルート・ドゥ・グラン・クリュをはさんで西側がグラン・クリュ、東側がプルミエ・クリュとなる。中でもグラン・クリュとしてクロ・ド・タールが有名。
メインは赤ワインだが、白も若干つくられている。その品質は後述するシャンベルタンに負けず劣らず、しっかりしたボディーの味わい深いワインを生産している。

<ジュヴレィ・シャンベルタン>
ブルゴーニュの赤ワインの中で、最も有名な産地のひとつ。7世紀にワイン生産が始まり、かつてナポレオンに愛飲されたという逸話もある。南部に9つのグラン・クリュがある。中でも、シャンベルタンとシャンベルタン・クロ・ド・ペーズはグラン・クリュをも超えた別格の存在で、世界的にも有名。

<シャンボール・ミュニジー>
コート・ド・ニュイ地区の中北部に位置する。ピノ・ノワール種100%でつくられる赤ワインがメイン。グラン・クリュは、ミュニジーとボンヌ・マールの2つがある。北部のボンヌ・マールは重厚でタンニンも強いワインとなり、一方南部のミュニジーは軽くソフトで女性的なワインとなる。

<ヴァージョ>
赤ワインが多いブルゴーニュでは珍しく、赤白両方がAOC指定されている。
しかし、グラン・クリュとして50haもの面積を有するクロ・ド・ヴァージョは、畑独自のAOCを名乗る。そのため、村名AOCとしてのヴァージョを名乗るワインはあまり多くない。

<ヴォーヌ・ロマネ>
別名「コート・ドールの王冠」。世界的に有名なロマネ・コンティをはじめとして、6つのグラン・クリュはフランスでも最高級の産地とされる。ワインは壮麗で力強さと柔らかさが精妙で、他に並ぶものがないとされる。

<ニュイ・サン・ジョルジュ>
プルミエ・クリュは41のクリマがある。南北で土壌の性質が異なるため、つくられるワインも異なる。泥土の北部ではヴォーヌ・ロマネに似たワインがつくられ、沖積土の南部ではニュイ・サン・ジョルジュの個性が色濃いワインとなる。

<オー・コート・ド・ニュイ>
コート・ド・ニュイ地区の丘陵地でつくられるワインを指す地区AOC。グランクリュやプルミエ・クリュはないが、その品質は近年向上傾向にあり、コストパフォーマンスに優れた良質のワインを生産している。

<コート・ド・ニュイ・ヴィラージュ>
コンブランシアン、コルゴーロワン、北端のフィサンの一部の畑やプロションなど、コート・ド・ニュイの中で独自のAOCを持たない村のワインが該当する。生産量は赤ワインが95%を占めている。