イタリア南西に浮かぶシチリア島は、ヨーロッパ最大の島として知られる。東部には島のシンボルとなる活火山エトナ山があり、2013年には世界遺産に登録された。
この地域ではかねてから混醸用のワインが多く作られてきたが、最近では意欲的な生産者による高品質なワインもつくられており、注目を集めつつある。

シチリア島のワイン生産地は、西部のマルサラやアルカモ、東部のエトナやチェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアに二分される。このうち、D.O.C.G.指定を受けているのはチェラスオーロ・ディ・ヴィットーリアの赤ワインのみとなる。
また、シチリア本島のみならず、北東に浮かぶ諸島も独立してD.O.C.指定を受けている。火山性の石灰土壌で育つぶどうからは、甘口のデザートワインがつくられている。

大きな特徴として、ぶどうの固有品種が非常に多いことが挙げられる。
イタリア本土では栽培されていないものがほとんどだ。フラッパートやネーロ・ダーヴォラなどはその代表品種といえる。
つくられるワインも多岐に渡るが、総じて飲みやすくコクのあるワインをつくり出すのが特徴。

【シチリア地区の生産地区分】

<ヴィットーリア(チェラスオーロ・ディ・ヴィットーリア)>
シチリア島南東部、ラグーザ周辺。島内唯一のD.O.C.G.指定を受けた赤ワインのチェラスオーロは、固有品種ネーロ・ダーヴォラとフラッパートによる、ボディのしっかりしたワインだ。
モンテプルチャーノによるロゼも「チェラスオーロ・ダブルッツォ」としてD.O.C.認定されている。

<マルサラ>
シチリア島西部、トラッパーニを含む地域。
シェリーやマディラなどと並ぶ、酒精強化ワインの産地として世界的に有名。白系のオーロとアンブア、赤系のルビーノの3種類がある。
白系はカタッラット種、インツォリア種、グリッロ種などを原料とする。また、ルビーノはペッリコーネ種、ネーロ・ダーヴォラ種、ネレッロ・マスカレーゼ種の使用が認められる。

<アルカモ>
シチリア島北西部の丘陵地帯、9つの市からなる。映画「ゴッドファーザー」で有名なコルレオーネ村もある。
固有種のカタラットをベースにした辛口の白がメイン。

<コンテッサ・エンテッリーナ>
シチリア州の北西部、パレルモの南にある内陸部の渓谷に位置する。
白はインツォリア種をベースとした辛口がメインだが、ミュラー=トゥルガウベース種のものや若飲みタイプ、遅摘みの糖度を高めたインツォリア種による甘口など多彩。
赤はネーロ・ダーヴォラ種やシラー種がベースとなり、混醸にカベルネ・ソーヴィニヨン種、メルロー種、ピノ・ノワール種が用いられる。

<エトナ>
エトナ火山周辺を囲むように位置する。土壌は火山性の黒色石灰岩。
白はカッリカンテ種がベース。赤はネレッロ・マスカレーゼ種、ネレッロ・カップッチョ種によるフルボディタイプ。同じ原料を用いた、早飲みタイプのロゼもある。

<リーパリ(マルヴァジア・デッレ・リーパリ)>
シチリア北東、エオリア諸島のD.O.C.。琥珀色の甘口白ワインがメイン。原料となるのは固有品種のマルヴァジア・デッレ・リーパリ。陰干しによって糖度を高めたものが使用される。

<パンテッレリア>
シチリアとチュニジアの間にある小島。アフリカに近い気候で、高温と強風に耐えるためぶどうの苗は低地にある。
モスカートとパッシートがD.O.C.認定されている。固有品種ズィビッボによる甘口のデザートワイン。長期保存できるリキュールタイプ(リクォローソ)もある。