ヴァッレ・ダオスタはイタリア北西部にある州だ。スイスやフランスの国境に面しており、マッターホルンやモンブランなどの山に囲まれている。ぶどう畑の標高が高いところにある(1200m)のが特徴で、ヨーロッパ一高所にあるワイン生産地として知られる。
公用語としてフランス語が用いられるため、ワインラベルにはイタリア語・フランス語が併記される。

ワインの生産地区分に、州全体を指すD.O.C.ヴァッレ・ダオスタのほか、アルナー・モンジョヴァやブラン・ド・モルジェ・エ・ド・ラ・サルなどのソットゾーナが存在する。

つくられるワインは、固有品種による個性的なものが多い。特に、シャンバーヴでつくられる白ワインや、トッレッテでつくられる赤ワインは国際的にも評価が高い。イタリアワインの生産地としては小規模だが、近年注目を集めつつある地域だ。

【ヴァッレ・ダオスタ地区の生産地区分】

<ヴァッレ・ダオスタ>
州全体を指すD.O.C.。かつては複数のD.O.C.だったがひとつに統合された。固有品種プティ・ルージュによる赤やロゼ、コルナリン種による白がある。

以下に挙げる地域は、ヴァッレ・ダオスタのソットゾーナとなる。

<アルナー・モンジョヴァ>
アオスタ州南東のアルナー周辺。ネッビオーロ種による赤がメイン。この地域のネッビオーロは「ピコテンドロ」というシノニム(別名)で呼ばれる。ネイレ、コルナリンなどの固有品種が混醸に用いられる。長熟ワイン(シュペリュール)もある。

<ブラン・ド・モルジェ・エ・ド・ラ・サル>
州北西部、モルジェ周辺。ブラン・ド・モルジェ(プリエ・ブラン)種による白のほか、シャンパン生産方法による発泡ワインもある。その品質は、かつてルイジ・ヴェロネッリ(イタリアで初めてテイスティングによるワインの評価を行ったヴェロネッリ誌の著者)にも絶賛された。

<シャンバーヴェ>
州東部に位置する。イタリアで最も降雨量が少ない村。糖度が低く酸味が強いぶどうを原料としている。ミュスカ種による白は国際的にも評価が高い。ピノ・ノワール種を地域で改良した品種による赤もある。

<ドンナス>
州南東部、ドーラ・バルテア川沿い。ネッビオーロ種をベースとした辛口の赤がメイン。

<アルヴィエ>
アオスタの東の地域。ピアモンテ系とフランス系の品種が栽培される地域。プティ・ルージュ種による赤、ブラン・ドゥ・モルジェ種による白。生産されるワインの半分程度が地元で消費される。

<トッレッテ>
アオスタ周辺。プティ・ルージュと地域固有品種の混醸による赤は高い評価を得ている。