ワイン街道で有名なアルザス。フランス北東部、ドイツやスイスとの国境付近に位置し、ライン川に沿って南北に細長く伸びている。地域柄ドイツの影響を強く受けており、ワイン生産に用いられるぶどうも、リースリングやゲヴュルツトラミネールなどのドイツ品種が多い。

アルザスのAOCは、他の地域のように町や村といった地区ごとに分けられてはいない。地域AOCとしてのアルザス、より優れた小地域 アルザス・グラン・クリュ、スパークリングワインのクレマン・ダルザス、そして98年にAOC昇格したコート・ド・トゥールの4つに分けられている。

アルザスではむしろ、土地ではなくぶどうによる区分のほうが影響力を持つ。アルザスワインのラベルにはぶどうの品種が大きく記されている。土地や畑による区分が一般的なフランスワインにおいては非常に珍しいことだといえる。

【アルザス地区の生産地区分】

<アルザス>
つくられるワインの90%以上が辛口の白。原料はリースリング種やゲヴュルツトラミネール種が多く、混醸は行わず単一品種のみでつくられる。アルザス・フリュートという背の高い細身の瓶が用いられるのが特徴だ。

<アルザス・グラン・クリュ>
アルザスの中でも特に優れた51の小地区がこのAOCを名乗る。生産量はアルザス全体の4%にも満たないが、その品質は折り紙つき。使用できるぶどうはリースリング、ゲヴェルツトラミネール、ピノ・グリ、ミュスカの4種で、混醸が行われない点はアルザスと同じ。

<クレマン・ダルザス>
発泡ワイン(クレマン)のAOC。ピノ・ブランを主原料とし、ピノ・グリ、ピノ・ノワール、リースリングなども用いられる。シャンパーニュ地区と同じ瓶内二次発酵によってつくられるが、同地区よりもアルコール度数はやや抑えられている。

<コート・ド・トゥール>
アルザスの西、ロレーヌ地方の産地が昇格したもの。ピノ・ノワールによる黒、オーセロワによる白がメイン。灰色を意味する「ヴァン・グリ」という製法があり、つくられたワインは独特の味わいと長い余韻を持つ。