フランス南東部の南北に流れるローヌ川沿いには、多くのワイン産地がある。これらを総称してコート・デュ・ローヌと呼ぶ。AOCワインではボルドー地方に次いでフランス2位の生産量を誇る地域だ。

南北に長く、テロワールも異なるこの地方は、中央部のモンテリマール平野を境に南部と北部に分かれる。

大陸性気候の北部とは違い、南部は地中海性気候だ。小石や砂の混じった砂岩の丘陵で、多彩な土壌が特徴的と言える。

シャトー・ヌフ・デュ・パプを筆頭に、ジゴンダス、ラストー、リラック、タヴェル、ヴァントゥーなど個性的なAOCがあるほか、広域AOCコート・デュ・ローヌのワインが多く作られている。

ぶどうは混醸もしくはブレンドがほとんどで、赤はグルナッシュ種が主体。白はルーサンヌ種、マルサンヌ種、グルナッシュ・ブラン種などが使われる。

価格も品質も親しみやすいワインが多く、多彩なスタイルのものが作られている。

【コート・デュ・ローヌ南部の主なAOC】

<ヴァントゥー>
アヴィニョンの北東40kmに位置し、ぶどう畑はモン・ヴァントゥー山の裾野、西側や南側の斜面に広がる。生産量全体の80%は赤ワインで、グルナッシュ種をメインとし、シラー種とムールヴェードル種などが混醸に用いられる。

<リュベロン>
ヴァントゥーAOCと北部で隣接し、ローヌ南部のAOCとしては最も東にある。デュランス川やその支流のカラヴォン川が流れ、北にはリュベロン山脈が東西に横たわる。ボディのしっかりとした赤ワインが多く、グルナッシュ種とともにシラー種も多く使われる。

<リラック>
ローヌ川右岸の4つの村(リラック、ロックモール、サン=ジュニエ=ド=コモラ、サン=ローラン=デ=ザルブル)が属する。フルボディの赤が多く作られ、5年以上の長期熟成に耐えるワインも多い。

<シャトー・ヌフ・デュ・パプ>
AOC制度誕生の地であり、ローヌ南部において最も高名なAOCである。グルナッシュ種をメインとする赤ワインが生産量の9割以上を占め、高品質なワインを多く生産している。ワインに用いることができるぶどうは13種にのぼるが、他地方で多く使われるカリニャン種やマルサンヌ種、ヴィオニエ種は使用が認められていない。

<タヴェル>
1936年にフランス初のロゼワインAOCとして認定され、「タヴェル・ロゼ」の名で知られる。ローヌ川の右岸に位置し、南東にはアヴィニョンがある。グルナッシュ種をベースとしたやや辛口のロゼワインで、10年以上の長期熟成にも耐えるものが多い。

<ヴァケイラス>
シャトー・ヌフ・デュ・パプAOCの東側、ジゴンダスAOCの5kmほど南に位置する。ほとんどがグルナッシュ種主体の赤ワインで、引き締まったコクとさっぱりとした口当たりが特徴的だ。シラー種とムールヴェードル種が混醸に使われる。

<ジゴンダス>
自然公園ダンテル・ド・モンミラールの西側山腹から平野部にかけてぶどう畑が広がる。グルナッシュ種が主体で、シラー種、ムールヴェードル種、カリニャン種が混醸に用いられる。肉料理と良く合うパワフルでコクのある味わいが特徴だ。

グリニャン・レ・ザデマールコート・デュ・トリカスタン)>
ローヌ川東に位置する産地で、2010年に「コート・デュ・トリカスタン」から改称した。グルナッシュ種、シラー種をメインとし、早めに飲み頃になる熟成に向かないタイプのカジュアルなワインを多く生産している。

<コート・デュ・ヴィヴァレ>
モンテリマールの西側に広大なぶどう畑が広がっている。この地区のワインの80%は赤ワインで占められ、グルナッシュを30%以上、シラーを40%以上使用することが定められている。

<コート・デュ・ローヌ ヴィラージュ>
広大なコート・デュ・ローヌの中でも、良質なワインを作ると認められた94の村に「コート・デュ・ローヌ・ヴィラージュ」を名乗ることが認められている。まろやかで芳醇なタイプからインパクトのあるフルボディまでさまざまなワインがある。

<ヴァンソーブル>
ローヌ南部の最北にあたるワイン産地であり、標高の高い山岳地帯でぶどうを栽培している。赤ワインのみを生産し、グルナッシュ種50%以上、シラー種とムールヴェードル種25%以上のブレンドが義務付けられている。厳しい環境により、ぶどうはみずみずしく引き締まった仕上がりとなる。

<ラストー>
ウヴェーズ川とエーゲ川に周囲を囲まれ、太陽光をしっかり浴びられる南向きの斜面にぶどう畑が広がる。赤ワイン及び、ヴァン・ド・ナチュレルでAOCを取得。どちらも果実味の豊かさが特徴だ。